第11回防災まちづくり大賞(平成18年度)

【総務大臣賞】「地域減災センター」と地域社会との協働による減災学習の実践

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東北福祉大学地域減災センター
(宮城県仙台市)

事例の概要

 宮城県・仙台市は過去において宮城県沖地震により甚大な被害を受けている。政府発表によれば宮城県沖地震の発生確率は30年以内に99%であり、マグニチュード7.5クラスの地震発生確率は世界一となっている。地震・津波減災対策はまさに喫緊の課題となっている。
 これまで、本学では阪神・淡路大震災、宮城県北部連続地震、新潟県中越地震等の災害発生時には全学挙げて災害救援活動に取り組んできた。過去の教訓から防災対策の重要性が叫ばれながら災害発生から時間が経つと、その意識は低下しがちであった。そこで、「自らの生命は自らが守る(自助力)、地域の安全は地域で守る(共助力)」という姿勢のもと、住民の減災意識の高揚と行動の喚起を図り、災害による生命・生活の被害を軽減するための、地域での取組や実践力ある人の育成を平成16年度文部科学省委託事業(単年度委託)を契機として推進している。具体的には、産学官民連携・協働による委員会を組織し、継続的に減災活動・学習を展開している。これまでの主な取組は、以下のとおりである。

【人材の育成】

  • ・地域減災コーディネーター養成講座の開講(H16・H17)
    〈参加者469名〉
  • ・防災マップ作成支援アドバイザー養成講座の開講(H17)
    〈参加者56名〉

【啓発事業】

  • ・地域減災フォーラムの開催(H16・H17)
    〈参加者1,021名〉
  • ・災害救援ボランティアフォーラムの開催(H17)
    〈参加者300名〉
  • ・NPO法人みやぎ災害救援ボランティアセンター10周年記念「地域減災と災害救援を考える」フォーラムの協働開催(H18)
    〈参加者150名余〉
  • ・防災の基礎知識を紹介する『防災力向上ハンドブック』発行(H17)
  • ・障害者・高齢者の自助力・共助力向上を図る『災害時要援護者マニュアル』発行(H18)
  • ・市民・県民の疑問・質問・提案に応える『減災Q&T(Question and Thinking)今からできる減災』発行(H18)

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「地域減災コーディネーター養成講座」の様子

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ミーティングの様子

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パートナーシップ協約締結式

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開発した非常食を調理し、来場者に振舞う学生

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学生が講師として発表

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災害時要援護者体験コーナーを運営する学生

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乳幼児への人口呼吸訓練

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こどもたちとまち歩きの成果をまとめる

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参加者全員での記念写真

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阪神淡路大震災にて学生の生活、高齢者ケア・こどもの託児サービスの・活動拠点となったプレハブ

苦労した点

  • 1.一人ひとりの災害ニーズに即した取組を進める点。そこで、マスコミ、講座・フォーラム等を活用し、生の「声(意見・提案・知恵など)」を募集し、パンフレットづくりや講座プログラムに反映させている。
  • 2.持続可能な地域減災活動を構築する点。そのため、平成16年度より産学官民・学生が一体となった委員会を組織し、効果的・効率的に地域減災を担う人づくりの地域づくりを推進している。さらに、その充実を図るため行政・杜会福祉協議会・NPO等18団体と「覚書」・「協約」を締結している。

特徴

 こども、若者、高齢者がともに学び、考え、汗を流しあう機会を創出している。具体的には、こどもたちとの「防災マップづくり」、地域への出前講座など。平成18年10月には学内に「減災カフェ(サロン)」を常設し、相互交流・相互学習の充実を図っている。
 これらの取組を契機に、学生サークルが仙台市消防局等と連携し、「災害時非常食」の開発、大学祭におけるハンドブック配布・防災グッズ等の展示、学校・地域における災害時要援護者体験講座等を実践している。

委員のコメント【防災まちづくり大賞選定委員 高野 公男(東北芸術工科大学デザイン工学部教授)】

 東北福祉大学は、杜の都、仙台市の北西、丘陵地に拓かれた住宅市街の中に立地し、総合福祉学部、子ども科学部、健康科学部の3つの学部と大学院、併せて4600人の学生が学ぶ総合大学である。「地域減災センター」は、阪神淡路大震災や新潟県中越地震の際に災害ボランティアを派遣した実績を踏まえ、平成16年文部科学省の受託事業を契機に設置され、今日に至っている。福祉を学ぶ学生たちが災害支援活動や地域防災活動に向かうことは、自然の成り行きと考えられるが、大学サイドが地域福祉の一環として全国に先駆けて防災をテーマに取り上げ、産・学・官・民の連携活動を組織化したことは特筆に値する。「防災」という大上段に構えた姿勢ではなく、「地域減災」という誰でも身近に取り組める発想を理念としたところも大変ユニークだ。文部科学省の「現代GP」にも採択され、「教材開発」や「人材開発」、「地域減災コーディネーター講座」など多彩な啓発普及活動を展開している。災害体験のない学生や市民にどうしたら現場的リアリティをもたせるかが腐心しているポイントのようだ。キャンパスの一角に「減災カフェ」という名の交流の場があり、そこには「減災グッツ」やボランティアを募集する「減災掲示板」などが置かれ、常設の相談コーナーが設置されている。このような核となる接点の場(インターフェース)が地域の中にあることは住民にとっても大変心強いことだろう。「減災コーディネーターの資格化」を当面の目標としているというが、ボランティア活動にも流儀や作法があるようだ。仙台発の「災害ボランティア道」を是非構築してほしい。

団体概要

地域減災センター職員 5名
※学生の企画力・斬新な感性を活かすために本学学生サークル「Withボランティア」及び卒業生の約30名が講座・イベントの企画・実施、ホームページ運営等に関わっている。

実施期間

平成7年~