消防庁長官賞(防災情報部門)
ダイちゃん・あいちゃん地震防災キャンペーン ~番組とハンドブックによる防災意識向上への取り組み~
株式会社 静岡第一テレビ
(静岡県)
事例の概要
■経緯
静岡第一テレビでは、想定される東海地震に対する県民の防災意識向上を目的に平成13年4月より「ダイちゃん・あいちゃん地震防災キャンペーン(旧名称:Love!! Shizuoka 地震防災キャンペーン)」をスタートさせた。キャンペーンは5分間の地震防災専門番組「地震防災チェック~わが家と家族を守るために~」の放送と、小学1年生向けの地震ハンドブック「地震ってなあに?」の製作・配布を活動の主な2本柱としている。
1. 番組による取組
- 番組名
- 「地震防災チェック~わが家と家族を守るために~」
- 放送日時
- 毎週土曜日 11時40分~45分
※再放送:翌日曜日26時45分~50分 - 放送開始
- 平成13年4月~
- 番組趣旨
- 巨大地震が起きたら、静岡県民1人1人がどう立ち向かうのか・・・。
5分間の番組では、視聴者からの疑問や質問に答えるほか、防災に対する行政や民間の取り組みの報告、地震用語の解説など、地震防災に関わる様々な情報提供を継続しながら、「わが身と家族を守る」“自己責任”型防災に対する県民意識の喚起を図っている。地震防災に特化したレギュラーの専門番組は、静岡県で唯一である。
●主な放送事例
- ・自治体関連
静岡県が推進する耐震化プロジェクト「TOUKAI-0」の概要、各種防災訓練、津波被害対策、自主防災活動 - ・防災汎用知識
災害時の水道・ガス・電気等ライフラインについて、緊急地震速報、親子防災教室 - ・企業関連
耐震家具、一般向けシェルター、災害対応型自動販売機、緊急地震速報受信専用装置、地震保険 - ・その他
各地の地震災害事例を随時紹介、教訓、課題の解説等
- 特別番組
- 毎年度1回、地震防災をテーマにした55分の特別番組を制作・放送。
【過去3年の放送実績】
- 平成18年1月14日(土)
「震災の警告~東海地震への新たなる取り組み~」 - 平成18年11月4日(土)
「東海地震を知る~“沈黙の30年”で見えた巨大地震の姿~」 - 平成20年1月19日(土)
「大地震から命を守る~なまず先生の防災教室~」
- その他
- 毎週日曜日17時25分に15秒間の「ダイちゃん・あいちゃんの防災チェック」を放送。月替わりで地震防災に関する一口メモを告知し、レギュラー番組と合わせながら防災意識の啓発に努めている。
2. 地震ハンドブックによる取組
(1)地震ハンドブックの配布
このハンドブックは、小学校の低学年から地震防災に対して理解を深めてもらうとともに、家族皆で読んで家庭内での地震対策にも取り組んでもらうことを目的に製作。平成13年以来、毎年9月1日の「防災の日」に合わせて、静岡県内にある国公私立の小学校1年生全員に無償配布。
【平成20年の実績】静岡県内537校1年生:3万5345人
【8年間の配布実績】約28万6000人
- 内容
- 地震ハンドブックは静岡県地震防災センターの監修のもと製作、毎年改訂している。内容は「地震発生のしくみ」「地震発生後の対処方法」「日頃の防災準備」「東海地震」で構成。小学生にも親しみを持って読んでもらうように、静岡第一テレビのキャラクター「ダイちゃん・あいちゃん」のイラスト入りで分かりやすく解説している。毎年、改訂を重ねており、平成20年度版は「より読み易く、より分かり易く」をテーマに、構成の見直しと解説文の要約化(文字数の削減)など大幅な改訂を行った。また最新情報を取り入れることも心掛けており、平成20年版には6月に発生した岩手・宮城内陸地震を受け、活断層に起因する地震発生の図解を付け加えた。
(2)地震ハンドブックを使った活動
- ①静岡県地震防災センターの子供向け地震講座「なまず博士と一緒に学ぼう」に協力。ハンドブックを題材に、参加者に地震や防災について分かり易く解説。年間約10回実施している。
- ②防災教育の教材として、小学1年生以外のハンドブック活用にも積極的に協力。毎年、小学校から追加オーダーが多く、内容の分かり易さから特別支援学校のオーダーにも随時対応している。
- ③9月1日「総合防災訓練」の一環として静岡市葵区で開催された防災展示会にて、地震ハンドブックのパネル展示と一般市民へのハンドブック配布を実施している。
- ④静岡県地震防災センターにて来館した子供にハンドブックを配布、また館内説明の際にも使用している。
「地震防災チェック」平成20年9月13日放送分
地震講座「なまず博士と一緒に学ぼう」に協力
情報番組「静岡○ごとワイド!」でハンドブックを紹介
ハンドブックを使った小学1年生の防災授業
ハンドブックを使った小学4年生の防災授業
ハンドブックを使った防災授業
「地震防災チェック」平成20年8月23日放送分
これまで制作した地震ハンドブック
「防災展示会」(静岡市葵区)での広報活動
苦労した点
- 1. 番組による取組
平時の暮らしにあって、ともすれば疎かにされがちな地震への備えについて短時間のテレビ放映の中で、専門的で難解な防災知識も含め、できるだけ簡潔に、分かりやすく解説し、継続的に注意を喚起していかなければならない点。
長期継続番組の特性に由来する、テーマや内容の重複、マンネリ化の印象に対して既成知識のリピートによる注意喚起の実効性も尊重しつつ、最新防災事例の掘り起こしなどにより、視聴者への訴求を図らなければならない点。 - 2. 地震ハンドブックによる取組
地震ハンドブックは、小学1年生が読むことを前提に製作しているため、文章中の漢字には全て読み仮名を付けたり、イラストや写真を数多く取り入れて、子供たちに分かり易く、読み易い構成を心掛けている。
平成20年版は、それまで多かった文字数を極力減らすため、全体構成の見直しや個々の解説文の要約などを行った。監修先の静岡県地震防災センターをはじめ関係者との打ち合わせを何度も重ねながら編集にあたったが、専門用語の多い内容を、意味を損なわずに分かり易く要約していく作業に最も苦労した。
特徴
- 1. 番組による取組
静岡県内で唯一の“地震防災”をテーマにしたレギュラー番組として、放送開始から7年以上にわたり、視聴者の防災意識の向上に努めている。
国内外で大きな被害を伴う地震が発生した場合には、その地震からもたらされた教訓などを積極的に番組で取り上げている。 - 2. 地震ハンドブックによる取組
地震防災に特化した内容で、なおかつ小学校低学年を対象にしたハンドブックの定期的な発行・配布は静岡県内では唯一。
8年間の配布実績は約28万6000人に上り、学校現場では、防災教育の教材として評価を頂いている。
1年生だけでなく、小学2年~6年生まで、どの学年の防災教育にも使える内容のため、毎年各小学校からの追加オーダーが多い。また、その分かり易さから特別支援学校での防災教育にも使用実績がある。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 重川 希志依(富士常葉大学大学院環境防災研究科教授))
東海地震の発生に備え、静岡県内ではテレビ、ラジオ、新聞などの各マスメディアが繰り返し防災に関する情報を報道している。その中で、今回受賞した静岡第一テレビは、平成13年4月から「ダイちゃん・あいちゃん地震防災キャンペーン」をスタートさせ、毎週5分の防災番組の放送と、県内の全小学1年生に地震防災ハンドブックを配布し続けている。「偉大なるマンネリ番組でいいじゃないか、来年もまた同じことをやっていこう」の精神で、既に8年が経過した。県内の小学生の間では、このダイちゃん・あいちゃんはかなり有名なキャラクターとなっている。これ以外に年1回、1月17日前後に1時間の防災番組を放送している。これらのキャンペーンは社内の報道部が担当してきたが、平成20年8月に人事発令がなされ、キャンペーン推進のための委員会組織が立ち上がり事務局機能が確立したことが全社内へのアピールにつながった。
また社内の人事異動で報道の記者であろうと営業職であろうと、災害時には適切な対応をとることが可能となるように、職員の防災の勉強会開催や夜間の初動訓練を繰り返し、平成16年には誰にでも分かりやすいように災害時の対応手順をビジュアル化して示す「大規模災害対応マニュアル」を作成するなど社内の防災力強化のために様々な取組がなされている。
テレビ局にとって番組の視聴率は非常に重要なことである。防災関係の番組の視聴率は5%程度と決して高くは無いが、スポンサーとして住宅メーカーやライフライン企業の理解と協力を得ながら放送を続けている。経費節減の折ではあるが、防災のキャンペーンはメセナの一環として「ずっとこのマンネリをやり続ける」という言葉が印象に残った。
団体概要
- 【名称】
- 株式会社静岡第一テレビ
呼出符号JOSX-TV/JOSX-DTV - 【設立】
- 昭和54年(1979年)2月15日
- 【開局】
- 昭和54年(1979年)7月1日
- 【所在地】
- 本社:〒422-8560静岡市駿河区中原563番地
TEL 054-283-8111(代) - 【資本金】
- 10億円 【代表取締役社長】福岡常行
- 【従業員数】
- 115名(平成20年4月1日現在)
実施期間
平成13年4月~