第06回防災まちづくり大賞(平成13年度)

【消防科学総合センター理事長賞】市民の放送ボランティアによるラジオ及びテレビを通じた防災情報の発信の取組

【消防科学総合センター理事長賞】市民の放送ボランティアによるラジオ及びテレビを通じた防災情報の発信の取組

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ナパサクラブ(FM湘南ナパサ放送ボランティア)
SCNクラブ(湘南ケーブルネットワーク放送ボランティア)(神奈川県)

事例の概要

■経緯

 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を契機に、コミュニティ放送局FM湘南ナパサの市民放送ボランティア「ナパサクラブ」と湘南ケーブルネットワークの「SCNクラブ」は、大地震の危険性が警告されている地域にある放送局として、どのような形態でどのような情報が発信できるか検討した。
 ナパサクラブは、発足以来、FM湘南ナパサの放送に携わるスタッフとして「いざという時に役立つナパサ」を合言葉に、いつ地震が起こっても冷静沈着に放送できるように意識を高めている。具体的には、地震対策マニュアルを作成し、地震に対する基礎知識を身に付け、地震が起こった場合には迅速に放送できるように心がけている。なお、ナパサクラブ入会時には、このマニュアルをもとにした講習会を受講することを義務づけ、入会後も定期的に地震防災に関する勉強会を行っている。
 一方、SCNクラブは、被災後の混乱の中、ケーブルテレビでは放送をすぐに立ち上げることができない可能性が高いが、ラジオは比較的早い段階で放送を開始することができると考えていた。
 そこで、同じ地域に存在する放送局として、大きな地震が発生した場合、どのような放送が可能かをお互いに検討した。その結果、誕生したのがラジオとテレビの市民ボランティアによる共同製作番組「地震!!その時あなたは」である。

■内容及び特色

  • 1.「地震!!その時あなたは」の放送内容
     毎月、平塚を中心とした地域の防災関係者をゲストに迎えている。日常的なゲストの出演により、防災の一番の基礎である顔の見える関係を築くことを目標としている。いざという時にはこれらの関係者に出演をお願いする場面もあることから、その時のために日頃の連携を重視している。
  • 2.「地震!!その時あなたは」の放送形態
     毎月1回の生放送とラジオは4回の再放送、テレビは8回の再放送で防災について放送している。放送形態については、同じ番組をラジオでもテレビでも放送するため、トーク番組の構成を心がけている。また、大きな地震が起こった場合、ラジオの放送が始まった時点でSCNのカメラがラジオのスタジオに入り、ラジオ放送の様子を映し出す予定である。
  • 3.「地震!!その時あなたは」のスタッフ
     放送スタッフのほとんどが市民ボランティアである(局側の協力も得ている)。いざという時に両クラブの全クラブ員が放送に関わるスタッフとして、マイクやカメラの前に座ることができるように訓練を重ねる必要がある。そこで、本番組ではキャスターを毎回替えている。キャスターは両クラブの全クラブ員が経験することを前提としている。この方式は災害時の放送ボランティア養成にとって重要なものである。

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番組収録

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テレビカメラ

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スタジオ

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番組スタッフの打ち合わせ風景

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本番前のゲストとスタッフの打ち合わせ風景

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番組準備風景

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ゲスト及びテーマリスト

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地震対応マニュアル

苦労・成功のポイント

■苦労した点

 番組の開始当初はゲスト探しに苦労をした。また、クラブ員はボランティアなのでそれぞれ仕事を持っており、昼間の時間帯の生放送の出演が難しい。そんな中でも、この番組の重要性を理解し、仕事を休んで番組に出演するスタッフも多い。

■成功のポイント

 両クラブ員に地域の地震についての知識や危険性を訴えたことにより、クラブ員であることそのものが災害時の放送スタッフであるという認識が浸透した。それにより、クラブ員が番組の重要性を理解したため、番組に対して協力的になった。
 また、開始当初はゲスト探しに大変苦労したが、人の輪の広がりでゲストの輪も広がり、いざという時のネットワークが形成されつつある。

成果・展望

■成果

 5年以上の長い間、平常時からの情報発信により市民に正確な知識、情報を伝えることができた。その成果として、平成12年9月1日に「地震!!その時あなたは」の特別番組を行った。M7の地震を想定し、各種情報を収集して放送するという訓練やライフライン関係などの専門分野の方をゲストに迎えて話を聞くなどの放送を行った。

■展望

 今後、さらに両クラブの連携を深める予定である。クラブ員の中には、様々な年代、様々な職種の人たちがいる。この人の輪を中心に、「地震!!その時あなたは」という番組をきっかけにして、クラブ員や地域の防災関係者のネットワーク作りに貢献していきたい。

委員のコメント(鈴木委員)

 注目すべきは225名の会員のボランティアで支えられているということ。月~金の14時~16時30分の枠を自分達で取材、レポート、ミキシングまでこなす(経費も自分持ち)、10代から60代で構成されそれぞれの年代にあった番組作りをしている。その中の一つが「地震!その時あなたは」(30分)である。各分野の専門家をゲストに招き、これを人脈作りに繋げて応援団になってもらっている。特記すべきは番組中に最低20回は流れるというジングル。「現金、乾パン、飲料水。ズックに軍手にヘルメット。いつもの薬に懐中電灯、ラジオにナパサ」で非常時の対応を呼びかけている。
 阪神・淡路大震災を受けて発足したのが7年前。「平塚市民による、市民のための、市民の放送」を目指しているのがナパサクラブだ。
 代表の水嶋氏は「ラジオの使命は災害発生後の24時間であり、これは救命可能な『命の時間』でもあると。だからその必要性がある」と説く。市の消防本部とのホットライン、会員の正確な情報収集のための対応マニュアルも充実だ。
 今後はテレビと連動で、より一層のメディア連携を実現するという。

実施期間

 平成7年~

事業費

 年間18,000円(ゲスト粗品代)

団体概要

 ナパサクラブ:1994年設置、会員数225名
        (平成13年9月現在)
 SCNクラブ:1994年設置、会員数23名
         (平成13年9月現在)