【消防庁長官賞】防災教育自作ビデオ教材「たけしくんの防災研究」の自主制作と活用
宝塚市視聴覚センター・自主研究会「視聴覚教育研究会」(兵庫県宝塚市)
事例の概要
平成9年夏休みの研究課題に宝塚市長尾台小学校5年生の健史君が、災害時の備えについて近くの住民107世帯を訪ねて調査した。それをもとに、ビデオ教材化していった。そのビデオ教材を平成10年6月に市内市立小中養護学校幼稚園に配布し、10月に解説書を配布した。
本ビデオ制作の目的は、児童自身が不条理な災害に備えようとする態度意欲をもって、自らその課題を発見し、解決方法を模索するところにある。また、地域性に注目しながら、地震ばかりでない自然災害を科学的に学ぶことも目的の一つとしている。
ビデオでは、まず、兵庫県宝塚市立長尾台小学校5年生の健史君が、家族と災害時の備えについて会話するところから始まる。そこで、近くの住民107世帯を訪ねて調査し、その結果を学級で発表する。途中、阪神・淡路大震災の市内の記録映像や、アンケート結果を字幕などで織り込みながら解説している。
さらに、学級全体の取り組みの広がり、新たな課題設定から市役所で災害対策の担当職員等の話を聞く等、グループ調査・発表へと発展していく様子を描いている。
ビデオ内容は以下の構成となっている。
- 第1章「動機づけ・・・家庭での大雨の会話から」
雨を見ながら、母と子が近所の土砂崩れについて話す。普段からの備えとして非常持ち出し袋を用意しているが、その空の中身を見て自分たちの心の緩みを知る。 - 第2章「宝塚市における阪神・淡路大震災の被災状況」
他府県の人々にとっては、宝塚市の被害はあまり知られていない。しかし、徒に恐ろしい映像場面を選ぶのではなく、数値的な被害事実を古くからの町並み「小浜の宿場町跡」や「川面の家並み」の消失、交通機関の遮断として象徴的な阪急電車の立ち往生の映像を見ながら、避難所となった市立体育館で避難生活をおくる人々の映像を用いて、阪神・淡路大震災から学んだ教訓としての家族や近所の人たちとの助け合いや協力の大切さをナレーションで振り返る。 - 第3章「地域の住民に対する意識調査実施」
主人公の5年生児童が住む坂道の多い山を切り開いた町、雲雀丘一丁目、二丁目、雲雀丘山手一丁目の107世帯をアンケート調査(内容:避難場所はどこか知っているか、非常用品は何を備えているか等)するため歩く。実際に調査協力を得た近くの住民とのアンケートの模様をドキュメント風に再現し、その体験的な調査と学習を示唆する。 - 第4章「調査内容と調査結果のまとめ」
フリップカード状で、アンケート調査の各質問文を表示し、その結果数値を表す。数値以外の回答のうち、常備品については非常食等の実物を実写している。 - 第5章「結果発表から学級全体の課題設定に高まる」
学級で発表することで、また、新たな疑問や級友たちの学習意欲が喚起され、市役所へ行って調査することに発展する。 - 第6章「市役所での調べ学習」
市民相談室で地区割りの避難所の場所を知り、下水道部水政課では山地災害の種類と自分の小学校校区の危険箇所を記載した地図を見せてもらう。 - 第7章「学級での発表授業風景」
調べた事柄から、また、次々に新たな疑問や課題が生まれていくことで、一つのテーマから様々な分野に広がっていく様子、学習に対する意欲が継続していく子供たちの表情を描く。 - 第8章「実践としての家庭での姿」
学校から家に帰った主人公が、母が買っておいた非常食を知らずに食べてしまう。そこで、母に優しくたしなめられ、自分の失敗にあきれて、恥ずかしそうに頭をかき、苦笑いする健史君と妹たちの姿。
学習結果が実際の生活に反映し、行動や態度となって向上を目指す様子。
オープニングタイトル
動機づけ(家庭での災害についての会話)の場面
宝塚市における阪神・淡路大震災の被災状況場面
地域住民に対する意識調査実施場面
調査内容と調査結果のまとめの場面
結果発表から学級全体の課題設定に高まる場面
市役所での調べ学習を行う場面
学級での授業風景、発表場面
実践としての家庭での会話場面
苦労・成功のポイント
- 1. 学校教員と児童・住民出演による自主制作の活動である。そのため、身近な学習教材となった。
- 2. 学校教育だけでなく、社会教育にも活用できる内容構成に努めた。
- 3. 活用に平易な「ビデオ教材」の形態をとっている。
- 4. 解説書添付により、学習会を前提に活用を図ることができる。
- 5. ビデオ教材視聴後の学習会が行えるよう、時間を15分以内におさめて活用しやすくした。
成果・展望
- 1. 市内学校幼稚園に配布し、授業での試写活用を促し、当該地域への防災高揚に寄与した。
- 2. 自治会などの団体への貸し出し、及び自治会有線放送での活用を促しており、当該地域への防災啓発に寄与した。
- 3. 今後は、住民主体の防災教育啓発の助けとなる教材開発を継続すること、及び、この教材の解説書の更なる検討と活用促進のための広報活動に努める。
事業年度
平成9年度
団体の概要
構成員:市内市立学校幼稚園教職員の構成による自主研究会
構成員数:7人
所 管:宝塚市教育総合センター教育研究課
受賞歴
平成10年度全国自作視聴覚教材コンクール入選
第17回兵庫県自作視聴覚教材コンクール最優秀賞「兵庫県知事賞」受賞