第03回防災まちづくり大賞(平成10年度)

【消防科学総合センター理事長賞】手作り防火寸劇等による地域防火啓発

【消防科学総合センター理事長賞】手作り防火寸劇等による地域防火啓発

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生地婦人防火ひまわりクラブ(富山県黒部市)

事例の概要

 毎月15日を「婦人防火の火」と名付けて、赤い広報車で火の用心を呼びかけながら、町を巡回するのが恒例の活動であった。この活動が5年ほど続けられた頃、「他にもっと地域に火の用心をアピールする効果的な方法はないか、消火器や消火栓の取扱いや救急救護の練習など、地道な訓練を続けているわが防火クラブの存在を地域住民に知ってもらい、多くの人にその輪の中の一員に加わって欲しい。」と考えるようになり、11月に町主催で開かれる公民館フェステバルの舞台の上からのアピールに取り組むこととした。しかし、舞台に上がってアピールすることが苦手な者がほとんどであった。そこで、まず「火の用心の歌」(当時、笹川氏のCMで歌われていたもの)に合わせて踊り、婦人防火クラブの存在を伝えることから始めることとした。練習に練習を重ねてもまだ不安というクラブ員を叱咤激励しながら、公民館フェステバル当日に何とか実施することができた。
 平成4年には、火災原因1位てんぷら油火災をテーマに寸劇風にしてみた。台詞など覚えられそうもなかったため、演じる人は口ぱく、台詞は別の人が舞台の袖のマイクの前で読み上げるという苦肉の策で、各自がイメージトレーニングし、1度合わせてぶっつけ本番で行った。ちぐはぐさとズレがかえって見る人には面白おかしく映ったらしく、方言たっぷりの台詞も親近感を与え、評判も上々で大いにアピールすることができたとともに、出演者も意を強くすることができた。
 平成5年には、ストーブ火災を「怖い洗濯物」と題して取り上げた。3年目ともなるとクラブ員からも色々なアイデアが飛び出し、シナリオもやりながら変更できるほどになった。
 平成6年には、「我が家みんなで火の用心」というテーマで行った。これまで主婦を対象にしてきたので、今度は家族全員の出火原因にスポットをあてた。慣れてきたこともあり、出演者も堂々と演じるようになり、笑いありの楽しい出し物となった。また、地域住民からも「来年は何のテーマ?」と楽しみにされるようになってきた。
 平成7年は、長年思い込んできたテーマを使い切ったため、実施しなかった。煙体験、消火器実演、手作りミニ消防車での子供との触れ合いなど、実際に体験してもらうことに終始した。
 平成8年は、119番のかけ方が下手だという消防署のアドバイスを受けて、「あなたならどうする?119番のかけ方」と題して実施した。シナリオを書く方も演じる方もマンネリ化して出来上がりはイマイチというのが感想であったが、会場の反応はまずまずであった。
 平成9年は、シナリオができず見送ろうかと思っていた矢先、クラブ員がクラブのテーマソングとしてつくった大阪すずめの替え歌「防火のすすめ」が県の防火クラブ連絡協議会の総会の会場で発表され好評だったため、それを実施した。
 平成10年は、地震をテーマに「あ 地震!その時あなたはどうする。地震から身を守る十か条」というテーマで行った。
 これらは、公民館のご好意で初回からビデオに取っておいてもらった。それを1本にまとめてダビングし、会員相互の親睦会などで鑑賞したり、貸し出しも行っている。

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寸劇「我が家みんなで 火の用心」風景

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寸劇「怖い洗濯物」風景

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寸劇「火の用心」風景

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県総合防災フェステバルにおける軽可搬ポンプ実演

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救急講習会

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県総合防災フェステバルにおける軽可搬ポンプ実演

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寸劇「119番のかけ方」風景

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寸劇「防火のすすめ」風景

成果・展望

 黒部市生地地区は、海岸線に長く伸び、風の強いところであることから、昔から火事が多かった。火事を減らすには住民の防火意識を高めるしかないとの市の判断と強い要請で、20年ほど前に防火クラブが結成された。婦人防火の日の広報車や公民館フェスティバルの宣伝が実り、当該地区から火事が減った。
 風の強い日、広報車で巡回すると「声が聞こえると慌てて火の回りを見回る」と言っていただけるまでに地域住民の意識も向上した。
 クラブ員の役員は、この20年間ほとんど結成当時のままで、会員の数は徐々に増え、1600世帯の町に160人もの人数が参加している。「我が家から火事を出すまい」と申し合わせ、一家に一人のクラブ員を目指して、地味だが確実な活動を行っている。
 現在、当該地区には一人暮らしの老人世帯が100余り存在するが、今後はそういった世帯に気を配る必要がある。そのために、隣人・隣近所に気を配り、隣からも火を出さない心配りを訴えていく予定である。

苦労・成功のポイント

 当初は、テーマを決めるとアイデアがあれこれ浮かび、かなり余裕があった。しかし、年を重ねるうちに段々とネタがつき、書いても書いてもつまらなく思えてきた。住民から「今年は何?楽しみにしてるよ」などと言われると、今度はプレッシャーが加わり、益々焦り、悩むようになってきた。
 ところが、平成10年においては、舞台が終わり興奮さめやらぬうちに、「来年何をテーマにする?」とクラブ員に投げかけ、自由討論の中でテーマの柱を決めてしまった。そうすることで、後はかなり楽になることがわかった。また、奇想天外な思いつきが意外なヒントを与えてくれた。
 わずか15分の素人芸であるが、事実ではない情報を提供するわけにはいかないため、骨が決まると肉を付けるために十分な情報を収集し、使えるものをピックアップしていくようにしている。また、単純でわかりやすい小道具をなるべくお金をかけずに自分たちで作っている。
 わが町から火事をなくしたい。そのためには、住民一人一人の防火意識を高めることが何より必要と大いに意気込み、この8年間、悪戦苦闘しながらシナリオを作り、苦手な寸劇に挑戦してきた。会場がやんやと笑うとそれだけで効果があったようにうれしくなり、来年もがんばろうと申し合わせる単純さが、この活動の原動力となっている。

事業年度

 昭和54年結成
 防火寸劇は平成3年~継続中

事業費

  • 収入:
    • 黒部市年間助成  12,000円
    • 町の消防分団寄付 20,000円
  • 支出:
    • 消耗品費  3,000~10,000円
    • ビデオテープは役員各自自費
    • 購入など

団体概要

会員160名(うち役員11名)

受賞歴

 平成10年度  消防庁長官賞
        安全功労表彰