消防庁長官賞(一般部門)
災害時の外国籍市民支援の包括的な取り組み
財団法人 仙台国際交流協会
(宮城県仙台市)
事例の概要
■経緯
(財)仙台国際交流協会は、地域の国際化推進を目的として平成2年に設立。国際姉妹・友好都市等との交流や在住外国人の日本語学習支援、市民の国際理解推進を主な事業としてきた。現在、宮城県沖地震の危険性が叫ばれるなか、外国人に対する防災支援が緊急かつ重要な業務となってきている。
災害発生時には、多くの外国籍市民が一般市民と同じ状況で被災し、避難所等での支援を受けることが想定される。そこで防災情報の発信や地域防災訓練への外国籍市民の参加、市民ボランティアの育成などを包括的に実施し、被災時の混乱を最小限にとどめ支援活動が円滑に行われる環境整備を行っている。
■内容
- 1. 外国籍市民への多言語防災情報の発信
- 【FMラジオでの多言語情報発信】
平成17年11月から、宮城県全域にFM放送を発信するエフエム仙台の防災啓発番組に企画参加している。番組は月一回で放送され、毎回外国籍市民がゲスト出演し母国語で防災アドバイスを行う。平成21年9月までに47名の外国籍市民が番組に出演している。 - 【多言語防災マニュアルDVDの作成】
外国籍市民が地震について知り備えるためのDVDを作成し、市内関係機関へ配布を行っている。DVDは11言語およびやさしい日本語で作成した。 - 【多言語地震対策ちらしの配布】
地震についての情報や、地震が起こったときの注意事項について多言語に翻訳し、配布。現在13言語を作成している。 - 【生活オリエンテーションでの情報発信】
毎年春秋2回、新しく仙台に暮らす外国籍市民対象の生活オリエンテーションを開催し、防災についての注意事項も伝えている。毎回100名近くが参加している。
- 【FMラジオでの多言語情報発信】
- 2. 外国籍市民の地域防災訓練への参加
平成16年10月より、外国籍市民が多く住む町内会主催の防災訓練(仙台市三条町)に、毎年外国籍市民を募り参加している。外国籍市民も一般住民に混じり訓練に参加、住民と顔の見える関係づくりを行っている。平成20年度には約40名が参加した。また仙台市の総合防災訓練にも例年参加している。 - 3. 災害時言語ボランティアの育成
平成12年6月より、仙台市からの指定管理事業として災害時に外国籍市民に対して通訳翻訳等により必要な情報を提供する市民ボランティアを育成している。平成21年10月現在、約50名の登録者がおり、その半数近くは日本語が堪能な外国籍市民で構成されている。
FMラジオでの多言語情報発信
FMラジオでの多言語情報発信
多言語防災マニュアルDVD
多言語地震対策ちらし
多国籍市民の町内会防災訓練への参加
非常食炊き出しの様子
災害時言語ボランティアの研修
災害時言語ボランティアの活動
(地震体験車試乗会)
苦労した点
- 1. 正しい地震の知識と基礎的な防災知識の普及
地震が発生しない国・地域出身の外国籍市民も多く、必要な知識を十分に普及させるためには、多様な情報発信のチャンネルを作る必要があった。 - 2. 防災訓練における町内会との連携
平成16年に初めて仙台市三条町の訓練に参加する際、町内会関係者との連携に苦労した。関係者に外国籍市民について理解を深めてもらう必要があった。 - 3. 災害時ボランティアのモチベーション維持
毎年研修会の実施や防災訓練への参加などで災害発生に備えているが、ボランティアの参加率を高めるプログラム作りに苦労している。 - 4. 災害発生時のボランティアの参加
災害時にはボランティア自身も被災する可能性が高く、どれだけの登録者が実際の支援活動に参加出来るかが課題となっている。
特徴
- 1. メディアとの連携による広範囲への情報発信(ラジオでの情報発信)
強い発信力を持つラジオ局と協働することにより、多くの外国籍市民に必要な情報と知識の普及が可能となった。またゲストの外国籍市民が仙台の暮らしについてトークし、災害時に要支援者となりうる外国籍市民の存在を、市民に身近に感じてもらうことが出来る。 - 2. 地域住民と外国籍市民のふれあい
災害時にはストレスの多い避難所で一般市民と外国籍市民が同じ空間で過ごすことになる。日頃から相互理解を深めておくことが重要である。一般の町内会の防災訓練に外国籍市民が参加することで、地域住民に外国籍市民の存在を認識してもらい、非常時に備えて平時から良好な関係を築く機会が作れている。 - 3. 外国籍市民支援におけるボランティアとの協働
市民ボランティアと協働することにより、より多くの外国籍被災者を支援することが可能となっている。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 澤井 安勇((財)日本防炎協会理事長))
設立20周年を迎える(財)仙台国際交流協会は、多文化との共生等をテーマに地域の国際化を推進しているが、極めて高い確率で宮城県沖地震の危険性が叫ばれる中で、市内居住の約1万人の外国籍市民に対する幅広い防災支援を極めて重要な業務として取り組んできた。特に、多言語防災情報の発信のメニューは豊富で、FM放送での月1回の防災啓発番組への参加、11ヶ国語の防災マニュアルDVDの作成、避難所等に配布されている9ヶ国語の表示シートの作成、13ヶ国語の地震対策チラシの作成、新外国籍市民を対象とした生活オリエンテーションの実施などとなっている。この他、在住外国籍市民だけでなく観光客の参加をも想定した地域防災訓練の実施、災害時に避難所等に派遣され情報提供に活躍する災害時言語ボランティアの育成などに加え、平成22年度にはこうした活動の中核となる災害時言語支援センターの設立が予定されている。
関係団体・機関・地域コミュニティとの連携関係を築きながら進められている仙台国際交流協会のこうした活動は、全国の国際交流団体の中でも、極めて体系的かつ情熱を持って推進されており、特に、若い留学生のパワーを活用している点が印象的である。仙台市の外国籍市民は、留学生が多いこと、特定地域に集住せず分散的である点などが特徴的だそうだが、協会が現在進められている各地域コミュニティとの連携をさらに深めて、外国人にも寛容な共生型地域コミュニティづくりのベスト・プラクティスに発展するよう強く期待したい。
団体概要
- 構成人員
- 職員33名
仙台市の国際化に寄与し、市民レベルの国際理解と国際友好親善を促進する事を目的に平成2年に仙台市により設立された。国際化の拠点施設である国際会議場「仙台国際センター」の管理、運営も行っている。
実施期間
平成12年6月~