第06回防災まちづくり大賞(平成13年度)

【消防科学総合センター理事長賞】災害に強いまちづくり、人づくり

【消防科学総合センター理事長賞】災害に強いまちづくり、人づくり

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伴地区自主防災会連合会(広島県)

事例の概要

■経緯

 広島市安佐南区の伴地区では、3小学校区22の全町内会に自主防災会組織が結成され、それぞれが防災活動に取り組んで来た。しかし、平成7年9月に3小学校区を連合化してからは、伴地区自主防災会連合会として組織的な防災活動を活発に展開している。
 特に、平成11年6月29日に発生した豪雨災害(6・29豪雨災害)は、広島市において20名、安佐南区においても2名の犠牲者を数えるなど、莫大な人的・物的被害をもたらし、市政始まって以来の大災害となった。しかし、これを契機に地区住民の防災に対する「危機管理意識」は一気に高まった。
 伴地区においても甚大な被害が発生したものの、地域住民はこの災害から得た体験や教訓を将来に伝え、地域の防災対応能力を高める良い機会として捕らえた。それ以後、防災マップの作成、災害危険箇所の調査、地区内の災害弱者世帯の把握、生活避難場所運営マニュアルに基づく夜間宿泊訓練等、地区住民が一丸となって独自の防災活動を展開してきた。一方、防災関係機関とも綿密な連携を取り、総合防災訓練や防災フェアをはじめ、防災関係機関が行う各種防災行事には地区をあげて積極的に参加するなど、地域と行政とが一体となって「災害に強いまちづくり・人づくり」を行っている。

■内容

  • 1.自主防災会の連合化
     伴地区の3小学校区22自主防災会が一体となり、組織的、機能的な活動が行えるよう、平成7年9月に連合化した。それ以後、地区全体として情報を共有し、協力・連絡体制の強化を図っている。
  • 2.災害に対する危機管理意識の高揚
    • (1) 阪神・淡路大震災の教訓から「わが町地震マップ」の作成に取り組んだ。
    • (2) 6・29豪雨災害による地区内の被害箇所の調査を実施した。
    • (3) 住民による地区内の災害危険箇所の調査を実施した。
    • (4) (2)及び(3)の調査に関するデータをもとに、「地震マップ」を発展させ「防災マップ」を作成した(22自主防災会が、それぞれの地区において防災マップを作成)。
    • (5) 平成13年3月24日に発生した芸予地震では、全町内会が一丸となって被害調査及び災害弱者の被災調査に当たるなど、防災行政機関に対し多くの情報提供を行った。
  • 3.危機管理の実践
    • (1) 豪雨、土石流災害を想定した避難訓練の実施
    • (2) 避難経路の安全性の検証
    • (3) 長期避難生活を想定し、「生活避難場所運営マニュアル」に基づく夜間宿泊訓練の実施
    • (4) 防災資機材の把握、活用訓練の実施、今後の整備計画の作成
  • 4.災害弱者への配慮
     「健常者中心の防災であってはいけない」という住民全体の声をもとに、老人世帯や体の不自由な方の世帯を調査し、安全な避難経路を検証し、防災マップに反映させた。
  • 5.防災行動力の向上
     防災関係機関が行う防災フェアや総合防災訓練では、地区をあげて積極的に参加し、地区住民の危機管理意識の向上を図るとともに、各種訓練から住民一人一人の防災行動力の向上を図っている。

■特色

 伴地区は宅地のほとんどが山裾の斜面に開かれており、多くの新興住宅団地が造成される中、昔ながらの集落も点在している地域である。そのため、住宅の多くは地盤の弱い場所や急傾斜地に面していたり、土石流危険箇所に含まれている。
 6・29豪雨災害以前は、災害に対する漠然とした危機感はあったものの、組織的な防災活動に結びつく事はなかった。

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防災マップ

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土のう訓練

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訓練運営本部

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検討会

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避難状況

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炊き出し訓練

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避難場所運営マニュアル

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避難場所運営マニュアル

苦労・成功のポイント

 伴地区は面積的には極めて広く、新興の住宅団地に居住する人々や昔ながらの集落に居住する人々などがいる。また、農業的地域や商業的な色合いの濃い地域が混在しており、そこに住む人々の生活観や防災に対する危機管理意識には温度差があった。
 しかし、6・29豪雨災害を契機として、その被害の大きさを地区全体が深刻に受け止め、自主防災活動のあり方を住民同士が熱心に検討し、検討結果を積極的に実践していった。その結果、漠然と感じていた防災意識が一気に「災害に強いまちづくり・人づくり」へと発展していった。
 この成功の背景には、各自主防災会長の防災に対するひた向きな取り組みと卓越した指導力があげられる。

成果・展望

 6・29豪雨災害を身近に体験して、大きな犠牲を払いながらも、その経験をいかして住民が自ら実施した活動であり、住民の熱意と協力に裏打ちされたものであることが大きな成果といえる。
 この組織力や災害対応能力は、先の「芸予地震」の際に遺憾なく発揮された。発災後、各自主防災会長を中心に自主的に人的・物的被害の調査を行い、避難所を開設するなど、独自の自主防災活動を展開し、地区全体が高いレベルで「危機管理」を実践した。
 6・29豪雨災害以来行ってきた様々な取り組みは各方面から高く評価され、伴地区自主防災会長は広島市が主催する「防災について考える会」の市民代表として参加している。また、同防災担当部長は広島市において開催された「砂防シンポジウム」や中津川市において開催された「砂防講演会」に市民代表のパネリストとして参加して、防災に関する取り組みを発表するなど、伴地区における活動を広く紹介した。
 今後は、さらに防災関係機関との連携を深め、この取り組みが他の地区の模範となり、連鎖反応的に広がっていくことを期待したい。

委員のコメント(福嶋委員)

 伴地区は郊外に開発された新興住宅地であり、新・旧の住民が混在する地域である。自主防災連合会は平成7年の阪神・淡路大震災直後に発足したが、活動を一気に活発化させたのは平成11年6月26日に広島地域を襲った豪雨災害で、伴地区でも各所で土砂崩れが発生し、人命も失われた。この災害によって、災害は同時多発的に発生するものであり、自分たちの初期の対応が大切なことを身をもって知った。その後、住民と行政(特に地元の安佐南消防署)が協力して、きめ細かい「ハザードマップ」や実現性の高い災害時の対応、避難のためのマニュアル等を作成している。
 視察で強く感じたことは、防災対策のすべての対応策がきめ細かく具体的で、実際的に検討されていることである。これは過去の災害の経験が十分に生かされた結果であろう。加えて、調査活動を通して住民と行政との密接・良好な関係が構築されたことも活動の進展に大きく寄与していると判断される。また、生活経験の異なる住民を一つにまとめることには大きな困難があったと推察されるが、自主防災会首脳部の強いリーダーシップによって問題点が整理され、統制のとれたしっかりした組織になっている。現在は月に1回のペースで防災に対する何らかの研修が開催されており、リーダーの養成のための研修会や、昼間の災害に対応するために婦人を対象とした勉強会の開催など将来に向けた取り組みも計画されている。この伴地区自主防災連合会の活動はきわめて積極的で、実践的である。会の活動には示唆に富む多くの内容が含まれており、他の模範となるものと判断される。

実施期間

 平成7年~

事業費

 マップ作成費用・訓練経費等 10万円

団体の概要

 伴地区自主防災連合会:3小学校区、22自主防災会