第16回防災まちづくり大賞(平成23年度)

事例の概要

■経緯

　阪神淡路大震災から10年目を迎えるのを機に、震災の教訓を風化させることなく若い世代に伝え、命の大切さや防災への備えの必要性について知ってもらうとともに、消防の仕事への理解を通じて、安全で安心なまちづくりに関心を持つ若い世代をより多く育てることを目的として、平成16年から灘区内の小学4年生全員（13校約1，000名）を対象に開催することとなった。

■内容(23年度計画)

• 1. 開会式（9：15～9：25）
  • 主催者あいさつ（実行委員長）
  • 来賓あいさつ（神戸市副市長）
• 2. 第1ステージ（9：25～10：00）
  • (1)消防の仕事全体の流れを火災現場の再現を交え紹介する。
  • (2)水害の話（川遊びの注意事項）
    　都賀川増水事故により児童等5名が死亡したことから、「水害に関する学習」を行う。
• 3. 第2ステージ（10：00～11：30）
  • (1)震災学習（「語り部」による震災体験談）
  • (2)放水体験
  • (3)レスキュー体験
  • (4)煙体験、起震車体験
• 4. 閉会式（11：30～11：40）
  • 　灘区小学校校長会代表校長あいさつ
  • 　合唱「しあわせ運べるように」

苦労した点

• 1. 消防の仕事全体の流れ（消防官の立入検査（防火指導）→模擬店舗から火災発生→初期消火→119番通報→消防車の出動→消火活動→火災原因調査）や、学習種目（放水体験、レスキュー体験（ロープ結び、ロープ渡り）、起震車体験、煙体験）を、実際に目で見て、触れて体験できること。
• 2. 震災学習（「語り部」による震災体験談）により、震災の悲惨さ、震災後の神戸市の災害への備えや、一人ひとりが防災意識を持つ必要があることを学習できること。
• 3. 第1回目を平成16年10月27日に開催して以来、小学校校長会から毎年、継続して開催してほしいとの強い要望があるため、今年で8回目の開催となること。
• 4. 構成団体間の絆や結束力が強く、非常に仲が良いことから、「灘区の安全なまちづくり」を将来担うであろう子ども達のために、毎年、開催に要する経費（約150万円）を快く捻出してくれていること。

委員のコメント（防災まちづくり大賞選定委員 室﨑 益輝（関西学院大学総合政策学部教授））

　震災の教訓を風化させることなく、命の大切さや防災の備えの必要性を、時代を担う若い世代に伝えようとして、阪神・淡路大震の10年後から、地域と学校と行政が一体となって取り組んでいる。防災の経験や知識を伝えるだけでなく、危機の時代を生き抜くために欠かせない、防災の技能を若者が実践的に磨く場を作りだしている。
　この取り組みで評価されることの第1は、「ファイア・アドベンチャー」という名称にも示されるように、訓練の内容を消火や救助といった消防活動に特化させることにより、災害直後の応急対応を総合的に学べる機会をつくりだしていることで、普段なかなか学べない「ロープ渡河」や「放水」などが実体験できるものとなっている。
　第2は、灘区という大きな行政区域でありながら、そこに存在する全ての小学校が参加するイベントとして定着していることである。毎年、4年生以上の小学生が全員参加している。昨年は13校の約1000名が参加した。日程調整が大変な中で、皆が一つになる場をつくりだしていることに敬意をはらいたい。
　第3は、地域に存在するありとあらゆる団体が共催する形で取り組まれており、コミュニティ、行政、学校、企業、民間団体の連携が見事に実現されているということである。とりわけ、小学校校長会やPTA連合会が総力を挙げ、率先して取り組んでいることが評価できる。
　この取り組みを通して時代を担う全ての若者が、高い防災意識と優れた防災機能を身につけるようになっている。それは、防災教育を地域と行政あるいは地域と学校が一体となることによって初めて可能となる。このことを、実践を通して教えてくれる貴重で先進的な事例である。

団体概要

構成人員

神戸市（灘区役所、灘消防署）と民間団体等で構成される実行委員15名

構成団体

神戸楽生会、灘防火安全協会、八幡財産区管理会、都賀財産区管理会、篠原財産区管理会、高羽財産区管理会、徳井財産区管理会、灘十三大字連合協議会、灘区自治会連絡協議会、灘区防災福祉コミュニティ連絡会、灘区小学校校長会、灘区小学校PTA連合会、灘消防団、灘区役所、灘消防署

実施期間

　平成16年10月～