天草広域連合中央消防署
有明分署(熊本県天草市)
事例の概要
■経緯
昭和49年、一人暮らし高齢者宅の防火意識向上を図ろうと、天草郡有明町(現在の天草市有明町)を管轄する中央消防署有明分署職員の発案で、火の用心の気持ちを込めた菊栽培を開始し、同年10月には、鉢に、「火の用心」と記入した「菊花鉢」が完成した。
秋の火災予防運動を前に、町関係者及び地元消防団が出席して有明分署で第一回目の菊花鉢の配布式が行われ、式典後には、一人暮らし高齢者宅を一軒一軒消防団員が火の用心を呼びかけながら菊花155鉢を配布した。
その後も、「菊花鉢」による防火啓蒙は毎年途絶えることなく、配布式には、平成3年に発足した赤崎保育所幼年消防クラブ員も参加するようになり、一人暮らし高齢者宅を直接訪問し、「元気で長生きしてください。火の用心をお願いします。」と呼びかけ、毎年約260鉢配布し、平成17年度で、「菊花鉢」栽培は32回となり、総配布数は5,602鉢を数えている。
天草市の高齢化率は、熊本県内でもトップクラスで有明分署管内の高齢化率も年々急激な増加傾向にある。有明町は現在、2,237世帯で、人口は6,446人であり、65歳以上の高齢者は2,178人で人口の約33.8%を占め、一人暮らし高齢者は396人となっている。
高齢化及び一人暮らし家庭が増加する中、火災、救急等の災害時に人命に危険が及ぶおそれの対応として、各職員が一人暮らし高齢者宅の防火査察等を実施して、防火意識の向上、各種災害時の対応の指導に努めているが、高齢者及び一人暮らしの方々自らが火災予防の意識を向上させる意識改革が必要と思われる。このような現状にあって、平成18年も職員全員が、余暇を利用し、火の用心の気持ちを込めて菊栽培を行い、高齢者及び一人暮らし家庭からの火災ゼロを目指し、「防火」につながる大輪の菊を咲かせようと日々奮闘している。
3月目(支柱立て)
老人に手渡し
6月目(配布前)
ジフィーポット
ポット改良
消防長から消防団へ
消防長から幼年クラブ員へ
団員の鉢積み込み
配布式(幼年防火ぬりえ)
苦労した点
- 1.菊花鉢は現在プラスチック製で軽量となっているが、当初は職員手作りのコンクリート製で重量も重かったため、台風等気象条件の悪化により「菊花鉢」の移動が困難であった。又、現在も移動が必要な場合、保管場所の確保等に苦慮することが多い。
- 2.職員の異動等により菊作りの知識が乏しく、従前の栽培管理記録や菊関連の図書を参考に栽培を続けているが、病気、害虫等による成育不良も多いうえ、気象状況に左右されるため栽培管理がむずかしい。
- 3.当初と比較して栽培数が多く、栽培管理に要する人員や時問的制約に苦慮している。
特徴
- 1.一人暮らし高齢者宅を訪問しての配布であり、直接防火や他の災害に対しての予防や注意を呼び掛けることが出来る。また、地元の消防団員が配布することで各地域における災害弱者の状況把握が確実なものとなり、各種災害に対し迅速な対応が図られる活動である。
- 2.赤崎保育所幼年消防クラブ員も配布に参加してもらっており、子供たちが訪問することで、一人暮らし高齢者の寂しさの解消に少しでも役立ち、災害がなく元気に過ごされることを目指した活動である。
団体概要
中央消防署有明分署は、昭和48年に発足した天草消防組合の分署として開署、平成13年に天草広域連合へ編入。
現在、10名の分署職員で、有明町(人口2,237人、6,4463世帯、面積約59.6k㎡)の「安心・安全」を担っている。
実施期間
昭和49年~