第09回防災まちづくり大賞(平成16年度)

【消防科学総合センタ-理事長賞】ともに学びあおう!わたしたちが住むまちの防災活動~町内会や自治会で防災活動に取り組んでみませんか?

【消防科学総合センタ-理事長賞】ともに学びあおう!わたしたちが住むまちの防災活動~町内会や自治会で防災活動に取り組んでみませんか?~

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横須賀(災害)
ボランティアネットワーク(神奈川県横須賀市)

事例の概要

■経緯

 横須賀市の場合、町内会が中心となった自主防災組織の組織率は98%であり、全国でも5本の指に入る。しかし、個々の組織を見ると、必ずしも十分な防災活動を行っているとはいえない部分もあるのが現状である。
近年では、平成16年7月の新潟・福井の豪雨災害の例にもあるように、マンションや新興住宅地など近隣との関係があまりないことにより、助け合いの関係が十分でない地域、高齢者・障害者・外国人など災害弱者と言われる人たちへの避難方法などの対応が問題となっている。また、横須賀特有の急傾斜地や危険な地域などの対応など災害時に起こる問題は数多くある。
 こうした問題の中で、自分たちの住む地域で抱える問題は何であるのか、そしてそれに対して自主防災組織など地元の人たちがどのように取り組んでいくのか。こうしたことのきっかけづくりが行えるよう「防災活動の冊子」を作成した。

■内容

 横須賀市は人口43万人で、自主防災組織が337団体ある。この団体の中から活発に行っている団体の事例を取り上げ、その事例を掲載すると同時に、そうした事例を通して大切と思われることを記載した。
そして、この冊子の目的を「町内会や小学校区などの顔の見える地域で、その地域に住む人たち自身で防災の取り組みが行えるようなきっかけとしての冊子」とした。
 具体的な内容として以下の点を盛り込んだ。

  • ・ 町内会や学校ですぐにでも取り組める防災活動を紹介
  • ・ どのように取り組めばよいのか答えが出せなかった課題を紹介し、話し合いの題材として提供。
  • ・ 自主防災組織や町内会・自治会、行政、作業所などの具体的  な取り組みを記載。
  • ・ 参考になる図書・ホームページの記載

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防災活動の冊子(表紙)

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完成した冊子

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会の情報共有用記録(防災マニュアルニュース)

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冊子完成の報告

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みんなで検討

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事前学習(まち歩き)

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事前学習(まち歩き)

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事前学習(まち歩き)

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集めた資料

苦労した点

 当初はこうした冊子になることは予想しなかった。論議や調査を重ねることで今の形となった。この過程には意見の違いや考え方の違いなど、思いは様々であったためメンバーの気持ちや思いを維持し続けることが苦労した。この目的の冊子を作成するという強い思いを維持できたことは各メンバーの自信につながっている。平成16年度はこの冊子をもとに自主防災組織や町内会へ積極的に働きかけ、一緒に考えられる場づくリを行っていく。

特徴

  • 1.市民レベルで作成した冊子であるため、誰もが取り組める内容であること。この冊子は、防災に興味のある人たちを公募で募集したため、会社員・主婦・退職した人・町内会活動をしている人など専門家ではない人たちで作リ上げたものであるため、市民レベルに立った冊子であること。
  • 2.市全体でどんなところでどんな活動を行っているのか、様々な情報が整理でき、その情報を多くの人に伝えることができること。今回の取リ組みで、地域の活動を他の地域へ伝えることができ、その地域で抱えている問題をともに考えられるようになり、また、他の地域とも協働して活動ができるきっかけとなったこと。
  • 3.防災に関する人材、情報などが集まってきたこと。5ヶ月の期間で、7回の調査活動と25回の打ち合わせなど細かな活動を行ったこと。そして、これら活動を通じて、冊子を作成したメンバーを含めて、いろいろな人とのつながリを作ることができ、人材、情報などが整理され、行政や他の機関・団体などともつながりができてきたこと。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 佐々木 正秀(財団法人消防科学総合センター常務理事))

 防災無関心者、防災に関心があるが何からはじめてよいか分からない防災初心者、普段の活動に何か物足りなく思っている防災参加者等に対して、地域に合った防災活動に気楽に取り組めることをわかりやすく説明した『防災活動の冊子』を作った天が先ず評価できる。特に、ボランティアコーディネーターの講座の受講者や防災に興味のある人達を公募して作成したことで、市民目線で親しみやすい内容になっており、かつ自分たちの問題として一緒に学びましょうという立場で作られているのがよい。さらに、後半の資料編では先進的な事例も紹介しており、具体的なヒントが掲げられ、より実践的なマニュアルになっている点も評価できる。勿論、冊子が評価されたわけではあるが、むしろ冊子を作る過程がおもしろい。当初は防災マップや個人用の防災マニュアルを作成する防災マニュアル製作委員会として発足したが、相応のものがかなりできていることが分かったので、地域における防災活動の冊子の作成に方向転換し、メンバー14人と横須賀市社会福祉協議会事務局3人の計17人が半年にわたり論議や調査を重ね、それぞれの防災への思いをひとつの形にまとめた。それは地域における自主防災活動と同等の苦労を経験することになったが、より一層の自信に繋がったという。さらに、この冊子をもとに『防災ひろめ隊』として自主防災組織や町内会へ積極的に働きかけ一緒に考える場づくりを行っている。この活動が町内会等の自主防災活動に良い刺激となり、横須賀市の防災まちづくりをさらにどう盛り上げていくのか、今後が楽しみである。また、防災活動の冊子がさらに充実し、横須賀市以外の他の地域でも利用されることを期待したい。

団体概要

 1997年6月に横須賀市社会福祉協議会よこすかボランティアセンターを事務局として設立。災害時に備えて平常時から異なる立場のボランティア団体間の相互交流を図り、「顔の見える関係」づくりを行うことを目的に活動を行っている。
 横須賀(災害)ボランティアネットワークは、平成9年に起きた三国町の重油流出事故など、他地域で災害が発生した時に災害救助に向かうなど、防災活動だけでなく災害救援活動にも協力できる体制づくり、並びに、災害器具の活用ができる人材や、災害時のボランティアコーディネーターとして活動ができる人材などの育成を行っている。
 冊子に記載のある防災ひろめ隊は、横須賀(災害)ボランティアネットワークの1つの企画として始まった事業である。会員数は平成16年3月末で個人52名・団体41件。

実施期間

 平成15年11月~平成16年3月(冊子作成については3月にて完了)