消防庁長官賞(住宅防火部門)
「住警器マン」による住宅用火災警報器の設置促進PR
株式会社 ケーブル・ジョイ(広島県府中市)
事例の概要
■経緯
株式会社ケーブル・ジョイは平成4年7月1日に開局し、広島県府中市全域(上下町を除く。)及び広島県福山市新市町の一部、さらに広島県神石高原町全域をエリアに持ち、有線テレビ放送事業を行っている。コミュニティチャンネルとして住民から親しまれ、地域のホットなニュースをいち早く届けている。
行政情報も数多く発信しているが、「住宅用火災警報器の設置義務化」という直接住民の命に関わる情報ということに着目し、平成23年6月の義務設置までの1年間、毎月内容を変えながらシリーズで番組を制作することとなった。番組を制作するにあたり、福山地区消防組合府中消防署と連携を図り、府中消防署が住宅用火災警報器設置促進キャラクター「住警器マン」を起用してPRしていることから、「住警器マン」を毎回登場させ放送することにした。
■放送内容
- 平成22年 7月
- スタジオ収録により住警器マンが設置促進をPRする。
- 平成22年 8月
- あるお宅を住警器マンが訪問し、住宅用火災警報器を実際に設置して見せる。
- 平成22年 9月
- 幼年消防クラブ員が住警器マンと一緒に設置の呼びかけをする。
- 平成22年10月
- 府中消防署員と住警器マンが「消防署のある一日」と題してドラマ収録
- 平成22年11月
- 住警器マンが市内保育所の子どもを対象に防火教室を開く。
- 平成22年12月
- いきいきサロンに参加した高齢者と一緒に設置のPRをする。
- 平成23年 1月
- ある家庭を舞台に「こんろの火は大丈夫?」と題してドラマ収録
- 平成23年 2月
- 府中市消防団員が実施するローラー作戦をレポートする。
- 平成23年 3月
- 府中市老人クラブ連合会の皆さんと住警器マンが設置のPRをする。
- 平成23年 4月
- 放送なし
- 平成23年 5月
- スタジオ収録によるPR「義務設置まであと1ヶ月」
- 平成23年 6月
- 市内で行われたイベントのステージで住警器マンショーを実施
消防団員による住宅用火災警報器設置促進ローラー作戦
消防署の朝の点呼
保育所での防火教室
住警器マンショー
苦労した点
- 1. 毎月内容を変えていたので、シナリオの作成やリハーサルに時間を費やすことができず、ぶっつけ本番という月もあったが、地域局特有の機動力を生かして、臨機応変に番組を制作した。
- 2. 番組を制作するにあたり、常に視聴者側の観点で取り組み、視聴者の興味を引き付けるため、ただ面白い内容だけにとどまらず、住宅用火災警報器の設置が最終目的とすることを念頭におきながら編集することが難しかった。
特徴
- 1. 平成21年6月に府中市全世帯へアンケートした結果、設置率22.8%にとどまり、効果的な広報活動の展開が必要となり、子どもから大人まで親しまれるキャラクターを起用した。
- 2. いきいきサロンや老人クラブ等地域住民が参加して制作した番組もあり、住宅用火災警報器の設置促進の意識づけが図られた。
- 3. 一年かけて放送した結果、住宅用火災警報器の設置義務化及び設置猶予期限が周知され、設置率が81.3%にまで上昇した。(平成23年8月末現在)
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 吉田 忠((財)日本防火・危機管理促進協会常務理事))
この表彰は、地区の有線テレビ会社が地域に密着したニュース番組として住宅防火に係る各種の活動を制作し、家庭における住警器の設置率を向上させた成果に贈られたものである。
(株)ケーブル・ジョイは制作者4名の少ない人数ではあるが府中駅の近くに立地し、家族の皆さんにとって身近な話題を積極的に取り上げている。住宅火災による死者を軽減させるための報道機関としての使命を十分認識しており、府中市内の多くの地域、福山市内の一部地域及び神石高原町全域において、地域のホットなニュースを報道している。
住警器の設置率を上げる番組は得てして興味を引く内容にほど遠くなりがちであるが、消防職員が扮する「住警器マン」を活用して、地域の住民が楽しみながら防火対策の必要性を理解できる内容を制作している。興味を持たせるために、保育所での避難訓練や防火教室の状況、老人集会所での防火防災講話の状況、消防団による設置状況確認のための訪問の状況や住警器設置のための住宅への訪問、スタジオでの収録など、数多くの場所での密着取材等を行っている。制作番組には府中消防署が一致協力し、概ね1年間で住警器の設置率を22.8%から81.3%まで上げることが出来た画期的な例であり、高く評価できるものと考えている。
番組を制作しているチーフは、二度も自宅からの火災を直前で防ぐことが出来た経験を持っている。その一つは圧力釜による調理中に外出し、住警器の警報音を母屋にいた母親が気付いて火災を未然に防ぐことが出来た。この経験を教訓として、日頃から火災による被害を無くすための活動に熱心に取り組んでいる。今後とも地域の風土に根ざした独特の文化、特に家庭での防火・防災に係る知恵を盛り込んだ番組を制作し続けて欲しいものである。
団体概要
- 商号
- 株式会社ケーブル・ジョイ
- 所在地
- 広島県府中市元町423番地8
- 設立
- 平成2年8月2日
- 開局
- 平成4年7月1日
- サービスエリア
- 広島県府中市全域(上下町を除く)、広島県福山市新市町の一部、広島県神石高原町全域
業務内容
- 1. 有線テレビジョン放送法による有線テレビ放送事業
- 2. 有線テレビジョン放送施設を利用する音楽放送
- 3. 放送番組、録音、録画の制作及びその販売並びに賃貸
- 4. 有線テレビジョン放送施設のチャンネル貸与に関する業務
- 5. 有線テレビジョン放送設備の保守業務
- 6. 有線放送を利用した電気通信事業法による第一種電気通信事業
実施期間
平成22年7月~平成23年6月