第16回防災まちづくり大賞(平成23年度)

【消防科学総合センター理事長賞】わが地区からは一人の犠牲者も出さない!

消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
わが地区からは一人の犠牲者も出さない!

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松阪市朝見まちづくり協議会
(三重県松阪市)

事例の概要

 朝見地区は松阪市東部、櫛田川左岸に広がる田園地帯にあり、10 町から構成されている。 朝見まちづくり協議会は、防災・防犯・福祉・青少年育成・地域環境などの活動を展開しながら、安心安全のまちづくりに取り組んでいる。

■活動

 「わが地区からは一人の犠牲者も出さない」との信念で、災害に対し即戦力のある防災に取り組んでいる。特徴的な取組としては、災害時などの緊急時に資機材や重機などにより救出作業に協力可能な地元事業所を募集し、「災害時協力企業」として災害時協定を締結しており、現在、26の事業所と委任契約を交わしている。これらの事業所については、会報や防災講演会などで紹介するとともに防災訓練にも参加をしてもらうことで、住民との連携も深めている。
 また、地区内にある介護施設と協働し要援護者支援の合同訓練の実施や、小学校・幼稚園の全面協力を得ての、全児童が参加した訓練の実施など、若い世代も巻き込んでの地域が一体となった防災活動が行われている。

  • 1. 東海地震等が予測される中、地区からは一人の犠牲者も出さないとの信念で、即戦力のある防災訓練に取り組んでいる。
  • 2. 迅速な救出活動ができるよう、地元事業所の機動力が発揮できる「災害時協力企業」と地域の一員、隣近所として災害時協定を締結している。
  • 3. 地域に即した「朝見地区自主防災行動マニュアル」を策定し、訓練を実践している。
  • 4. 自ら立ち上がり救出活動等行える地域力を養い、即戦力のある防災訓練として、倒壊家屋からの救出訓練、安否確認、要援護者支援など、リアルな訓練を実施している。
  • 5. 来るべき大震災に備えるためには若い世代と一体となった取り組みが大事であり、第1回より「ふれあい」と銘打って、子供たちと地区挙げての訓練を行っている。平成22年には小学校・幼稚園と全面協力を得て、全生徒と防災訓練を行っている。
  • 6. 被災地を知る講師による講演会、現地の防災センター視察など、実地、体験、知識を得るよう防災の3本柱として取り組でいる。
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倒壊家屋からの救出訓練

要援護者移動訓練

苦労した点

  • 1. 自分は大丈夫、自分たちの地域は大丈夫という「安全神話」をなくすこと。
  • 2. いかに実戦に即した訓練をおこなう事が出来るか。
  • 3. 地域あげての参加する訓練になるよう推進すること。
  • 4. 飽きない訓練への取り組み。

特徴

  • 1.「安否確認カード」を使って防災訓練に全戸参加を図った。
     住民の「安否確認」が重要であり、訓練に取り入れ、第6回の訓練では100%安否を確認することが出来た。また、全員参加の機運を作るため、欠席世帯に対し、当日に欠席届と安否確認を兼ねて提出してもらうようにした。実践的な安否確認の段階ではないが、自らが参加するワンステップとして行った。
  • 2. 地域の一員、隣近所として災害時協力企業との委任契約の締結をする。
     災害時などの緊急時に資機材や重機などによる迅速な救出活動に協力可能な地元事業所をお願いして、「災害時協力企業」として災害時協定を締結しており、現在、26の事業所と委任契約を交わしている。これらの事業所については、会報や防災講演会などで紹介するとともに防災訓練にも参加をしてもらうことで、住民との連携も深めている。
  • 3. 実戦的な取組が防災意識の宣揚となりコミュニティ構築に大きく貢献をしている。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 室﨑 益輝(関西学院大学総合政策学部教授))

 朝見まちづくり協議会は、松阪市の郊外の田園地帯にあって、防災・防犯・福祉・青少年育成・環境改善などの活動を持続的かつ総合的に展開しながら、その活動の蓄積をベースにして安心安全まちづくりにも積極的に取り組んでいる。多様な日常活動の蓄積とその中で育まれる地域の連帯感や信頼感が支えになって、極めてレベルの高い地域の防災活動が繰り拡げられている。
 ここでの活動で評価されるのは、高度な地域の防災力が訓練を通して醸成されているということである。いざという時に役に立たなければ意味がないという信念が「わが地区からは一人の犠牲者も出さない」というスローガンに凝縮されているが、それが訓練や学習で実効性を追求する姿勢につながり、即戦力を生みだす創造的な訓練につながっている。
 災害対応で求められる力を生みだすための、ありとあらゆる訓練が企画され実践されている。倒壊家屋からの救出訓練、地域ぐるみの安否確認訓練、要援護者の介護搬送訓練、避難所の居住区域割り訓練など、そのどれもが実践の場に即してリアルに組み立てられており、その企画力の素晴らしさに驚かされる。
 この実効的で即戦力のある防災力を獲得するという思いは、第1に地域の中の全ての人の力を集める努力、第2に地域の中の多様な力を活用する努力につながっている。前者の地域ぐるみということでは、「安否確認カード」の提出ということも含めると、地区の中の全世帯が訓練に参加するという状況をつくりだしている。それに加えて高く評価できることは、小学生と幼稚園児の全員が地域の人たちと一緒に訓練に参加していることである。後者の多様な力ということでは、地域の中にある企業や事業所と「災害時協力事業」としての協定を結んで、その力を最大限引き出していることである。現在、27の企業と協定を結んでいる。瓦礫の中の救出訓練を見ても、倒壊家屋を模した瓦礫を用意するのも企業、その瓦礫の撤去をはかる重機を持ってくるのも企業である。
 地域の中にある組織、あらゆる世代が一体となって、創造的で実践的な訓練を持続的展開していることを、高く評価したい。

団体概要

構成人員
朝見地区の住民全員。団体は、住民協議会を中心に自治会、老人会、PTA、事業所等、地区内の企業・団体全て。

「自らが立ち向かうまちづくり」を理念とし身近な課題解決に向けて、地域が一体となって取り組む組織。安心安全な地域づくりため、自分たちのまわりでどのような課題があるかを地域住民の視点で検討し、地域が一体となって課題解決に向けて取り組む。地区は、全戸数580世帯からなっており、田園地帯に10町の集落が点在。

実施期間

 平成17年10月