第09回防災まちづくり大賞(平成16年度)

【消防庁長官賞】広域ボランティア団体

【消防庁長官賞】広域ボランティア団体

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和歌山民間救援隊
(和歌山県和歌山市)

事例の概要

■内容

 平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災を契機として、「地元が大災害に見舞われた時、自分たちでできる限りのことをやろう」という主旨に賛同する市民有志が集まり、平成7年4月、和歌山民間救援隊(以下「救援隊」という)が発足した。
 救援隊の主要な活動は災害発生時の救援活動であるが、震度6弱以上の大地震又は同等の災害が発生した場合には、各部隊は自主的判断で出動し救援活動に当たるという行動基準が定められている。幸いなことに、そういった大災害は発生していないものの、日常発生する捜索事案や災害に備えた防災訓練など活発な活動を行い、防災体制の整備に努めてきた。
 最近では、これまでの活動に加え、自治会等が開催する講演会に講師を派遣したり、団体主体の防災講演会を定期的に開催し、団体発足の契機となった阪神・淡路大震災の教訓等を語るなどして防災知識の普及啓発活動にも積極的に取り組んでいる。
 また、災害時に民間のヘリが効果的に情報収集や支援活動等を実施できるように、自由に発着可能な場所を示す防災ヘリポートマップの作成にも取り組んでいる。
 和歌山民間救援隊は、県内の防災ボランティア団体の中で、災害対応力はもちろん、普及啓発活動についてもリーダー的な役割を担っている。

【日常発生する捜索事案での活動実績】

  • ・ 平成8年 和歌山東警察署より捜索要請を受け行方不明者の 捜索(27名出動)
  • ・ 平成10年 行方不明のヨットキャプテンの捜索(航空隊)
  • ・ 平成10年 紀ノ川で落水者の捜索
  • ・ 平成11年 徳島上空で行方不明になった小型飛行機の捜索(航空隊)
  • ・ 平成13年 有田市初島沖での水難者の捜索(航空隊、海援隊)
  • ・ 平成13年 病人を和歌山から新宮ヘヘリによる搬送(航空隊)
  • ・ 平成14年 有田市沖で行方不明者の調査(航空隊)
  • ・ 平成16年 美浜町煙樹ヶ浜で遭難者の捜索(航空隊)
  • ・ 平成16年 紀ノ川川辺橋付近での水難事故の捜索(救急隊、航空隊)

【防災訓練への参加】

  • ・ 平成7年度和歌山県総合防災訓練への参加をかわきりに、和歌山市、海南市、有田市、田辺市、新宮市の防災訓練等に毎年積極的に参加している。

【人と防災未来センター研修見学会】

  • ・ 平成13、14、15年に神戸市にオープンした同センターを見学

【その他の活動】

  • ・ 救助犬キャンプ・防災の普及・啓発のための講演会
  • ・ 県防災ボランティアコーディネーター研修会への隊員参加(毎年)

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海援隊

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レスキュー機器搭載バイクの中身

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ヘリからの映像

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ヘリ

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民間救援隊のPR

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レスキュー機器搭載バイクとヘリ

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車載通信機器

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バイク隊

苦労した点

 当団体は、陸・海・空の立体的な防災組織というのが特徴であるが、その特徴を活かす事に苦労した。具体的には、様々な職業や趣味、特技を持った有志がそれを防災に役立てたいと集まり発足したのが民間救援隊である。そのため、お互いの長所を最大限に活かせるような組織作りを行った。それにあたり、人間関係及び資機材(ヘリ・船・バイク等)、資機材を使う安全面の問題に苦労した。

特徴

 他の地域住民で立ち上げている自主防災組織とは違い、隊員の保有する豊富な資機材を活用し、災害時に陸・海・空の立体的な救出活動ができる。
 また、隊員が県下各地域に住んでいることに加え、ハム無線機など様々な通信機器を保有しているため、ネットワークが充実しており、広域的な情報収集ができる。
 さらに、阪神・淡路大震災でボランティアの経験を踏んでおり、災害時には、被災者の立場・地域住民の立場で、より具体的な取り組みや物事を考える事ができる。最終的には行政と住民の間の架け橋になる。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 吉村 秀實(NPO法人環境防災総合政策研究機構副理事長))

 「和歌山県民間救援隊」(以下「救援隊」という)は、10年前の1995年1月17日に発生した「阪神淡路大震災」を契機に、和歌山県内の様々な職業や趣味、あるいは特技を持った人たちが「地元が大災害に見舞われた時に、自分たちでできる限りのことをやろう」という主旨で同年4月に発足した組織である。近年、より切迫する「東海地震」に続いて、「東南海、南海地震」の発生も懸念されており、特に和歌山県は不朽の防災教科書といわれる「稲むらの火」に象徴されるように、古来より津波によって多大な災害を被って来た地域である。「救援隊」は、こうした地震や津波災害に限らず、台風や集中豪雨による洪水や土砂災害、海や山での遭難事故や水難事故など、あらゆる自然災害や事故などの際の救援を想定しており、和歌山市にある事務局を中心に、有田、海南、田辺の各市に支部をおき、民間会社のヘリコプターを活用した航空隊、プレジャーボートを活用した海援隊、普段はモトクロス用のモーターバイクや4輪駆動車を趣味にしている人たちのバイク隊や救助犬隊、さらには、アマチュア無線やパソコンを駆使する通信隊・インターネット隊など、隊員は総勢300名近くに上り、まさに陸・海・空の立体的な救助組織である。この10年、和歌山県では大きな災害には見舞われてはいないが、紀ノ川や和歌山県沖の水難、海難事故の捜索活動や病人のヘリ搬送などに貢献している他、各部隊、各支部は来るべき大災害に備えて防災訓練や講習会などを日常的に続けており、地域の防災ボランティア団体として今やリーダー的な役割を担っている。1月30日に現地・紀ノ川河川敷で行われた「救援隊」の訓練を視察した。訓練には民間のヘリコプター3機のほか、バイク隊や4輪駆動車が参加し、行方不明者を空から捜索し救助する想定で実施されたが、まず隊員たちの「ヤル気」と「使命感」を肌で感じさせられた。また、上空のヘリからデジタルビデオカメラで撮影、地上のテレビカメラで「捜索者発見」の中継映像をキャッチし、陸路救助に向かうというプロの救助作業顔負けの活動振りには舌を巻かされた。
 当大賞の審査は書類審査が中心で、私自身「救援隊」の事前評価をかなり低く見てしまったが、現場は「情報の宝庫」であり、将来的には現地視察も審査に加えて欲しい気がした。

団体概要

  • ・ 事務局:24名
  • ・ 通信隊・インターネット隊:57名
  • ・ 航空隊:22名
  • ・ 救援隊有田支部:17名
  • ・ 海援隊:38名
  • ・ 救援隊海南支部:8名
  • ・ バイク隊:46名
  • ・ 救援隊田辺支部:16名
  • ・ 災害救助犬隊:16名
  • ・ 支援隊その他:34名
  • ・ 紀ノ川レスキュー隊:13名
  • ・ 総員:291名
    (平成16年4月1日時点での隊員数)

実施期間

 平成8年~