第05回防災まちづくり大賞(平成12年度)

【消防科学総合センター理事長賞】老人家庭への奉仕活動

【消防科学総合センター理事長賞】老人家庭への奉仕活動

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八戸消防設備協会(青森県八戸市)

事例の概要

■経緯

 当協会は、「消防設備士の養成と資質の向上を図り、消防用設備等の設置とその機能維持の完壁を期し、地域社会の福祉に寄与しよう。」との呼びかけに賛同した79の事業所によって昭和50年10月に設立された。
 職種により、①電気工事、②管工事、③消火器、④メーカー、⑤管理者の5つの部会で構成され、研修は、部会ごとに法令の解釈や技術基準などの専門的な知識と技術の習得を目指して行っている。
 活動が軌道にのった4年目の総会において、地域社会に貢献できる活動をしようという発議があった。討論した結果、「災害弱者である高齢者を火災から守ることが防災の一翼を担っている協会としての責務である」との認識に至り、一人暮らし老人家庭を主な対象として奉仕活動を行うこととなった。
 活動計画を企画するにあたり、地域社会が一体となった活動とするため、市町村役場やホームヘルパーにも参加の呼びかけを行った。また、活動が一過性のものとならないよう、各部会の特徴を生かした無理のない計画とし、昭和53年の第1回目の奉仕活動から本年まで継続して実施している。

■内容

 本活動は、消火器・家庭用火災感知器の取付け及び電気・ガス器具などの点検補修を行い、出火防止を図ることにより、高齢者を火災から守ろうとするものである。詳細については、以下のとおりである。

  • 1.対象世帯の選定
     各市町村の福祉事務所に依頼して選定する。
  • 2.役割分担
    • (1) 会員
       電気工事部会は、住宅用火災警報器の取付及び電気器具の点検・整備を行う。管工事部会は、ガス器具や給排水設備の点検・整備を行う。消火器部会は、消火器の提供と薬剤の詰め替え等点検を行う。メーカー部会と管理者部会は、住宅用火災警報器を提供する。
    • (2) 消防職員
       ストーブや煙突の取り付け方など火気使用設備についてアドバイスする。
    • (3) ホームヘルパー
       高齢者宅への案内と身の回りの世話をする。
  • 3.班編成と活動内容
     一つの班を会員、消防職員、ホームヘルパーで編成し、それぞれの分担にしたがって活動する。活動の際に特に留意していることは、出火危険の排除である。例えば、「タコ足配線をしている場合はコンセントを増やす」「ガス配管のゴムホースが劣化している場合は交換する」「ストーブの回りに燃えやすいものが置かれているときは、これを片付ける」など、その場でできるものはすぐ処理している。

■特色

  • 1.防災器具の提供から人員の派遣まで無償で行っている。
  • 2.電気やガスについての技術者が会員となっているため、点検・修理を安全確実に行える。
  • 3.ホームヘルパーが参加したことによって、訪問後の状況が把握できるようになった。
  • 4.消火器を取付けた家庭には、4・5年後に再度訪問して点検及び薬剤の詰め替え交換をしている。

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困りごとの相談にのるホームヘルパー

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老人家庭へ取付する器具

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消火器・家庭用火災感知器

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ストーブの取扱説明

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感知器の取付

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常備灯の取付

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消火器の説明

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ガスの点検

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コンセント使用上の注意

苦労・成功のポイント

■苦労した点

 高齢になると社会性が希薄になり、外部の人間との接触を嫌う傾向が強くなる。特に、一人暮らしの生活を続けている高齢者は顕著である。こういう家庭を見ず知らずの人間が訪問して寝室や台所に入るのを容認してくれるか、また防災についての話を聞いてくれるか懸念された。

■成功した点

 普段顔を合わせているホームヘルパーを要請したことにより、打ち解けてもらえた。また、若い会員が高齢者の実態を目の当たりにすることによって、奉仕活動の趣旨を具体的にとらえることができた。このことが22年間とぎれることなく継続できた理由である。

成果・展望

 訪問した先々では、高齢者から喜ばれ、感謝の声をかけられる。しかし、この活動のねらいとするところは、こうした奉仕活動にとどまらず、地域ぐるみの防災意識を醸成させることにある。地域のどこにどんな人が生活し、防災上どのようなリスクを背負っているか、このことを住民がよく知り、普段から注意を向けて声をかけ合う、こういった気配りが地域防災の原点であると考えている。
 幸い、この活動に参加してくれているヘルパーの方たちは、この考えに共鳴していただいている。定期的に高齢者宅を訪問する方々であるだけに心強い限りである。
 今後は奉仕活動に加えて、こうした地域防災の考えを地域の人達に訴えていきたい。

実施期間

 昭和53年~

事業費

 355,000円(老人家庭への奉仕活動事業費。会員事業所からの年会費収入による)

団体の概要

 八戸市・三戸郡10町村・上北郡2町の行政区域内で消防防災に関する業務を行っている146事業所で構成している。

表彰歴

 昭和63年 青森県知事消防功労賞
 平成 元 年 消防庁長官安全功労賞
 平成 3 年 八戸市善行者表彰