第08回防災まちづくり大賞(平成15年度)

【消防庁長官賞】津田小アドバイバル(アドベンチャー&サバイバル)2002・2003

【消防庁長官賞】津田小アドバイバル(アドベンチャー&サバイバル)2002・2003

Vol8-014-017Map

橋市立津田小学校 (愛知県豊橋市)

事例の概要

■経緯

 豊橋市周辺は、東海地震、東南海地震などの大地震がいつ起きてもおかしくない地域である。とりわけ豊川河口付近に位置する本校区は、こうした大地震発生時への対応の仕方について、地域をあげて現実的かつ緊急な問題として具体的に検討しておく必要がある。しかし、この地域は、地震防災強化指定地域に組み入れられたにもかかわらず、迫りくる大地震に対する防災意識の高揚は、なかなか進んでいないのが現状である。
 昨今、学校・家庭・地域が一体となって子どもを育てることの重要性が叫ばれている。大地震が発生したときの対応訓練を地域と学校が一緒になって取り組めば、地震発生時の対応もスムーズに行えるようになるばかりでなく、地域・家庭と学校が一体となって子どもを育てようとする意識をさらに高めることもできるであろう。本校では、総合的学習の大テーマを「生きる」とし、3年生は「地域の人と仲よくなろう」、4年生は「豊川と私たちの使う水」、5年生では「私たちの考えた安全な家・街」、6年生では「地震・防災」を学年テーマにして防災学習を進めている。子どもの防災学習が家庭を変え、各家庭の意識改革が地域に広がっていけば、地域防災を進める原動力となって、地域の防災対策も進んでいくものと考えた。
 本校では、数年前から夏季休業中にPTAの協力を得ながら子供の冒険心を満たす活動として「学校お泊まり会」を実施してきた。さらに、平成14年度には、特色ある学校づくりの一環として予算を取り、これまでの「学校お泊まり会」と、地域住民と学校が一緒になって行う防災対応訓練とを組み合わせた体験活動『津田小アドバイバル』として、新たに計画・実施した。
 平成15年度は、この活動の2年目で、防災体験活動により重点をおき、平成14年度の防災体験活動に加えて、防災無線の使用訓練やDIG活動も取り入れた。

■内容

  • 1.計画立案と事前準備
    • (1)児童の総合的学習の時間等における防災学習と学級新聞等による校内・地域への情報発信
    • (2)アドバイバル実行委員会での計画案検討
      ① 昨年度よりもっと防災に重点をおいた取り組みにしよう。
      ② 少ない職員でできる内容に精選しよう。
      ③ 職員でできないところは、地元消防団や防災対策課の協力を得よう。
      (例)
      ・ 防災体験の充実と図上シミュレーション(DIG活動)の導入
      ・ 地域と対策本部との連携 → 防災無線による対策本部との交信
      ・ 総合学習の中間発表
    • (3)関係諸団体・諸機関との打合せ
       地域総代会代表・PTA役員・地元消防団・豊橋市防災対策課・豊橋市中消防署・豊橋警察署等
  • 2.具体的な実施内容
     親子・地域住民が一緒になって活動し、防災意識の高い町づくりをすすめている。
    • (1)アドバイバル1(9:40~13:30)
      ① 避難訓練「警戒宣言発令」「大地震発生」:児童は運動場へ避難開始(小学生は出校日として登校)
      ② 地域住民、学校へ避難
      ③ 児童引き渡し訓練
      ④ 防災無線による対策本部との交信
      ⑤ 町別での炊き出し訓練
      ⑥ 体験活動
       起震車「グラット号」による地震体験、煙体験、カンテラづくり、心肺蘇生法、添え木の仕方、担架づくり、水消火器による消火体験、ペットボトルのろ過器づくり、防災ずきんづくり、簡易トイレづくり
      ⑦ 全校防災クイズ(総合的学習で学んだ内容を中心とした出題)
    • (2)アドバイバル2(18:50~翌朝)
      ① 防災体験談を聞こう:阪神・淡路大震災の時の救援活動に取り組んだ豊橋市中消防署長の体験談
      ② DIG活動:総合学習での成果を生かし、地震防災について校区地図を見ながらクイズ形式で行う。
      ③ ダンボールハウスづくりと宿泊体験

vol8-014-017-p1

炊き出し訓練

vol8-014-017-p2

地震体験

vol8-014-017-p3

煙体験

vol8-014-017-p4

消火体験

vol8-014-017-p5

ダンボールハウスづくり

vol8-014-017-p6

児童引き渡し訓練

vol8-014-017-p7

非常食の試食

vol8-014-017-p8

着衣水泳

vol8-014-017-p9

ボート体験

vol8-014-017-p10

総合学習の発表

苦労した点

  • 1.学校単独の活動ではなく、校区及び地域住民と一体化した活動にしていくことに大変な苦労があった。  地域の自主防災組織の確認、防災体験活動への参加者募集及び案内、炊き出し訓練への参加依頼等。
  • 2.保護者が児童を引き取る際の「災害時児童引き取りカード」は既に用意できていたが、実際に引き取り訓練で保護者に来校してもらうことについては、かなりの問題がある。今後、解決しなければならない。今回の訓練は日曜日に実施したため、実際に引き取りされなかった児童は、242名中5名であったが、平日の訓練となればかなり多くの児童が引き取られない状態になり、対応も違ったものになるであろう。
  • 3.校区の各町内会、総代会への協力依頼、参加者の掌握、保険会社への手配、炊き出し訓練のための物品の手配等外部団体との折衝や対外的な部分で苦労した。
  • 4.豊橋市消防本部防災対策課や地元消防団との連絡調整にかなりの時間を費やした。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 室崎益輝(神戸大学都市安全研究センター教授))

 「アドバイバル」と呼ばれる、子供たちに夢を与えつつ生きのびるための力をつける、新しいタイプの防災訓練は、児童引渡しやカンテラづくりなど応急対応力の獲得はかる昼の部と図上防災シミュレーションやダンボールハウスづくりなど防災連携力の醸成をはかる合宿形式の夜の部にわけて、実施されている。
 この訓練の素晴らしさは、なによりも児童たちが生き生きと活動し、そのなかで防災に欠かせない知恵、技能、そして人間関係を獲得していることである。その成果は、児童が発行する防災をテーマにした学級新聞の内容にも反映されており、その大人顔負けの知識レベルの高さに驚かされる。
 それに加えて高く評価されるのは、地域や家庭と連携するという視点が、この訓練には貫かれており、父兄はもとより自主防災会、老人会など、学校の児童数をはるかに上回る地域の人々が参加している。子供の学習が家庭を変え、家庭が変わることで地域が強くなるという、新しい防災関係づくりに成功していることを、評価したい。

団体概要

 豊橋市津田校区  人 口:3890人  世帯数:1137世帯  豊橋市立津田小学校全校児童数:242人  (平成15年5月1日現在)

実施期間

 平成14年~