消防科学総合センター理事長賞(防災情報部門)
練馬区の防災・減災情報を共有するHP「ねりま減災どっとこむ」の運営・発信
株式会社エムビーディー
(東京都練馬区)
事例の概要
■経緯
一般区民に対する防災広報・啓発手段は多種多様にあるが、特に若い世代に対してはインターネットを利用したホームページ(以下、HP。)が有効である。区の公式HPでの防災情報の提供については、防災・減災に関することを関係各課がそれぞれ独自に発信し、情報を得ようとする区民にとっては「分かりづらい」の一言である。また、各地域で活動している区民防災組織の方々が他組織と手軽に情報共有する手段がない状況であった。このような状況を解消しようと、それまで練馬区防災懇談会等の委員を務めていた秋山氏(HP主宰者)と相談し、区と協定を結ぶ形で平成18年4月から「ねりま減災どっとこむ」(http://www.nerima-gensai.com/)の運営がスタートした。
■内容
- 1. 防災トピック:区民に関係すると思われるあらゆる防災・減災トピックを掲載している。
- 2. 防災レポート:区内で行われた各種防災事業を防災レポートとして掲載している。
- 3. 掲示板:区民防災組織の会員同士で各組織の防災訓練の告知やマニュアルや資料の共有、情報提供を交互に呼びかけるために開設している。(区民防災組織の会員専用としパスワード管理)
- 4. 防災マップや浸水ハザードマップなど区の防災対策の紹介、学校に備蓄している各種資器材の使い方、炊出しメニューなどを写真つきで紹介。
「ねりま減災どっとこむ」トップページ
中学生の職業体験時の取材風景
防災訓練取材レポート風景
区防災課との訓練取材打合せ模様
ねりま減災どっとこむが作成している
区民用啓発チラシ(新型インフル編)
ねりま減災どっとこむが作成している
区民用啓発チラシ(寝室の安全化編)
ねりま減災どっとこむが作成している
区民用啓発チラシ(避難拠点紹介編)
ねりま区報(H190821号)防災特集ページでのインタビュー記事
苦労した点
- 1. 区防災HPとの住み分けを検討するにあたり、「ねりま減災どっとこむ」でどこまでの情報を網羅するのか検討を重ねた。
- 2. 区民への周知に関して、まずは区民防災組織に周知チラシを配布した。また、学校のPCルームを借りて、インターネット講習会を組織ごとに行った。
特徴
- 1. (株)エムビーディーはHPコンテンツ作成等を日ごろから業務として行っていることから、区民により分かりやすく見やすいHPとなっていること。
- 2. 区防災・減災に関するポータルサイト風(区の防災・減災情報が部局を問わず一度に見られる)。
- 3. HP運営者の秋山氏は練馬区在住であり、練馬区民の目線・視点で様々な世代を対象に運営。特に子育て世代に重点を。
- 4. 区HPだけでは拾えない情報も網羅(区の運営、区からの委託ではないので自由な発想で運営)。
- 5. 「減災」という言葉を使うことで、区民にとっても「減災」を身近に捉えてもらえる。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 重川 希志依(富士常葉大学大学院環境防災研究科教授))
「ねりま減災どっとこむ」は、とても見やすいホームページになっており、また、防災課を始めとして、建築課や地域福祉課など区役所の中の防災にかかわるいろいろな課からも協力を得て住民の立場に立って知りたい知識を得やすいものにしようという努力がなされている。
ホームページの主催者である秋山さんは、ホームページのコンテンツ作成を業務とされており、また、法律関係の編集のご経験もあって、個人情報の保護やプライバシーの保護などについての知識をお持ちであり、きめ細かい配慮がされている。
各地域には、減災やホームページのコンテンツの作成に関する知識を持った方々が少なからずいらっしゃる。ただ、そういった方々の中にはお住まいになっていたり、勤務されている地域の防災の活動にかかわる機会のない方も多いと思われる。
秋山さんの場合には、ご自分がお住まいの練馬区が公募した防災懇談会に応募され、練馬区が防災に熱心に取り組む自治体であること、いわゆる自主防災組織である区民防災組織が熱心に活動されていることを知るようになり、それを区民の皆さんにもっと知ってもらいたいと思われたことがこのホームページを立ち上げるきっかけとなっている。また、練馬区には、防災に関するポータルサイト(入り口となるサイト)がなかったこともこのホームページを立ち上げた背景となっている。
このホームページの特徴の一つは、区が直接運営したり、委託して運営されているものではなく、区と協定を結ぶ株式会社エムビーディーが運営しているということである。なお、この事業は、営利事業として行われているものではない。
このホームページは、現在、発展途上にある。練馬区内で多くの方々が取り組まれている防災への取り組みをもっと多く紹介し、地域連携をすすめていきたいという希望を秋山さんはお持ちである。それを実現していくためには、防災に取り組む方々がインターネットを今以上に利用できるような環境作りなども重要になってくる。
練馬区における取組が、より多くの地域に広がることは、防災への取り組みをさらに力強いものにするために重要なことであると思われる。
団体概要
- 構成人員
- 1人
(株)エムビーディーは、練馬区に本店を置く防災関係のコンテンツ作成会社。主には一目でわかるような減災・防災に関する各種コンテンツの編集・執筆とともに、防災マップ、ハザードマップのDTPデータ(ポスター、冊子、パンフレット等)の作成等をしている。また、最近では防災関係のコンサルタントも行っている。)
実施期間
平成18年4月~