【消防庁長官賞】家庭防火・防災・救急は主婦の手で!
昭和区ホーム・ファイヤー・モニターズ・クラブ連合会(愛知県名古屋市)
事例の概要
■経緯
昭和区では、昭和47年から全ての学区において主婦を対象に、消防に関するアンケート調査を行うモニター制度が発足した。また、区内の白金学区において、モニター制度をさらに発展させ、家庭における防火・救急思想を普及させる自主的なグループ活動が行われていた。
白金学区の活動を知った当時の昭和区区政協力委員協議会長は、主婦は家庭における影響力が大きく、地域に防火・防災を浸透させるには非常によいとのことで、昭和区内11学区全体に同様の制度を展開することを提唱した。これを機に、昭和61年「家庭防火・家庭救急は主婦の手で!」をキャッチフレーズに、防火・防災及び救急に携わるハウスキーパーを育てることを目的に、ホーム・ファイヤー・モニターズクラブを結成した。
組織は11学区それぞれに学区ホーム・ファイヤー・モニターズ・クラブを、さらにその連合会として昭和区ホーム・ファイヤー・モニターズ・クラブ連合会を設けることとし、昭和62年に会員数250名程度で誕生した。
昭和47年のモニター制度発足から30年を経た現在(平成14年)は、493名の構成員から成り立っている。これは区内の女性100人に1人がクラブ員として活動していることになる。
■内容
- 1.モニターとしての講習
講習は、基礎的な知識を学ぶ基礎研修と地域の防災コミュニティ作りを行うための実践期間の二つの課程がある。このうち基礎研修は、各学区より選出された4名、昭和区全体で44名が参加し、①防災(地震・風水害に対する基礎知識・昭和区の現状及び対策)、②防火(家庭における各種火災危険及び対処方法)、③救急(人口呼吸・心臓マッサージ・止血法など家庭における応急処置方法)の研修を1年間かけて受講する。 - 2.家庭防火・家庭救急の啓発活動
学区ホーム・ファイヤー・モニターズ・クラブは、自主的な活動に消防職員を招くなどして初期消火や心肺そ生法等知識・技術の向上に努めている。- (1) 家庭防火
平成13年度より防災安心まちづくり委員会のメンバーとして、地域における初期消火訓練等時には、指導及び補助者として初期消火のPR活動に努めている。また、放火防止モデル学区を対象に放火防止活動等に参加するなどしている。 - (2) 家庭救急
自分の家族の命は自分で守ることを目標に、毎年救急指導員を講師に招き、心肺蘇生技術の向上に努めている。 - (3) 各種講習会・施設見学
消防職員を講師に招き、ロープの結び方、家庭内の火災危険等の講習を行うとともに、防災関連施設等の見学を行っている。 - (4) モニターズ・クラブの年間計画
毎年昭和区ホーム・ファイヤー・モニターズ・クラブ連合会の会議において、年間計画を話し合い、それを基に各学区において活動計画を作成している。 - (5) モニター誌の発行
毎年3回モニター誌を発行し、クラブ員の防火・防災知識の向上を図っている。 - (6) 各種消防行事への参加
防火・防災等の活動を行う上で、消防署、消防団との連携は不可欠である。このため、消防署長が行う「一日消防署長」、消防団が行う消防団連合観閲式等各種行事に参加している。
- (1) 家庭防火
ファーストセミナーの講習
平成14年度モニター
ファーストセミナーでの消火器取扱訓練
情報誌
連合観閲式での搬送訓練
連合観閲式での応急手当て
放火防止パトロール
救急講習
救急講習
苦労した点
毎年学区から4名新たなモニターを人選する際に、年間4回も消防署へ行き講習を受けるため、了解を得ることは時代とともに困難になってきている。また、モニター493名を統率する上で、色々な意見が出され頭を悩ますこともある。しかし、4回の講習を終える頃には、ボランテイア意識等色々な意識が目覚め、各種行事に自発的に参加してもらえるようになる。
特徴
昭和47年から現在(平成14年)に至る30年間、主婦のみを構成員とする団体が、自主的に防火・救急・防災活動に取り組んできた。今後も家庭のみならず防災安心まちづくり運動の推進役の一組織として地域に貢献し、各種災害予防に積極的に活動していく予定である。
委員のコメント (防災まちづくり大賞選定委員 浦野正樹(早稲田大学文学部教授))
大都市内の人口流動性が激しい地域ではどこでも、防災活動の核づくりと担い手層の若返りやリクルートに苦労している。名古屋市の昭和区ホーム・ファイヤー・モニターズ・クラブは、そうした状況に一石を投じようとする試みである。
名古屋市では、学区単位で防災安心まちづくり運動を推進する組織として、地域住民組織の代表や地域各種団体の代表を結集した学区防災安心まちづくり委員会を結成しているが、その核の一翼を担うのが、昭和区の場合、ホーム・ファイヤー・モニターズ・クラブの会員である。主婦を対象にして消防署が実施する防火・防災・救急の3つの講習(各講習約3時間)をファースト・セミナーと称して1年間かけて受講する。これがモニターズ・クラブの会員になる通過儀礼であり、その後、昭和区の11の学区ごとの単位クラブに所属した活動がはじまる。最初は何もわからず義理で引き受けたファースト・セミナーの若いモニターたちが、こうした活動の中でいつの間にか「自分の家から火を出しては」という意識をもち地域防災活動の核に育っていく。
常に新しいメンバーを勧誘し育てるきっかけとしてモニター制度をみれば、その30年間にわたるモニター制度の歴史、15年間のモニターズ・クラブの活動実績は、大きな財産になりつつある。一人暮らし高齢者への愛の一声運動や小学校の「ふれあい」授業への参加など、それぞれの学区で工夫を凝らして活動する姿は、その果実であるといえよう。こうしたしくみは、都市部で担い手層の手薄さや高齢化に悩む地域では、大いに参考になろう。
団体概要
昭和区世帯数:41127世帯(平成14年5月1日現在)
昭和区内の学区:11学区
(各学区にホーム・ファイヤー・モニターズ・クラブを設置、区連合会を結成。)
ホーム・ファイヤー・モニターズ・クラブ会員数:493名(平成14年4月現在)
実施期間
(婦人消防クラブ)昭和47年~
(モニター)昭和62年~