防府/防災ネットワーク推進会議
(山口県防府市)
事例の概要
■内容
防府市を中心に山口県内で「住民参加型まちづくり活動」の支援(ワークショップ)を進めている民【市民活動団体まちづくりグループ時空の樹会(トキノキカイ)と防災教育を専門に研究している学[山口大学 瀧本浩一助教授]が『地域防災』【地域が世代間のコミュニケーションに格差を生み、コミュニティーが崩壊寸前の現状で”地域づくり”に閉塞感を懐いている時に「防災」が地域づくりに刺激を与える】というキーワードでコラボレーションする団体として防府・防災ネットワーク推進会議(以下、防防ネット)が誕生することになる。
■活動のポイント
住民参加型まちづくり(ワークショッブの手法)を黒子でサポートする活動を、約12年間実行した経験から生まれたノウハウ「まちづくりの知恵袋(甘い辛い入り)」を体に沁みつけているメンバーが出会った『防災』は、「地域住民の視点を基本にするもので、わかりやすい!子どもからお年寄りの三世代が参加できる」という住民参加型まちづくりの活動が追い求めている考え方と一致するものであった。これまでの地域防災は、行政や防災の専門家を主体に、自主防災組織の結成率のアップと活性化に主眼を置いているが、活動の継続の問題、人材育成の問題など多くの問題を抱えている。このような状況下で、地域防災の蚊帳の外にあったまちづくり・川づくり等の市民活動集団から地域防災を指導できる人材を育て、自主防災組織を問わず、防災に関わる機関、組織を側面から支援する個々の集団(コロニー)を地域に形成することを目標に掲げている。防府/防災ネットワーク推進会議は、「まちづくり知恵袋」と「学の玉手箱」が地域というフィールド、そこで活動する市民団体に防災というメニューを広め(防災という名の『菌』を感染)させていくことによって、行政主導の自主防災組織が縦糸なら、それらをつなげ、支える横糸の役目を果たすべく活動している。
コミュニティーFM放送に華城小の防災キッズが出演
防災学習[発表会:もし、真夜中に地震がおきたら]
防災学習[DIG(災害図上訓練)活動状況]
防災学習[街の強さ、弱さを調べよう!]
防災学習[土のう作りを体験]
自然災害対応「初動トレーニング」:指揮所訓練(付与カード)
地域防災研修(下関長府:高潮に備える)
津波訓練(周防大島町):災害時要援護者の搬出訓練
津波訓練(周防大島町安下庄):超満席!
苦労した点
- ・市民活動団体が防災に関わることに対して「バランス感覚(行政方針との整合性)」を持たないと動けない。
- ・地域防災力向上のために必要となる知識や訓練等の技術の習得をするのに土日・夜間しか時間がとれない。
特徴
- ・T-DIG(まちづくりのための図上訓練)の手法を用いて、河川ハザードマップ、高潮ハザードマップ、土砂災害危険区域図などの災害想定データを地域住民に普及定着できる。
- ・官の泣き所である住民合意形成を果たすための手法をもっている。
委員のコメント【防災まちづくり大賞選定委員 吉村 秀實(ジャーナリスト)】
「私たちは防府市内に防災菌を撒き散らしているのです」。「防府/防災ネットワーク推進会議」の議長をつとめる瀧本浩一さんは開口一番こう切り出しました。防災菌と聞いてすぐに思い出すのが「ミーム」という概念です。ミームは、オックスフォード大学の生物学者リチャード・ドーキンスが1976年の著書「利己的な遺伝子」の作り出した言葉で、日本では「意伝子」などと訳されています。ミームは、いわゆる文化的な遺伝子で、様々な文化の中の変異が遺伝(伝承)的に継承されて行くことを言い、災害時に飛び交うデマやファッション、流行語などに強い伝染力を持っています。日本各地にはそれぞれの風土(地形、地質、気候)に根ざした独特の文化があり、災害に関しても祖先から受け継いだ様々な自然災害に対応する地域特有の知恵と伝統が形成されています。古くから水害に悩まされて来た木曽川流域に「輪中」が作られたのはその好例です。しかし、意伝子が災害に対していつも適応的に働くとは限りません。関西地方には大地震が来ないと言われ、まるで無防備だったところに「阪神淡路大震災」(1995年)が起きましたし、日本海側には津波は来ないと信じられていたために「日本海中部地震」(1983年)では、秋田県の海岸に遠足に来ていた学童13人を含む100人が津波の犠牲になりました。
防災・減災活動と言いますと、消防機関の主導の下で十年一日変わらぬ防災訓練を続けているイメージがまだ払拭できませんが、これでは参加者が一向に増えないのは当たり前のことです。「明るく楽しく元気良く」が活動のキーワードという「防府/防災ネットワーク推進会議」の皆さんが、防府市内だけではなく、全国各地に防災菌を撒き散らし、生き生きとした防災病が全国に蔓延して行くことを期待したいと思います。
団体概要
平成16年12月1日に発足。
議 長 :瀧本浩一(学)
副議長 :中谷剛士(官)
事務局長:山崎隆弘(民)と会員32名で活動中。
平成18年度からNPO法人市民活動さぽ一とねっと・防災部として所属し、部活動型市民活動の一翼を担っている。(他に水部、自転車部、ものづくり部、産業振興部がある)
実施期間
平成16年~