【総務大臣賞】地域ぐるみの防災対策
なぎさニュータウンなぎさ防災会(東京都江戸川区)
事例の概要
■経緯
なぎさニュータウンでは、昭和55年8月に自主防災組織を結成して防災に取り組んできたが、1,339世帯の都市型共同住宅ということから、必ずしも順調な運営とは言えなかった。
そのような中で、平成7年1月、阪神・淡路大地震が発生したことから、阪神地域においてなぎさニュータウンと同条件である埋立地の高層共同住宅の被害状況を調査するとともに、資料収集や分析を行った。
また、平成8年9月には、東京直下地震の被害想定も公表され、「自分たちの街は自分たちで守ろう」という自主防災意織が一層高まり、同年12月「防災会」という防災リーダー組織を結成した。そして、この組織が中心となって、都市型マンションにおける危機管理のあり方、防災コミュニティのあり方、地震発生時のあり方等について検討し、様々な防災対策に取り組んでいる。
■内容
- 1.「防災会」の結成
平成8年12月、自主参加により「防災会」を結成し、防災からコミュニティづくりまで協議の上、企画、立案、実行している。 - 2.防災意識の高揚策
- (1) 組合ニュースによる啓発(隔月発行)
- (2) 防災フェア等の開催(毎年1月)
- (3) 防災ハンドブックの作成配付(平成11年9月)
- 3.防災コミュニティづくり
- (1) フロア会
各棟、各階ごとに90の「フロア会」を設け、防災を中心に定期的な打合せを実施。 - (2) 助け合い虹の会
高齢者の困りごとなどの助け合い活動で災害弱者対策を実施。 - (3) 集合訓練等の実施
休日、夜間実施する集合訓練、体力練成を行う早朝訓練、河川敷を清掃する清掃訓練などを実施。 - (4) 共同防災会議の開催
防災会主催で地域内の商店、医院、保育園等9団体で開催。
- (1) フロア会
- 4.防災行動力の向上策
- (1) 総合防災訓練の実施
- (2) 防災館における防災体験
- (3) 防災会員の実災害活動
- (4) 訓練用消火栓の設置
- 5.防災資機材の整備
- (1) 防災倉庫の設置(平成10年、1棟14.4平方メートル)
- (2) 救助、救急用品(照明用具2、バール10、担架5、リヤカー6、大型救急箱2、他)
- (3) 炊き出し用品(キッチンユニット2、大型ガスコンロ8、大鍋7、大皿1,500、他)
- (4) その他の用品(簡易トイレ100、フロア用非常袋90、避難シート1,339、他)
- 6.生活用水の確保対策
平成11年9月、飲料用受水槽(700トン)に非常用給水装置を取り付け、住民に対して50日以上の生活用水の供給が可能となった。なお、近隣町会にも開放する旨通知した。また、トイレ用水は、工水(450トン)及び眼下の江戸川河水を活用することとしている。
■特色
なぎさニュータウンは、典型的な都市型マンションで、しかも7棟1,339世帯という大型団地を形成していることから、防災意識の醸成や防災コミュニティづくりには難しさがあった。
このような中で、阪神・淡路大震災の教訓を真撃に受け止め、「防災会」という防災組織づくりを行った上で、自助、共助のあり方を徹底的に検討して、その方策を決定し、実践した。
加えて、管理組合を説得し、防災会の年度予算300万円という豊富な資金を得て、ハード、ソフト両面からの防災体制づくりに成功した。
なぎさニュータウンと旧江戸川
防災倉庫の外観
防災倉庫内の様子
給水用配管及び蛇口
消火器訓練
心肺蘇生法の訓練
炊き出し訓練
組合ニュース
防災ハンドブック(表紙)
防災ハンドブック(本文)
苦労・成功のポイント
■苦労した点
本格的な防災体制づくりが順調に進んでいった過程で、防災用住民名簿の提出はプライバシーを守りたいという住民の強い抵抗があった。しかし、防災会が住民に粘り強くその必要性を説得した結果、全住民の名簿を集めることができた。このことは、災害時の救助体制や避難確認が可能となり、防災コミュニティづくりにも飛躍的な成果に結びついた。
■成功のポイント
- 1.防災会員募集に際し、80名以上の応募があり、防災リーダーの組織作りが確立できたこと。
- 2.防災会長のリーダーシップに防災会員が積極的に協力したこと。
- 3.防災会事務局(女性3名)が事務処理から折衝まで、適切かつスピーディーに行ったこと。
- 4.防災を楽しみながら、かつ友好的に実行したことから、コミュニティの輪が広がったこと。
- 5.集合訓練、早朝訓練、清掃訓練など、防災会の組織力を各方面に活用したこと。
- 6.管理組合から「防災対策費」として300万円の年度予算を獲得したこと。
成果・展望
■成果
阪神・淡路大震災の教訓を生かして結成された「防災会」が、強力なリーダーシップのもと、「防災」から「お祭り」まで、都市型マンションの住民に「人の輪」をつくりあげたといっても過言ではない。
そして、防災の意識づけや高度な防災行動力に加え、各種防災資機材の整備も着々と進み、まさに災害に強い街へと変貌している。
■展望
高層集合住宅の複合集団という、最もコミュニティづくりが難しい中にあって、「防災」という取り組みをステップとして、地域の一体感を垣間見ることができる街である。
同時に、豊富な財源に裏打ちされた人と物の防災体制づくりが順調に進められていることから、防災機関としても適切なアドバイスをしていきたい。
実施期間
平成8年~
事業費
12,000,000円
団体の概要
なぎさニュータウン:世帯数1,339世帯、住民4,300名、防災会84名で構成