【消防庁長官賞】世界文化遺産「清水寺」を守る警備団の実践
清水寺警備団(京都府京都市)
事例の概要
■経緯
世界文化遺産である清水寺は年間400万人を超える参拝者があり、日本を代表する寺院である。その貴重な文化財等を維持管理し、火災等の災害から守ることを主な目的として、昭和18年頃から寺関係者が自主的な巡回警備等を実施していた。その後、昭和23年から門前町の有志の人々が集まり、巡回警備等に加わり、清水寺警備団が結成され、現在に至っている。
■内容
- 1.警備団の結成
昭和23年1月、正式に清水寺警備団が寺関係者と地元の清水一丁目、清水二丁目の有志により結成された。 - 2.主な活動
通常は清水寺とその周辺地域で毎日2名1組で行う夜間巡回警備を行っている。この他、夜問特別拝観や御開帳など各種祭礼時等には特別警備を行い、年末には徹夜警備を実施している。なお、東山自衛消防連絡協議会にも所属し、毎年の訓練大会では優秀な成績をおさめている。また、東山消防署とは年2回の文化財防火運動の期間中に消防訓練を合同で実施し、防火防災の協力体制を強固にしている。 - 3.京都市が推進している文化財市民レスキュー体制の先駆け
京都市には、全国の国宝建造物の約20パーセント、重要文化財建造物の約14パーセントがある。その大切な国民の財産を火災等から守ることを目的として、文化財市民レスキュー体制の構築と育成指導を平成12年度から鋭意推進しているところである。しかし、当団体は昭和23年から先駆的な活動を展開しており、この地道でかつ継続した活動が、現在の文化財市民レスキュー体制の構築につながったものである。なお、清水寺を世界文化遺産として後世に残すためには、自助、共助及び公助が一体となって進められることが前提であり、そのモデルケースがこの歴史ある清水寺警備団である。
放水訓練とドレンジャー
消防訓練(搬送)
消防訓練
消防訓練(放水)
自衛消防隊訓練大会
自衛消防隊訓練大会
消防訓練(放水)
夜間巡回警備
夜間巡回警備
苦労した点
当団体の設立の原動力は清水寺の文化財を自分たちの手で災害等から守ろうという純粋な気持ちである。寺関係者と地域住民(門前町)が一体となり、手弁当でのボランティア団体として活動を実践してきた。しかし、設立当初は行政の指導や援助もなく、各種の災害に備えた訓練や警備の要領を独自で模索しながら団体運営を継続していくことは困難を要した。
特徴
- 1.創団は昭和23年1月であり、自治体消防(京都市消防局)の発足より早く団体を設立し、現在の自主防災会や当市が推進している文化財市民レスキュー体制の先駆けとなっている。
- 2.行政との連携を図りつつ、真のボランティア活動(市民の草の根運動)として、50年以上の長年にわたり団体を運営している。
- 3.門前町の住民が中心となっている関係から、災害時における即応体制は万全である。
- 4.清水寺でも近年各種災害が発生しているが、平成11年6月には集中豪雨により清水寺境内東側斜面が崩壊し、その土砂が茶屋を直撃し、茶屋が倒壊して室内に居た店員2名が閉じ込められた。しかし、非常放送によりいち早く駆け付けた警備団が救出活動及び二次災害防止活動を展開し、その後到着した公設消防隊に的確な情報提供を行い、被害を最小限に押さえた。
委員のコメント (防災まちづくり大賞選委員 室崎益輝(神戸大学都市安全センター教授))
貴重な文化財を火災から守ることは、歴史的な遺産を受け継ぎ豊かな文化を育むうえで、欠かすことのできない大切な事業である。
この事業に、戦前から自主的に取り組んできているのが清水寺警備団である。清水寺警備団の活動が高く評価されるのは、50年以上の長きにわたり持続的に活動を継続していること、1日も欠かさず夜間巡回などの活動を持続していること、そして何よりも、寺と門前町が一体となった地域連携の先進的な活動を展開していることである。
その活動の成果は、清水寺への放火火災を小火で鎮圧したことなど枚挙に暇がない。近隣の災害にも出動し人命救助に貢献した実績もある。その消火や救命における技術力の高さは、とりわけ毎年2回開催される総合防災訓練の見事さに端的にみることができ、防災のマインドとスキルとを兼ね備えた「文化財市民レスキューの先駆者」に、心より賛辞を送りたい。
団体概要
事務所:清水寺
団長:清水寺執事長
団員:寺職員及び地域住民(60名)
組織:機械班、ホース・ドレンジャー班(24名、平均年齢35歳)、救出班、門前警備誘導班、新道警備誘導班、産寧坂警備誘導班、庶務班
実施期間
昭和23年~