第16回防災まちづくり大賞(平成23年度)

【消防科学総合センター理事長賞】繋がり、地域に貢献する防災学習

消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
繋がり、地域に貢献する防災学習

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徳島市津田中学校防災講座(徳島県徳島市)

事例の概要

 平成17年度より総合学習の時間に防災講座を設けて、将来の津田地区の防災リーダー育成をめざして学習している。

  • 1. 学習内容
     今年度の学習内容は、「地震・津波のメカニズム」「東日本大震災ボランティア談」「東日本大震災から学ぶ」「災害図上訓練(DIG)」「避難所運営ゲーム(HUG)」「クロスロード」「災害復興シミュレーション」などである。
     また、9/12(月)には群馬大学片田教授に講演していただいた。全生徒だけでなく多くの町内の人が「3.11 釜石の奇跡」~避難3原則~のお話を聞いた。
  • 2. 繋がること
    • (1)義援金活動…全学年、<支援>本校防災講座OB
       3/15 (火)~20(日)の6日間、在校生・卒業生延べ200人が町内量販居前で義援金活動を行った。314万円集まり、日本赤十字社を通してお送りした。
    • (2)非常食作り・配布…2年生、<支援>津田地区青少年健全育成会、津田地区民生委員
       10/26(水)に2年生が非常食であるジャムを作り、11/16(日)に高齢者お食事会で配布する。その際に、昭和南海地震について教えてもらう。今年で5回目である。
    • (3)幼小防災出前授業…2年生
       11/22(火)に2年生が津田幼・小で防災学習の出前授業を行う。今年で3回目ある。
    • (4)町内防災意識調査…3年生<支援>津田コミュニティ協議会
       夏休み、3年生が調査してまとめ、8/25(木)に50事業所に配布し掲示してもらった。12月には、町内の会合で発表する予定である。調査は今年で 7 回目である。
    • (5)阪神・淡路大震災追悼イベントの開催(予定)…2年生、3年生、<支援>市災害ボランティアグループ
       徳島市災害ボランティアグループと共催で、毎年1/16に新町川公園で実施している。来年で 5 回目(予定)である。
    • (6)全国防災ミーティングに参加(予定)…3年生
       来年2/4(土)、5(日)に淡路で行われる全国防災ミーティングに本校3年生9人が参加する。参加校は舞子高校のほか釜石東中学校、宮古工業高校など10校の予定。
  • 3. 地域に貢献すること
    • (1)町内防災訓練に参加…2年生、3年生、<町内支援>津田地区コミュニティ協議会、自主防災会
       6/5(日)町内小型船舶物資輸送訓練、11/5(土)町内避難訓練に参加し、町内の人と一緒に活動する。防災講座生は全員が参加する。
    • (2)家具転倒防止器具設置の啓発…昨年の3年生、<町内支援>津田地区民生委員
       昨年の夏休みに3年生が、徳島市危機管理課・町内民生委員と一緒に町内の高齢者宅を巡回し、家具転倒防止器具の設置を呼びかけた。
    • (3)町内シルバー人材センターに発表会…3年生
       7/17(日)に、津田コミセンで3年生と防災講座OB(現高1)が、50人の高齢者を対象に昨年度の調査報告と避難の重要性を発表した。
    • (4)意識調査から行政への要望…3年生、<町内支援>津田地区自主防災会
       10/24(月)に、夏の町内防災意識調査結果から見えてきた問題点を行政にお願いする。①津田山の整地、②同報無線の設置の2点である。津田コミュニティ協議会からの要望は8月に行っている。
    • (5)防災マップの作成…2年生、3年生、<町内支援>津田地区自主防災会
       防災マップ作成のため、8月~12月に徳島市危機管理課、徳島大学、町内の人々と一緒に町内を回り、図上で話し合いを行っている。12月完成、2月に看板設置の予定。

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幼小防災出前授業(津田幼稚園)

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避難支援マップ看板の作成

苦労した点

  • 1. 町内自主防災会等との連絡
     4月に町内各組織と一緒に年間計画を作成している。また、随時連絡を取り合うなど学校と町内組織が一体となって取り組んでいる。そのための連絡が非常に煩雑である。
  • 2.担当教員の多忙
     校務以外の仕事として取り組むため多忙を極め、深夜・土日など時間外勤務が多い。
  • 3. 運営資金がない
     この7年間で100万円以支出しているが県・市・学校の支援はなく、そのため活動資金は担当教員が応募する論文の懸賞金だけで運営している。そのため、論文制作に多くの時聞を割かざるを得ない。入選しなければ津田防災は消滅する。
  • 4. 運後継者がいない
     1~3のため後継者がいない。担当教員が異動すれば津田防災は消滅する。

特徴

 「防災学習は、理論より実践(繋がり)」を目標に取り組んでいる。3月の義援金活動の際には「ご苦労様。頑張ってね」とねぎらいの言葉をかけてもらい、夏休み3年生が調査のため戸別訪問した際には「頼りにしているよ」と語りかけられた。この町内との信頼関係を大切にしていきたいと実感している。
 また、ここ数年、県内外のマスコミに報道していただくことで、本校の活動を知ってもらうだけでなく、県民への啓発に貢献している。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 高野 公男((株)マヌ都市建築研究所所長))

 津田・新浜地区は徳島市の紀伊水道に面する臨海部に位置し、四方が海と河川に囲まれた島状の市街地である。中央部に津田山と呼ばれる標高77メートルの山があり、こんもりと繁った緑が地区の景観を特色づけている。津田中学校は津田小学校と隣接してその「山」の麓に立地している。しかし実は、この津田山の斜面の大部分は土砂災害の警戒区域に指定されているのだ。津波がきたらどこに逃げればよいのか、近い将来に予想される南海地震や東南海地震による津波災害の危険性が指摘されるようになり、住民の防災意識も高まっていた。こうした中、津田中学校では総合学習の中で防災講座を設け、地域と連携した活動を始めた。地震・津波のメカニズムの基礎的学習、専門家や災害体験者を招いた防災学習、調査や地域住民との交流、災害ボランティアとしての実地体験などを積み重ね、防災講座による地域貢献という貴重な経験を得て生徒たちは巣立っていった。その活動のめざましい成果の一つが町内会や大学、市当局と一緒になって創った津波避難支援マップであろう。避難ルートや避難地までの到達時間などを詳細に記した避難マップはきわめて具体的でわかりやすく、この種のマップとして出色のものといえよう。指導教員の力量に負うところが大きいと思われるが、学校教育と地域防災教育のあり方に一石を投じた活動といえる。個人的な意見であるが、生徒たちがアピールした津田山を安全な避難地として整備することが急務ではないかと考える。

団体概要

  •  平成17年度 1年生31人
  •  平成18年度 1年生30人
  •  平成19年度 3年生39人
  •  平成20年度 1年生37人
  •  平成21年度 2年生35人
  •  平成22年度 2年生35人、3年生30人
  •  平成23年度 2年生33人、3年生30人

実施期間

 平成17年~平成23年(現在7年目)