第10回防災まちづくり大賞(平成17年度)

【消防科学総合センター理事長賞】消防団員手作り、わが地域の防災意識の高揚「警鐘新聞」の作成

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大月市消防団(第二分団第一部)
(山梨県)

事例の概要

 大月市は、山梨県東部に位置し北西は大菩薩山嶺、南は御坂山に連なる山、北東は秩父山系の峰に囲まれ、面積の約86%は山林・原野が占めているがいたる所に清流があり美しい自然に囲まれた市である。
 大月市初狩町下初狩地区は、人口(1,455名)、世帯数(489世帯)で周辺の山々には豊かな緑が多く、東西に伸びる国道20号線沿いに木造住宅が点在している地区である。
 大月市消防団は、1団8分団60部で構成され、大月市初狩町下初狩地区の第2分団第1部は、部長以下28名の部員で手作り新聞「警鐘新聞」を発行している。発行から約23年間続いており、地域住民の防災意識の高揚に一役買っている。

■内容

 警鐘新聞は、1982年5月に第1号を発行。下初狩地区の無火災無災害こそが地域にとって最も重要なことだと考え、全国統一標語を始め、防災に関するさまざまな記事を掲載してきました。当初は手書で作成していた新聞は90年代にはワープロにかわり、数年前から個人所有のパソコンを使って作成している。
 平成16年から2ヶ月に1回のペースで発行し、部員たちが法被姿で火災予防を呼びかけながら区域内全世帯に配布している。住民の中には「防火の豆知識をもっと掲載してほしい」などの要望が寄せられるなどの反響は大きく毎号保存している住民もいるという。
 部長は「『伝統ある新聞』を途絶えさせてはいけないとの思いで取り組んできました。新聞が住民の防災につながればうれしい」と話す。編集担当となった部員は各方面に情報収集に歩き成果が上がらない時期もあった。そのような時には雑誌に掲載されている写真を多用したり、文字を大きくするなどの苦労もあった。
 平成16年8月1日に200号を記念号としてカラー印刷で作成、全世帯に配布し、消防関係者の挨拶や大月市消防団員訓練大会で同分団が優勝した記事を掲載。創刊当時の部長からは「ふるさとを守り育てようという部員の意気込みを新聞紙上から感じました。」と挨拶が寄せられた。
 これからも、住民に愛され、信頼される新聞を作り続けていきたい。
 新聞を作成する経費は、各世帯からいただいた夜警巡回費用や消防団費用の一部を使って新聞作成に取り組んでいる。

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編集会議

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新聞配布風景

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新聞配布風景

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警鐘新聞

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警鐘新聞

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警鐘新聞

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編集会議

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編集会議

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パソコンでの新聞作成

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パソコンでの作成画面

苦労した点

  • 1.新聞を発行した当時は毎月1回発行しているため、回を重ねるたびに掲載する記事が乏しくなりしかも手書き作業のうえ、文章の構成に苦慮し時間を費やした。
  • 2.現在は、消防団員の減少と共にサラリーマンが多く、勤務先が遠いため、平日の作業はむずかしく休日のわずかの時間を利用して取り組んだ。
  • 3.防災に関する情報などは、インターネットから取り込み新聞に載せているが、住民に読んで頂くために、部員も防災に対する知識を勉強し、分かり易い新聞を作成するため、部員全員が防災に対する知識を猛勉強した。

特徴

 警鐘新聞を定期的に発行することにより、消防団活動への理解が深まり地域防災への協力も得やすくなってきた。
 また、防災に関する情報の提供(啓蒙活動)も部員が法被姿で直接手渡しすることにより、一般メディアよりその効果が大きいと、地域住民からの言葉も寄せられ、防災に関する知識の向上と地域防災の一翼を担う責任を改めて感じることができる。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 金谷裕弘(総務省消防庁国民保護・防災部防災課長))

 「第二分団長の話によると、「第二分団の入退団は、ちょっと変わっている。」と言っていた。この第二分団第一部は分団長、部長以下6班28名の部員で構成されており、「入団後10数年の経験を経たのち各班班長を2年間務め退団し、新たな部員が入団する。」というものである。
 それでは、部長や副部長、分団長になる人がいないではないか?」という疑問が出てくる。どうしているかと尋ねると、「部長、副部長については、班長経験者のうち、退団後10年くらい経過した者の中から、OBや現部員の推薦により決まり、任期は2年。2年経つとまた退団。分団長も部長、副部長経験者の中から決まる。」というのである。変わっているというのはこういった全国でも珍しい仕組みであった。
 ということは、第二分団第一部のある初狩町下初狩地区には、団員または経験者が数多くいるといったことになる。このことは地域の防災力にとっては力強いことだと思う。
 この警鐘新聞が発行される前には、小規模な火災が時々発生していたようである。しかし、昭和57年(1982年)当時の部長が、先輩団員の「無災害を」という気持ちを地域の人にも知ってもらい、地域の人とともに「無災害の記録を作っていこう。」と、新聞の発行を始めてから地域の火災の発生件数は、激減したようである。
 印刷された新聞は、法被をまとった分団部員の手で全世帯に配布されてるが、こうした顔の見える日頃からの地道な活動が20年以上継続して行われていることはすばらしいことだと思う。今後も活動を通じこの地区の「無災害」が続くことを祈っている。

団体概要

  • ・ 大月市
    人 口:31,217人
    世帯数:10,815世帯
  • ・ 大月市初狩町下初狩地区
    人 口:1,455人
    世帯数:489世帯
  • ・ 大月市消防団員:895人
  • ・ 第2分団第1部:28人

※数字は平成17年10月1日現在

実施期間

昭和57年~