第09回防災まちづくり大賞(平成16年度)

【消防科学総合センタ-理事長賞】恵那市家具転倒防止ボランティア作戦「みんなで助け合おう減災たいさく」

【消防科学総合センタ-理事長賞】恵那市家具転倒防止ボランティア作戦「みんなで助け合おう減災たいさく」

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恵那市家具転倒防止実行委員会
(岐阜県恵那市)

事例の概要

■経緯

 岐阜県では2002~2005年までを「東海地震厳重警戒期間」と位置付け、県を上げてその対策に取り組んでいる。恵那市でも、東南海・南海地震の地震対策推進地域に指定され、地震に対して市民の意識を高めることが重要課題となっている。

 阪神・淡路大震災の時には、家具等の下敷きになって亡くなられた方は、全体の84%にも達した。恵那市でも、いつ起きるかわからない大地震に対し、市民とともに対処していく必要が急務となった。そうした中で、災害弱者といわれる高齢者に対して家具転倒防止を行うことになった。

■内容

  • 1.実行委員会の立ち上げ
     平成16年1月19日に、各種団体の代表者14名で「恵那市家具転倒防止実行委員会」を立ち上げ、委員長に社会福祉協議会会長を選出した。事務局を恵那市消防本部に置いた。
  • 2.取付申請者の意向調査
     平成15年11月から、各町内の児童民生委員の方々に説明会を開き、65歳以上の1人暮しの高齢者を対象に意向調査を行った。市内で500人以上の独居老人のうち、206名の方から申請があった。
  • 3.ボランティアの募集
     市内の自主防災隊長(自治会長)に説明会を開き、自治会の中から参加者を募ったり、中学校へ説明に行って生徒に参加を呼びかけたり、市の広報誌や新聞などに掲載しボランティアを募集した。
  • 4.地震体験車による啓発
     平成15年12月に、市内の小中学校や保育園等に地震体験車を持って回り、地震の恐ろしさを体験してもらったり、実際に家具を乗せて揺らしてみたりと実験を行った。6月にも行事等に参加し、ボランティアの募集や取付方法の資料を配布した。
  • 5.研修会等の開催
     6月20日に恵那市防災リーダー研修会を開催し、(財)市民防災研究所理事の池上三喜子氏を講師に招き、「家具転倒防止の必要性・重要性」をテーマに講演していただき約400名の方が参加した。その他、技術者等に家具の取り付け方法などの講習会を数回行った。
  • 6.事前調査
     申請者宅に3名以上で調査に入り事業説明を行い、部屋の見取り図、家具の計測、写真を撮り、申請者に取り付けの承諾書をいただいた。
  • 7.事前準備
    • ・ 日赤奉仕団と中学生により金具の仕分け。
    • ・ 町づくり市民協会により証明書(ボランティア修了証)の発行。
    • ・ 自動車解体業者からシートベルトを譲っていただき、縫製会社に無償で縫製を依頼。
    • ・ 建物解体業者からタンス等を譲っていただき、実技講習会や研修会に使用させていただく。
  • 8.ボランティア作戦当日
     自主防災隊をはじめ、各種団体総勢約900名が参加し、1チーム5名以上で編成し、申請者142名宅へ赴き、寝室や居間等の家具の固定に入った。

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開会式

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広報表紙

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リーダー研修

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リーダー研修

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取り付け風景

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取り付け状況の把握

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取り付け風景

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防止器具等振り分け

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転倒防止方法を紹介するための模型

苦労した点

  • 1.これだけ多くの独居老人に一斉に取り付けた前例が無く、実行委員会・事務局は成功するか心配だった。
  • 2.申請者には金銭的負担は一切かけず行うため、一軒につき3箇所程度の固定しかできない予定だったが、シートベルトという固定方法が見つかり、金銭的余裕ができ、取付個所が予定より多く出来た。
  • 3.申請者に対し、ボランティアに参加していただける人数が集まるか心配だったが、多くの人が関心をもち参加していただけた。

特徴

 これだけ多くの方に対し、一斉に撮り付けた前例も無く、申請者には自己負担をかけずに行えた。取り付けには民生委員・自主防災隊・中学生・女性防火クラブ・技術者・消防団等でチームを編成したが、ほとんどの人たちが当日の朝初顔合わせだったが、チーム内でよくまとまり、家具の移動から取り付けまでスムーズに行うことができた。

 最近の社会情勢の中では、見ず知らずの人を家の中に入れさせない方が多いが、民生委員を中心に自治会の方のもと、消防団等が事前調査に入り申請者の不安を取り除くように行い、当日も調査に入った消防団員が担当するよう配慮した。

 当初206名の申請があったが142名にまで減少した理由としては、家族や親戚が取り付けるということで除外された方がほとんどだった。

 今回ボランティア作戦を行ったことにより、「ただ参加した」だけではなく、自宅へ戻っても取り付け方法などを学んだことで、自宅でもできる防災対策の一つとして効果があった。

 作戦以降も、自主防災隊の訓練・研修会等で地震に対する意識が向上し、自主防災隊の意義である「自分たちの街は自分たちで守る」意識が芽生えてきた。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 長澤 純一(独立行政法人消防研究所理事))

 中山道大井宿として繁栄した恵那市は、山間ののどかな町で、もともと災害の少ない地域だ。しかし、この地域は、活断層の地震発生確率が調査されている中で我が国第3位のあでら阿寺断層を抱えていることもあり、岐阜県が東海地震厳重警戒期間(平成14年~平成17年)を定め、恵那市も東南海・南海地震の地震対策推進地域に指定(平成15年12月)される前後から、何か地震対策をしなければという気運が盛り上がった。災害弱者の一人暮らし高齢者を対象に家具転倒防止事業を行うこととなったのは、阪神淡路大震災で家具等の下敷きになって亡くなった人が大多数を占めたことが教訓となっている。市の財政当局に予算要求をしたが、最初は認められず(その後わずかの材料費程度がついた。)、住民の代表からなる実行委員会を立ち上げ、ボランティアを募集した。
 一人暮らし高齢者とのパイプ役は、月に2回広報誌「まめなかな」を配る民生児童委員さんだ。実際に訪問させていただいた80歳のおばあさん宅には、担当の民生児童委員さんも来られたが、厚い信頼関係で結ばれている。技術指導は、大工さん。建物解体業者から譲られたタンスで技術講習会も開催した。ボランティアのネームプレートの作成などには中学生が当たり好評だった。自動車解体業者からシートベルトを譲り受け、縫製業者に無償で縫製を依頼した。美観を損なうという苦情は、ベルトを畳の下で固定する等の工夫により、皆無だった。おばあさんも「命のほうが大事」ときっぱりと言い切る。

 この事業をきっかけに、一般家庭にも広がり、自治会単位での取組みも進む。市営住宅も予め家具転倒防止器具が付けられる構造にすることを検討中だ。今後は、平成16年10月に合併した地域にも広げることが課題だ。

 家具転倒防止という着眼点が素晴らしいのと、最初に予算がつかなかったことがかえって住民の自主性、創意工夫、防災意識、連帯感の向上に役立った好例である。

団体概要

  • ・恵那市人口:36,246人
  • ・恵那市世帯数:12,066世帯
  • ・ボランティア作戦共催団体:35団体、約900人
    (数字は平成16年8月1日現在)

実施期間

 平成16年1月~