総務大臣賞(住宅防火部門)
住宅防火啓発用視聴覚教材の制作と実用化
ナガサキ防火研究会(長崎県長崎市)
事例の概要
■経緯
住宅防火を推進するためには、第一に住民自身の防火に対する意識を変える必要がある。そのためには、まず火災の実態を知ってもらわなければならない。そこで火災の原因を「見える化」すれば、幼児からお年寄りまで幅広い年齢層に防火意識を浸透させることができると考え、有志が集まって住宅防火の見える化をテーマに活動をはじめた。その後、長崎市自主研究グループとして市の助成を受け、消防職員と民間人で構成するナガサキ防火研究会を発足、休日を活用して活動している。
■内容
- 1. 地元で実際に起きた火災事例を元に手作りの再現マンガ12編を制作した。松園財団の地域振興助成金でマンガ冊子1000部を印刷、市内銀行、郵便局などの金融機関窓口、図書館、市内全小学校、婦人防火クラブ員に配布した。
- 2. 再現が難しいとされている電気火災の一つ、トラッキング現象を数十秒で発生させる手法を考案し、松園財団の地域振興助成金を受け、電気火災実験装置を製作した。
- 3. これらのマンガや火災原因別再現実験を小学校、高校、自治会、老人施設で展示を行い、その効果を検証し、修正、改善を行った。
- 4. マンガをパソコンに取り込んでデジタル化し、動きと効果音を加えた。また再現実験を映像化し、視聴覚素材として加工するとともに、自作のクイズやゲームなどのコンテンツを添えてこれらの素材を誰でも視聴できるようにホームページを開設した。
- 5. マンガや実験映像などの視聴覚素材をタッチパネル・パソコンに搭載、市役所ロビー、市民会館、小学校、科学館に設置して、誰でもどこでも自由に視聴し防火の知識を楽しみながら学ぶことができるようにした。特に小学生に好評を得ている。
防災体験教室
電気火災の再現
市役所のタッチパネル
研究会のホームページ
苦労した点
- 1. 実際の火災で消火活動や原因調査に従事した消防職員が、自らの手で書いた再現マンガ は、一般市民にとってインパクトがあり、防火思想の啓発に効果が期待される。
- 2. 再現実験については火災調査の経験豊かな消防職員の手作りで、火災の実態に沿った再現方法を用いている。したがって、文字や言葉で取り入れた知識とは違い、五感を使った実験が実生活の場面とリンクすることで、住宅防火に効果をあげることが期待できる。
- 3. これらの視聴覚素材とクイズをタッチパネル・パソコンに搭載し、公共施設に常置することで、大人も子どもも楽しみながら、自然な形で防火への認識を深めることができる。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 野村 歡 (元国際医療福祉大学大学院教授))
今回受賞対象となった団体は、消防職員と民間人で構成される7名を中心に外部から支援する講師3名および協力者2名で構成されており、休日を利用して平成17年9月から自主的に活動している。
これまで本部門への応募は住宅火災警報器の配布および取り付けに関するものが多く見られたが、今回の受賞応募の内容はこれとは全く異なった視点での活動であり、多くの審査員が注目するところとなった。すなわち、本件は、地元で実際に発生した火災を題材にし、住宅防火に関する「マンガ」「クイズ」「ゲーム」「映像」等を自らが制作し、HPでの閲覧を含めて広く市民に対する分かりやすい防火普及活動を行っている。「マンガ」はこれまで12編が完成しているが、特にそのうちの数編はかつて漫画家志望だった女性消防官が作画し、プロの漫画家の指導を仰ぎながら質の高い内容となっている。成果物は市内にある某財団から助成金を得て1000部印刷し、市内全小学校をはじめ金融機関窓口、図書館など700箇所に配布した。
(株)ケーブル・ジョイは制作者4名の少ない人数ではあるが府中駅の近くに立地し、家族の皆さんにとって身近な話題を積極的に取り上げている。住宅火災による死者を軽減させるための報道機関としての使命を十分認識しており、府中市内の多くの地域、福山市内の一部地域及び神石高原町全域において、地域のホットなニュースを報道している。
もう一つ特筆すべきことは、再現が困難といわれている「トラッキング現象」を数十秒で発生させる手法を考案し、これも同財団の助成を受け電気火災発生装置として制作している。
これらの成果物を持って小学校・高校・自治会・老人福祉施設等で展示を行い、その効果を検証し修正・改善を行ってきている。同時に「マンガ」「クイズ」等や実験映像などの視聴覚素材をタッチパネルPCに搭載して市役所ロビー・市民会館・小学校・科学館に設置して自由に視聴でき、楽しみながら住宅防火を学ぶことができるようになっている。とくに小学生に好評を得ている。
団体概要
構成人員:民間人1名と消防職員6名
平成17年から消防職員有志で自主活動を行っていたが、平成19年に長崎市職員を対象とする自主研究グループ助成制度を利用している。活動は休日等の余暇を利用している。
実施期間
平成19年9月~