消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
災害救助青年隊及び女性救護隊の結成と活動
平野区地域振興会喜連北連合町会・同社会福祉協議会
(大阪府大阪市)
事例の概要
■経緯
平野区喜連北連合町会は、区内でもとりわけ住民の防災意識の高い地域で、阪神・淡路大震災の教訓から、自らのまちは自らの手で守る精神で、災害時における近隣相互救助の備えのため、平成9年6月22日に総勢271名による「災害救助青年隊」を結成して以来、関係機関の協力を得ながら防災救助訓練を実施してきたところである。
平成18年度からは、大幅な増員計画等を実施し、体制の充実強化を図ってきた。平成20年現在、「災害救助青年隊」615名、「女性救護隊」483名、合計1,098名となり、ついに1,000名を超えた。
防災装備器具としてヘルメット、腕章のほか手斧やジャッキなど救助資器材を配備し災害に備えており、災害発生時、男子隊員の殆どがすぐには帰宅できない場合を想定し、女性隊員のみでの活動訓練も実施している。
防災訓練の様子
バケツリレーによる水の汲み上げ
バケツリレーの様子(1)
バケツリレーの様子(2)
救助訓練の様子(1)
救助訓練の様子(2)
苦労した点
災害時の対応は行政にまかせるという住民の意識を、住民自らで行動するという認識に理解を広めること。
当初は、活動に難色を示していた役員に対して、代表自らが活動の意義を説きながら、地域の共通の意識啓発につなげることができた。
特徴
人口約7,000人の住民に対して1,098人の救助体制を組織し、現実的な対応が出来ること。とりわけ、大都市では地域の活動に熱心でないと言われがちな青年層が多数参加していること。
当該地域は11の町会で構成されており、1町会ごとに青年隊50名、女性隊30名を基本に配置し、きめ細かい対応ができるようにした。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 木原 正則(総務省消防庁予防課長))
総世帯数が約2,100の喜連北連合町会において、災害救助青年隊及び女性救護隊の隊員数が約1,100名ということは2家族に1人以上という入隊率となる。高齢者と子供を除いて全員入隊に近い状況であり、この地域の防災に対する並外れた熱意の賜と言える。
一方でこれまでの道のりは決して楽なものではなかった。阪神・淡路大震災を受けて隊を結成したが、その後活動が停滞する時期も経ている。それでも人づてに入隊を呼び掛け、ここ数年で隊員数を4倍にした。個々の町会にノルマを課すことはせず、1人でも多くの参加を呼び掛け続ける姿勢が功を奏したと言えるだろう。
訓練方法にも工夫がある。倒壊家屋からの人命救助は男女ともに実施。ここでは女性も炊き出しだけとはいかず、訓練用の瓦屋根実物大模型に上って作業する。大都市近郊地域の共通課題であるが、男性の多くが勤めに出かける平日の昼間の被災を想定すれば、女性も救助活動に参加せざるを得ない。実践性に着目した訓練方法の改良が続いている。訓練で使用された瓦屋根模型は大阪市が買い取り、他地域での訓練に貸し出しているという。行政とも良好な関係を築くことはここでもやはり成功の一因となっているのだろう。
また、この地域では自分の地域を守ろうとする熱意もさることながら、他地域への貢献も忘れていない。防災資機材は住民宅に配備されているが、他地域への転居の際、喜連北連合町会のリーダーは転居先に持って行ってもらうと言う。町会で新たに資機材の補充が必要となるが、引っ越した先の地域で防災の取組が広がるならその方がいいという考え方だ。地域内、さらには地域間での人と人との繋がりが防災に欠かせないことを知っている。こうした理解にもこの地域の安全を支える秘訣があるように感じる。
団体概要
- 名称
- 喜連北連合町会
- 人口
- 7,337人
- 世帯数
- 2,981世帯
(平成17年国勢調査)
実施期間
平成9年~