神奈川県立西湘高等学校
(神奈川県小田原市)
事例の概要
■経緯
平成12年(2000年)の夏、「語り継ぎたい、命の尊さ。-阪神大震災ノート」の著者であるNHKアナウンサー住田功一氏を招き、防災講演会を全校生徒対象に実施したことをきっかけとして、同校に有志による新聞委員会防災取材班が発足した。この防災取材班は、生徒自身が調査取材し、その内容をまとめ、毎年末にWebページに公開している。南関東や東海の大地震で被災を免れないといわれる地元小田原を念頭に作成した独自のマニュアルヘの反響は大きく、各種メディアで取り上げられるなど、この活動が徐々に地域へ浸透しつつある。6年目を迎えた平成17年(2005年)より、新たに防災取材委員会としてメンバーを増やし、さらに地域への貢献ができるよう、学校の内外で防災について調査取材し、情報を発信している。
■内容
防災に関する調査取材とWebページ制作等による情報発信
平成12年(2000年)『もいちどチェックだ防災マニュアル① 生き残るための条件~それはあなたの正しい知識』
平成13年(2001年)『地震には自信ある?~地震を知るには、メカニズムを探れ!』
平成14年(2002年)『防災取材班2002知って備えて損しない!』
平成15年(2003年)『防災取材班2003もいちどチェックだ』
・防災マニュアルを冊子化して地元自治会へ配布
・地域防災について学校と周辺自治会が協議
・生徒による理想的な防災訓練の検証
平成16年(2004年)『地震国に暮らす私たちだから』
平成17年(2005年)『未定』2006年1月up予定
・委員会広報誌「猫魚通信」の発行
・防災の取組みについて県知事と意見交換
・東京大学地震研究所等研究機関での聴講・体験取材
空き教室で中越地震の被害について話し合う防災取材班のメンバー
知事
地震
防災
防災
先生を交えて企画会議
知事
知事
防災
編集
苦労した点
取材先の事業所の中には、質問には答えてもらえるが、防災マニュアルの実物は見せてもらえないことがある。身近な生活の中で命を守るために作成されたはずのマニュアルなのに、なぜ公開してもらえないのか疑問が残った。
特徴
この委員会活動は生徒の防災意識の高揚に加え、学習活動としての特性も備えている。
- 1.自分たちの疑問を解くために調査取材し、地域について学ぶ。
- 2.学びながら行政や住民、団体、企業など地域社会と関わっていく。
- 3.検討を重ねて得た内容を、どう表現し発信していくかを考える。
- 4.方法や表現について考える時に、生徒の創意工夫が生まれる。
- 5.コミュニケーション能力や文章力・表現力の向上など生徒個人の力量の伸長が期待できる。以上のことから、高等学校の教育活動として有益なものだと考えている。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 益本圭太郎((財)消防科学総合センター常務理事))
「地域に学び発信する地震防災情報」は、防災情報部門の表彰ではあるが、Web上で公開の背景には、学校と地域が一体となった一般部門表彰に値する防災活動がある。
この活動のきっかけは、国語授業に阪神大震災の経験者を防災講演会に招いたことに始まる。講演を聴いた生徒の一部が、自分たちも防災活動ができるのではないか?と、生徒会活動である新聞委員会の防災取材班として活動を開始したのである。
生徒自身が、地震防災マニュアルを作り、地域の取材を通じ防災マップを作成し、Webに公開した。こうした活動に対し、地域も協力し、PTAも活動を支援し、学校当局も学習活動としての取り組みへと発展していったのである。
学習活動としては、学校内外の調査取材を通じ、地域に学びながら行政や住民、団体、企業との関わりもでき、また、結果をどう表現し発信をしていくかを考えるなど、有益なものとなっており、教科として防災を取り上げることとしている。
活動は順調であったわけではないが、地道な取り組みは各種メディアにも取り上げられ、平成17年4月には防災取材班も独立して防災委員会となり、各クラスから委員が選ばれる組織となり活動の継続性は保証されたが、一方で、興味のある生徒だけの集団ではなくなったことから、今後の活動内容には不透明な部分もある。
昨年は、神奈川県知事から激励を受けているが、防災まちづくり大賞の受賞を励みとして、この活動を地域とともに発展させ、後輩に引き継がれることを大いに期待する。
団体概要
- ・ 全校生徒:950名(男子503名、女子447名)
- ・ 全日制普通科学年8クラス編成
(一般コース7クラス、理数コース1クラス) - ・ 文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクールに指定されている。
実施期間
平成12年~