【消防科学総合センター理事長賞】IT(情報技術)を活用した情報収集伝達訓練
郡山市(福島県)
事例の概要
■経緯
本市では、昭和61年に「8.5水害」、平成10年に「平成10年8月末豪雨災害」という2度の大きな水害を経験した。そこで、防災行政無線の整備を始め、情報収集伝達体制に力を入れている。特に、迅速かつ的確で「わかりやすい」情報として、テジタルカメラ、パソコンを活用することで、「画像」による情報収集伝達体制を構築しているところである。
平成12年年8月に実施された、市総合防災訓練の中で、デジタルカメラ、携帯電話、パソコン、インターネット等の情報通信機器、ITを活用し、市役所(災害対策本部)と市及び消防本部の出先機関並びに避難所となる小学校などにおいて、ネットワーク型の情報収集伝達訓練を先駆的に実施したものである。
■内容
各種システムを活用し、災害対策本部で画像を中心とした情報を収集するとともに、インターネットのホームページにより情報を伝達した。
- 1.災害対策本部における情報収集
- (1) 行政センターから災害対策本部へ静止画像を伝送した。
- (2) 消防分署から消防本部通信指令課へ静止画像を伝送した。
- (3) 無線統制車(訓練現場)から消防無線を使用して消防本部通信指令課へ静止画像を伝送した。
- (4) 消防本部通信指令課から災害対策本部へ静止画像を伝送した。
※(1)~(4)については、パソコン同士をピア・ツー・ピア方式で接続し、静止画像を伝送した。 - (5) 訓練現場から、パソコン、携帯電話等を利用し、インターネットの電子メールを使用して静止画像を伝送した。
- (6) 消防防災ヘリコプターで撮影した静止画像を、無線統制車及び訓練現場に引き継ぎ、静止画像を伝送(無線統制車は消防本部へ、訓練現場は災害対策本部へ)した。
- (7) 建設省福島工事事務所と災害対策本部をテレビ会議システムで接続して会議を実施し、阿武隈川周辺の情報(ビデオカメラによる動画)を収集した。
- 2.市民への情報伝達
- (1) ふれあいファックス(一斉同報ファクシミリ:Fネット)により、小・中学校、保育所などの施設、町内会長、市議会議員など約1,500箇所に文字情報を伝達した。
- (2) 災害対策本部で収集した画像を市ホームページに掲載し、避難所や市民などが、ほぼリアルタイムで訓練の状況を把握した。
- 3.その他
防災行政無線(移動系・同報系)、アマチュア無線による情報収集伝達訓練を実施した。また、ホームページには、仮想の避難所情報も掲載した。避難所となる体育館には、「平成10年8月末豪雨災害」を教訓として、避難者の情報収集のためテレビアンテナ端子を設置しており、体育館にはテレビも設置した。
情報収集伝達訓練イメージ図
災害対策本部設置訓練
インターネットからの情報収集
ヘリコプターによる撮影(避難所)
救出救助訓練
緊急物資輸送訓練
応急処置訓練
避難者健康チェック
苦労・成功のポイント
成功のポイントは、市総合防災訓練の一環として、ホームページを管理する企画部情報管理課が中心となり、建設、農林、下水道部、教育委員会など防災関係各課の職員が、写真の撮影、画像の送信を実施するという、横断的な参加にあった。
また、防災訓練の中心会場であった桜小学校体育館において、小学校児童がホームページの閲覧等の操作を行った。これは、防災意識の高揚などの点から有効であった。
成果・展望
リアルタイムでわかりやすい「画像情報」を収集し、ホームページに掲載することにより、何処からでも情報を入手することができるいう「共有化」の点で成果があった。また、国、県、市、避難所の連携などにも役だった。
今後の情報技術革新により、さらに高度な情報収集伝達システムの構築も考えられ、技術を自分のものとできる職員の教育、育成が重要である。
実施期間
平成12年8月
事業費
0円