消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
安心・安全の地域づくり ~救マークの安心施設だけでなく施設周辺の安心地域~
郵便事業株式会社 博多南支店
(福岡県福岡市)
事例の概要
■経緯
職員の交通事故防止や安全意識の向上など安全教育ができないか、何か社会貢献ができないかと考えていたときに、消防署から救マークの話があり、地域のパトロールの取り組みを行うこととなった。
■内容
郵便事業株式会社博多南支店の郵便配達員全員(約170名)が普通救命講習を受講し、併せて配達車両全車(赤バイク70台)に応急手当を実施するための応急セットも配備されました。
これにより博多南支店の郵便配達員が、配達管内(春日市の全域、大野城市内の全域)で、業務中に救急事案に遭遇した場合、救急車到着までの間迅速な応急手当を行うことが可能となり、郵便配達員の人員数と機動力を活かし、市民の救命効果に大きく寄与できることが期待される。
今後は、郵便配達中に傷病者等を発見した場合には、必要に応じ救急要請する、又は携帯する救急セットを活用して必要な応急手当を行うなど、緊急事態に対応する取り組みを実施する。
これらの取り組みから、消防局では「郵政事業株式会社博多南支店」を救マーク表示事業所として認定し、博多消防署長から「救マーク」を受けた。
- <参考>救マークとは?
- 「救マーク」とは、多くの方が出入りする施設で利用者がケガや急病で倒れたときに、そこの従業員等が迅速な救急車の手配や適切な応急手当が実施でき、「安心して利用できる施設」であることを表示するもの。
樹木調査の様子
避難所の緑の防火力診断図
樹木調査の様子
避難所の緑の防火力診断図
樹木調査の様子
避難所の緑の防火力診断図
樹木調査の様子
避難所の緑の防火力診断図
苦労した点
集配業務職員全員(170名)が普通救命講習受講(3時間)をするにあたり職員の勤務形態が異なるため、日程や時間調整に苦労した。また、年賀状集配期間を前後したことにより期間がかかった。(受講回数6回)
携帯の応急救護セットの内容もコンパクトにまとめられるものを考えた。
特徴
事業所の業務管内に毎日70台の赤バイクがパトロールを兼ねて日中走り回る積極的な地域防災業務上職員が管内の地理を熟知しており、救急事案に遭遇した時、現場を的確に早く通報できる。
職員が全員救命講習を受講しており、迅速な応急手当を行うことが可能全配達車両に応急救護セット配備(感染防止の手袋、Qマスク、三角巾、絆創膏)配達車両が赤バイクのため認識しやすい。
郵便配達員全員170名が普通救命講習受講をすることで、事業所自体が安心安全施設になった。(救マーク表示事業所として認定)職員の救急や防災の意識が変わった。
今回の取り組み事例は、他の郵便事業所や他の配達事業所等への普及拡大のモデルとできる。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 中林 一樹(首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授))
福岡市消防局は、2003年に「救マーク」制度を創設した。これは、多数の方々が出入りする施設の従業員に対して普通救命講習を実施し、受講者が施設に常駐し、使用者が安心して利用できる施設に付与する制度である。博多南支店で2009年に異臭騒ぎがあった。近くの福岡市消防局博多消防署那珂南出張所が出動した。そのことがきっかけとなって「救マーク」の制度を知った博多南支店では、170名の集配人全員に応急手当講習を実施し、支店内のみならず、集配で街中を走り回っている全員が応急手当できる体制を目指した。支店内で、業務終了後に講習会を開催し、2009年10月~翌2月までに、年賀状配達の繁忙期を除いて6回の講習会で、全員が受講した。
2010年4月1日に「救急救命出発式」を行い、地域を走る70台の赤バイクは、手作りの「応急救護セット」を携帯し、地域の安全・安心づくりに大きく寄与している。今や、この地域ではみんなが赤バイクで応急救護をしてもらえることが知れ渡っていて、街角でバンドエイドを求められることもある。また局窓口で急病人が発生したときにも、慌てることなく、局員が連携して救急対応が迅速に成された。さらに、普通救命講習を通して「安全」の重要性を実感し、集配に出動するときに毎回「応急救護セット」を手にすることから、安全意識が高まり、集配時の交通事故も大いに減少している。この活動が、地域の安全・安心づくりに大きく貢献し続けるであろうことを、確信した。
団体概要
郵便事業株式会社 博多南支店
- 住所
- 福岡市博多区元町2丁目2-12
- 職員数
- 260名
- 集配業務員
- 150名
春日市の全域、大野城市内の全域の集配業務
実施期間
平成22年4月~