第05回防災まちづくり大賞(平成12年度)

【消防庁長官賞】事業所における防災対策の先進的取組み例

【消防庁長官賞】事業所における防災対策の先進的取組み例

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三菱地所株式会社(東京都千代田区)

事例の概要

 三菱地所では、大正12年(1923年)の関東大震災において、避難民に対し飲料水の提供、備蓄米による炊き出し、更には一般向け臨時診療所の開設等を行った。これを契機に、大正15年(1926年)以来毎年9月1日に防災訓練を実施している。
 同社は丸の内・有楽町・大手町を中心に所有する32のビルとそこに事務所を構える多数のテナントを抱えていることから、災害から人命と関係施設を防護し、人心の安定と秩序の維持を図ることを目的に、以下のとおりハード・ソフト両面にわたり、全社一丸となって災害対策に取り組んでいる。

  • 1.ハ-ド面
    • (1) ビルの耐震補強工事
       新耐震設計法による耐震基準に沿うよう、耐震補強の必要な所有ビルの工事を実施している。
    • (2) 非常用食糧・資機材の備蓄
       約20万食分の食糧及び相当数の救出用資機材を、所有するビルに分散備蓄している。(災害対策要綱で備蓄基準を定めている。)
    • (3) 防災用品の配備等
       社員の身体・生命の保護のため、全社員にヘルメットを配付するとともに、毛布・寝袋類・応急医療用品等も必要数を配備している。
       また、男子社員全員に、訓練及び有事の際の活動時に着用する非常服・安全靴等も配付している。
  • 2.ソフト面
    • (1) 災害対策要綱の策定
       災害対策マニュアルとして、昭和56年に予防計画・応急措置計画・復旧計画等からなる「災害対策要綱」を策定し、平常時及び有事の際に講ずべき各種対策と各部署の任務分担を定めている。
    • (2) 事業所の防災訓練の実施
       毎年9月1日には、関東大震災記念行事として、早朝より男子社員1,200名全員参加で災害対策要綱に定める部門別の対応訓練と非常用資機材作動習熟訓練を実施している。また、女子社員も参加の通報訓練・消火器使用訓練・応急救護訓練及び知識の高揚を図るための防災映画の上映・防災講演等も実施している。さらに、定期的に、東京消防庁の都民防災教育センターの防災研修に社員を派遣している。このように、社員への災害対策の周知徹底と防災意識の高揚を図り、併せて有事の際に迅速且つ的確な行動がとれることを目的に様々な活動を行っている。なお、東京本店のみではなく地方の支店においても防災訓練を実施している。
    • (3) テナントとの総合防災演習の実施
       各ビル毎に同社とテナントからなる共同防火管理協議会との間で自衛消防隊を結成しており、各々救命講習・消火器訓練等を実施している。9月1日には同社の訓練に合わせ、消防署の指導・警察署の協力のもと、毎年訓練対象のビルを替え、ビルのテナント参加で通報、初期消火、避難、救助等の総合訓練を実施している(本年はテナント700名参加)。
    • (4) 防災ボランティアヘの参加体制
       「東京都地域防災計画」に基づく防災ボランティアの1つである応急危険度判定(災害時に建築物の被災状況を調査し、その建築物の当面の使用の可否を判定する)に224名の社員が登録するとともに、消防の災害時支援ボランティアとして丸の内消防署・赤坂消防署に各々10名登録しており、社会貢献活動に参加できる体制をとっている。

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消火器訓練

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消火器訓練

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応急救護訓練

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応急救護訓練

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総合防災訓練

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総合防災訓練

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避難訓練

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避難訓練

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社員用パンフレット(表紙)

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社社員用パンフレット(本文)

成果・展望

 本事業所は、大正15年(1926年)から70年以上の永きにわたり、関東大震災記念行事として毎年9月1日に総合防災訓練を実施するとともに、各ビル毎に定期的に防災訓練を実施している。
 また、独自の災害対策要綱を策定し、非常組織体制の確立、非常用資機材の整備、約20万食に及ぶ食糧の備蓄等ハード・ソフト両面にわたる防災対策が充実しており、他の事業所の模範となるものである。
 本事業所を中心としてテナント企業が相互に協力して、丸の内・有楽町・大手町地域の地域ぐるみの防災力の向上に寄与しており、今後さらに安全な防災まちづくりを展開していきたい。

実施期間

 大正15年~

事業費

 650万円(平成12年)

訓練参加状況(過去3年間)

 平成10年度 延べ 3,300名
 平成11年度 延べ 3,050名
 平成12年度 延べ 2,750名