【消防庁長官賞】安全、安心を贈る街、災害に強い街づくり「銀座」
銀座震災対策委員会
(東京都中央区)
事例の概要
■経緯
日本はもとより、世界的なショッピング街でもある「銀座」は、昼夜を問わず、毎日約15万人もの人が訪れると言われている。この「銀座」が実際、巨大地震などの大災害に見舞われたとしたら、その被害は人的にも物的にも想像を絶するものと思われる。
このような大きな不安の中で、地元銀座地区の「京橋二の部連合町会」、「三の部連合町会」、「銀座通連合会」の人々は、事業所と一体となって、これら銀座に集う人々を大災害から守り、さらに自分達の町「銀座」を守っていくための方策について検討を始めた(銀座の震災対策を考える会を開催)のが、昭和54年3月のことである。
以後、何度となく検討した結果、地域の自主防災行動力を高めていくことが重要であるとの結論に達し、昭和56年3月に銀座震災対策委員会が発足して、年1回銀座震災訓練を開催することとし、昭和57年に第1回を開催し、平成16年で第23回を迎え、着実に自主防災行動力を身につけ実践している。特に、第19回目となる平成12年には、東京都総合防災訓練銀座会場として自衛隊等、国の応援を受け実施した都の訓練と合同開催となり、極めて大がかりな自主防災訓練となった。
■内容
- 1.平素から、町会、事業所の構成員は、銀座祭等を通じて連帯感を身に付け、大災害発生時にも地域が一丸となり「銀座」に訪れた観光客、買い物客に対し、安全を第1とした活動を実践している。
- 2.訓練の概要は、銀座地区の町会、事業所、地元消防団等約5,000人が参加し、銀座中央通り及び数奇屋橋に向かう晴海通りを訓練場所として、東京地方に強い地震(マグニチュード7.2、震度6強)が発生したとの想定で、各事業所等がそれぞれの消防計画に基づく初期対応訓練を実施する。そして、各訓練拠点を設けて、町会関係者及び事業所は、初期消火訓練、応急救護訓練、避難訓練を実施し、救護所の設置及び運営訓練を行っている。また、中央区等防災関係機関と連携して、大規模な安全と安心を提供する防災訓練等を実施し、各町会・事業所の自主防災力と救護力を身に付けている。
事業所の避難活動訓練状況
消防団による避難訓練指導状況
事業所による震災時応急救護訓練状況
消防団の上級救命講習受講状況
銀座震災訓練担架搬送指導状況
事業所の避難訓練状況
事業所の震災時自衛消防訓練状況
消防団による応急手当指導状況
震災対策本部運営訓練状況
苦労した点
- 1.大震災等から自分たちの町「銀座」を守るという趣旨には理解を示し賛同するが、いざ実現となると、地域の特性上、町会、事業所、各関係機関間に多岐にわたる問題が多く発生したが、何度も地道に説得、説明を実施するため足をはこび、計画の実現を目指した。
- 2.計画は幾度となく再検討をし、関係機関、事業所の問題を解決し、「銀座を守る」という強い熱意をもって時間をかけ、ねばり強く、事業所、各関係機関と整合を図り、昭和57年「第1回銀座震災訓練」が多くの賛同者を得て開催することができた。
- 3.昭和54年「銀座の震災対策を考える会」発足から「第1回銀座震災訓練」開催まで、3年以上にわたり、事業所、各関係機関等との説得、交渉が続いた。
特徴
- 1.銀座震災訓練は、地域住民の防災訓練と、事業所の自衛消防訓練が同時に行われる地域一体によるもので、全国でも珍しい民間主導型の官民一体となって行う防災訓練である。また、自主防災行動力の向上及び町会と事業所間さらには事業所同志の防災意識の構築にも貢献している。
- 2.「銀座の真ん中で防災訓練」は大きな反響を呼び、第1回目から各方面の取材を受けることとなり、そのことが広く全国に向けた防災意識啓発に寄与している。
- 3.地域内にある民間企業団体銀座銀実会が自主参加により、観光・買物客で帰宅困難者の安心メール受付け訓練を実施し、避難者に対しても安心情報を伝え好評を得ている。
- 4.訓練内容も毎年工夫が加えられ、事業所等の参加意識が高く、4000~5000名が参加し、一人ひとりが何らかの訓練行動を行うことにより意識と行動力を身につけている。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員長 澤井 安勇(総合研究開発機構理事))
平成16年暮れに中央防災会議の被害予想が発表され、世間の首都直下地震対策への関心も急速に高まっている折であるが、首都直下地震のひとつの課題が盛り場における対策であろう。その意味で、1日15万人が訪れる全国有数の商業地である銀座商店街が中心となって永年展開されてきた民間主導型の自主防災活動が受賞されたことはタイムリーであり、他の商店街への波及効果も期待できる事例と考えられる。
銀座震災対策委員会は、銀座商店街の3つの連合会が中心となり1981年に設立され、例年防災の日の前に、地元消防団、消防署、警察署、区役所さらには医師会等の関連団体の協力を得て、銀座通りで実施される防災訓練をピークとする一連の活動を行っている。委員会活動を裏で支えてきたのは、地元消防団長も兼ねている事務局長や地元消防関係者など、銀座を守るという強い愛郷心に支えられた人々の熱心な努力の積み重ねであると感じた。また、銀座通りで実施される防災訓練は、極めて実践的なメニューを短時間で効果的に消化していくという繁華街ならではの工夫が凝らされており、また、東京での発災時の課題のひとつである帰宅困難者対策にも取り組んでいる点など他の商業地域における自主防災活動にも大いに役立つ内容が盛られている。メンバーの高齢化や夜間無人化の問題など、商店街における自主防災活動の共通的課題もあるが、是非、末永く継続されることを期待したい。
団体概要
- 1.銀座震災対策委員会
- ・ 京橋二之部連合町会(8町会)
- ・ 京橋三之部連合町会(7町会)
- ・ 銀座通連合会(町会に包含されている)
- ・ 区域内の事業所
- 2.銀座震災対策委員会事務局
京橋消防団第3分団(22名)
実施期間
昭和57年~