【消防庁長官賞】市民団体による自主防災リーダーの育成
国分寺市民防災推進委員会
(東京都国分寺市)
事例の概要
■経緯
「国分寺市民防災推進委員会」は、国分寺市が毎年開校する「市民防災まちづくり学校」の修了者の中から本人の承諾を得て国分寺市が認定した市民防災推進委員により構成されており、昭和59年6月2日に防災推進委員約150名で発足した。
推進委員会が発足した背景には、地域社会の防災まちづくりリーダーである推進委員から「個人での防災啓発活動には限界がある」、「委員同士で話し合いや交流する場、また、学習する機会が欲しい」などの声の高まりがあった。
■内容
本委員会の目的は、防災ボランティア活動を通じて、市全体の多様で自主的な市民防災の普及と発展を図ることにある。平素から市民自らが行う自主防災組織の育成に尽力しており、震災時における自助や共助の実践を目指している。本委員会では「委員相互の交流と情報交換」や「委員の研修」など具体的な活動を進めている。
- 1.委員相互の交流と情報交換
市内全域に散らばる592人の推進委員の交流を図り、情報を共有化することを目的に、毎年「市民防災推進委員のつどい」を開催している。ここでは、推進委員同士で自分たちが住んでいる地域に応じた防災に関する意見や考えを交換し、自分の考えについて修正や確認する場となっている。推進委員からは「自分の考えに自信が持てた」、「情報交換ができて救われた」等の感想が聞かれ、推進委員はそれぞれの地域に戻り、防災リーダーとして地域の自主防災組織の育成に生かしている。
また、自主防災組織が結成されていない地域の推進委員にとって、推進委員会事務局は自主防災組織を結成している町会や自治会から参加している推進委員との交流や情報交換の場であるとともに、市内の自主防災活動に関する情報が入ってくるため、教訓や事例を学ぶ場にもなっており、ここで得られたことは自主防災組織結成に向けた活動に生かされている。 - 2.委員の研修
推進委員会では、毎年、防災講演会や防災関係施設および他のまちづくり地域見学会を行っている。平成16年度は、講演会や、新潟県中越地震後には調査に派遣された市職員の講演会を開催した。また、市と共催で耐震診断講習会を開催して、家具転倒防止の重要性について学んでいる。
これらの研修に参加することにより、推進委員は一人ひとりの防災に対する知識を高め、地域でのまちづくり活動に生かすことができる。このように、委員の研修は自主防災組織や地域防災リーダーの育成に反映されている。
国分寺まつり(転倒防止展示)
防災ひろば・救出救護
防災ひろば(搬送訓練)
防災ひろば(初期消火訓練指導)
耐震診断講習会
防災ひろば(煙ハウス)
防災ひろば(通報訓練指導)
防災ひろば(救助犬検索訓練)
苦労した点
本推進委員会が発足した昭和59年には、国分寺市の自主防災組織である防災まちづくり推進地区が3地区認定されていた。しかし、昭和60年に新たに1地区が認定されて以降、自主防災組織結成にはなかなか至らず、約9年間の空白の後、平成6年にようやく5番目の推進地区が市から認定された。
この間、市内各所に散らばる推進委員は、それぞれの町会や自治会における定期的な防災訓練の実施などを通じて、防災行動力の向上や防災の普及啓発に努め、自主防災組織結成の気運を盛り上げた。市民防災推進委員会はこのような推進委員たちの活動を継続的に支援してきた。
特徴
市民防災推進委員会は行政主導ではなく、市民自らが行う自主防災組織の運営と育成に尽力しており、震災時における自助や共助の実践を目指している。行政から何らかの負託を受けているのではなく、独立した活動を行っている組織であり、行政と対等関係にある。あくまでも市民の宙発的な活動により、「自らのまちは自らが守る」をモットーにしている。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部教授))
国分寺市は防災まちづくり活動に熱心な自治体で、「防災学校」の活動が第一回の大賞に選ばれている。今回の受賞は「防災学校」の修了生が、さらに防災に対する勉強を続け、活動するために「国分寺市民防災推進委員会」という組織を自主的につくり、市民のために防災活動の実践を進めていることが高く評価されたものである。
全体的な組織である「推進委員会」は昭和59年に結成され、現在の会員は577名である。この委員会は独自の企画としての「市民防災ひろば広場」の実施の他、国分寺市や消防署と協力して、市が主催する「まつり」、防災訓練、防災研修にも積極的に参加し防災意識の普及につとめている。
委員会は、市をいくつかのブロックに区分し、ブロック内に住む委員の組織化が進んだ地域を「防災まちづくり推進地区」に指定している。現在、8地区、市の面積の3割、がこの推進地区になっている。推進地区は、地域の推進委員の活動単位であり、推進員は市民への防災に関する情報の提供、地域での訓練の実施、防災情報誌の作成を行い、「防災推進委員のつどい」で委員相互の交流や情報の交換を行っている。地域に密着した組織であることから、地震発生時に推進員はどこで、どう活動するか、平時の啓発活動のあり方の検討など、地域の実態にあったきめ細かな防災対策の検討を進めている。推進員は阪神淡路大震災の発生で、「地域扶助活動のリーダー」として重要性をさらに強く自覚したという。
国分寺市民防災推進委員会は全体の委員会とその下部組織である「推進地区」の組織化がしっかり行われており、それぞれの単位での推進委員の役割分担や活動内容が明瞭に整理されている。それによって、市全体と地域の両方において、きめ細かく、着実な運動の展開が可能になっている。これが取り組みのすばらしい特徴である。このリーダー養成の取り組みは一朝一夕にできたものではなく、推進員の高い見識と努力の結果である。しかも、会の発足以降20年以上にわたって、この運動が発展的に継承されていることはすばらしい。
国分寺市での受賞は今回で2度目であるが、さらにこの活動を展開して、3度目の受賞を期待したいものである。それが可能に思える、そんな元気な組織である。
団体概要
国分寺市民防災推進委員会は、推進委員592名(平成17年10月現在)により構成されている。自主防災リーダーを育成する活動以外にも、次のような活動も行っている。
- 1.市民防災ひろばの開催
年1回開催している推進委員会主催の防災訓練であり、平成17年で17回目となる。防災相談や防災用品の展示・予約販売、初期消火訓練、119番通報訓練、応急救護訓練等多数の訓練体験コーナーを開設している。 - 2.市民防災だよりの発行
年2回市民向けに市内の自主防災活動や推進委員会活動に関する情報誌を発行している。 - 3.市総合防災訓練への参加
避難訓練等に直接参加するとともに、防災コーナーを開設し、家具固定方法実演など普及啓発活動を行っている。
実施期間
昭和59年6月~