第11回防災まちづくり大賞(平成18年度)

【消防科学総合センター理事長賞】災害時高齢者助け合いネットワーク

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桜丘一丁目町会
(東京都世田谷区)

事例の概要

■経緯

 都心に近く専用住宅や共同住宅が多い世田谷区の中で、桜丘一丁目町会は区のほぼ中央に所在し、面積の半分近くを東京農業大学が占める閑静な住宅地に組織された、小規模な町会であるが、世田谷区の高齢化率17%に比して、桜丘一丁目は19%と非常に高い。
 首都直下型地震が懸念されるなか、従前から取組んでいる防災活動に加え、高齢者の皆さんが住み慣れた地域で安心して生活する為の「災害時高齢者助け合いネットワーク」づくりが必要であるとの町会住民の強い要望により実施した。

■内容

【継続性】
 町会内各住民の防災への取り組み意識は高く、桜丘小学校を会場に平成12年から毎年総合防災訓練を実施しており、年末等に実施する夜警に至っては、昭和38年以来43年目を迎えている。平成17年10月から「災害時高齢者助け合いネットワーク」を構築し、毎月一回事業の年間スケジュールを作成して、すべての高齢者の援護を目標に活動している。

【発展性】
 これまでの継続的な防災活動に加え、「災害時高齢者助け合いネットワーク」づくりにむけ、援護への申請方法・援護体系等についての緻密な話し合いを数ヶ月にわたり展開し、平成17年10月から当該ネットワークの運用を開始した。
 現在は、ブロックリーダー会議に併せて、車椅子介助や応急救護等の講習を実施し、援護者の意識の高揚を図るとともに、援護関係を明記した助け合いマップを作成し、緊急時は他のリーダーが補完できるよう、要援護者の了承のもとにリーダーのみに配布している。

【連携】
 世田谷区及び世田谷消防署との情報交換はもとより、年間スケジュールに基づく防災訓練・救命講習等の参加、視聴覚による区職員の防災指導を受けるなど、連携した取り組みを実施している。

【自主性】
 独自の援護体系を基に、行政機関の意見を参考にして、回覧版の作成や助け合いマップの作成など自主的な活動をしている。
 車椅子・リヤカー・担架等を購入し、平時・有事にわたり活用すべく管理している。

【地域特性の反映】
 小規模な町会であるメリットから、訪問効果が早期に表れ、親近感・信頼感が醸成されるとともに、ブロックリーダーとの援護体制のみならず、町会全体の連帯感が高揚しつつある。また、今後は、各機関との連携を礎とした、教養・実習による各リーダーの更なる質的向上の醸成が課題となっている。

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要救護者宅への訪問

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車椅子取扱い訓練

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車椅子取扱い訓練

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応急救護訓練の実施

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保有資器材

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ブロックリーダー会(三角巾取扱い訓練)

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応急救護訓練の実施

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資器材収納庫

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防災訓練への参加

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レスキューキット取扱い訓練

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保有資器材

苦労した点

  • 1.ブロックリーダー(援護者)と高齢者(要援護者)とのコミュニケーションを早急に構築する手法について考察し、初回の表敬訪問に始まり、定期的な訪問と結果の報告及び記録方法に思案した。
  • 2.助け合いマップの作成に伴う、プライパシー問題と情報管理方法に苦慮した。

特徴

  • 1.援護者と要援護者が1人対1人であることから、災害時の行動を効果的にするため援護者は要援護者を定期的に訪問し、お互いの信頼関係を築いている。
  • 2.全援護者がボランティア保険に加入している。
  • 3.災害発生時の援護行動が明確にされている。(救命箱を持参しての基本3項目)
  • 4.援護者を指名制ではなく、申請によるボランティア制としている。
  • 5.個人情報保護を遵守し、要援護申請者の承諾書を基に登録制とし、情報管理の徹底を図っている。

委員のコメント【防災まちづくり大賞選定委員 益本 圭太郎 ((財)消防科学総合センター常務理事)】

 東京都世田谷区桜丘一丁目町会は、平成17年10月に始めた「災害時高齢者助け合いネットワーク」を構築し、一人暮らし老人など災害時要援護者が無事に避難できる活動が、高齢化社会での災害時の優れた対応として評価され、この度の受賞となった。このような活動は、40年以上続く年末夜警活動や他の町会と合同で行う総合防災訓練、また、災害時に必要な備品を町会で整備するなどの継続的且つ自主的な防災活動の中から生まれてきた。「助け合いネットワーク」は、簡単にできあがったわけではない。災害時に、要援護者と援護者とが1対1で対応するシステムを築くために、町内にボランティアを募りまず援護者を確保し、さらにお互いの信頼関係を築くため、年に数回は両者が対面するとともに、援護者は、3ヶ月に1度は研鑽に励んでいる。しかし、実際に運用する中で、災害時には決められた援護者が1対1で対応できるとは限らず、現在では4対4などのグループで援護関係を築くこととしている。この「助け合いネットワーク」を世田谷区全域に展開するため、区から桜丘一丁目町会をモデル地区にしたいとの要請があり、町会では諸課題を解決すべく検討を行っている。桜丘一丁目で始まったこの活動が世田谷区、日本全国に広がり、災害時に多くの要援護者が救助され、減災に結びつくことが望まれる。また、町会は、要援護者の登録増加とともに、町内に位置し、町会構成員でもある東京農業大学との連携を深め援護者の増強を図るなど、努力・工夫重ねており、今後の活動の発展に期待したい。

団体概要

  • ・世帯数:934世帯
  • ・住 民:1,855人
  • ・役 員:18名
    (平成18年4月現在)

実施期間

昭和38年4月~