優良事例(一般部門)
産・官・学連携による企業防災対策ネットワーク
企業防災ネットワーク「地震に強いものづくり地域の会」あいぼう会
(愛知県豊田市)
事例の概要
■経緯
東海地方は、製造業を中心とする日本有数の産業集積地である一方、近い将来、東海・東南海地震など、巨大地震の発生が危惧される地域でもある。つまり、最も危険な地域に最も重要な産業が展開している。この地域の産業の被災は単に東海地域に留まらず全国へと波及する。
このような地域的特徴を背景に、愛知工業大学地域防災研究センターを中核としてあいぼう会が結成された。あいぼう会は企業の防災担当者が主体となり、自治体(県・市)、公的企業(電力・ガス)、大学の産官学連携により企業の災害時における被害の軽減や復旧の迅速化を目標に、会員が防災に関する知識の習得や、会員相互の交流・切磋琢磨・協力によって、企業防災力の向上、ひいては地域防災力の向上に結びつく活動を実践している。結成後4年が経過し、現在約40の事業体が参加している。
■内容
- 1. 防災セミナーや見学会の開催
実体験に基づく防災セミナーとして、中越地震被災企業や愛知県防災リーダー会などから講師をお招きして、これまで計7回の勉強会を開催した。また、見聞を広げて知識の向上を図るため、さまざまな業種・業態の防災対策に関する社会科見学として、東海地方の企業や公共施設(中部電力、自衛隊や愛知県警等)を対象とした見学会をこれまで計8回開催した。 - 2. 企業防災分科会
企業自身が災害に対する自社の弱点を克服しながら、防災力の向上をめざす努力も必要不可欠であることから、防災に関わる情報収集・事前分析能力の整備や、企業間における情報交換と相互協力体制の確立、防災力向上のための教育機会の確保や社内体制の整備など、参加企業が主体となり産官学の協働による分科会活動を実施している。 - 3. 企業防災情報の集積と発信を担うホームページサイトの利活用
平時における地震関連情報、防災情報、あいぼう会の活動内容、企業防災資料アーカイブ情報などを利用可能とする。また発災時から応急や復旧、復興時においては、地震情報、規制情報など様々な情報を互いに提供・閲覧できるホームページサイトの構築をめざす。
見学会(港防災センター)の様子
見学会(愛知県庁)の様子
見学会(自衛隊)の様子
防災講習会(年に1回開催)の様子
勉強会(年に2~3回開催)の様子
苦労した点
- 1. 規模、業種が異なる企業の集まりであるが故に共通のスタンスを持つことが難しい。自治体・公的企業の専門家による高所からのコメント・指導を受けることにより、活動目標と活動内容の具体化をはかりながら推進している。
- 2. 参加者は勤務時間内に参加している。参加者は活動成果を自社に持ち帰り還元しなければならない。このため、活動内容の選択が難しいが十分な討論により問題を解決している。
- 3. 参加企業の防災担当者は、自社の代表として参加しているため自社の情報提供が難しい。しかし、参加者相互の信頼により有用な生の情報の交換が出来ている。
- 4. 大学主導ではなく、参加企業担当者の自主性により運営されている。このため、活動の継続性が難しい。年度毎の目標および活動計画を明確にすることで維持している。
特徴
- 1. 単なる交流会ではなく、毎月1回半日に及ぶ、分科会・勉強会・見学会を実施し、年度末には必ず成果を冊子にまとめ、内部公表している。
- 2. 個々の企業による組織だけでなく、地元商工会議所や自治体からなるアドバイザー、および公営企業から専門委員を派遣してもらっている。専門的かつ実災害時の対応を踏まえた議論が可能である。大学教員の参加により、先進的かつ専門的な情報・研究成果の入手が可能である。
- 3. 三重県に設立されている同様の組織との連携も積極的に行っている。
- 4. 本会は全国的にも注目されており、新聞・TVによる取材も数回受けている。また、愛知県により、全国防災関係者の会議で本会の活動が紹介されたこともある。
団体概要
企業防災ネットワーク「地震に強いものづくり地域の会」あいぼう会
主として、三河・尾張に事業所を持つ企業、自治体、NPOなど企業防災に関心をもつ個人、法人。運営委員会は、会長、副会長、運営委員(会員から選出)、アドバイザー(自治体)、専門委員(公的企業)、事務局(愛知工業大学地域防災研究センター)で組織されている。
- 構成人員
- 愛知工業大学地域防災研究センター(教授・研究員等)、企業防災担当者(35企業)、商工会議所、地方自治体、公的企業(電気・ガス)
実施期間
平成18年12月~