第13回防災まちづくり大賞(平成20年度)

防災はまちづくりから~自分たちのまち・命は自分たちで守る~

優良事例
(一般部門)

防災はまちづくりから
~自分たちのまち・命は自分たちで守る~

市木地区自主防災組織 (鹿児島県垂水市)

事例の概要

■経緯

 垂水市は、平成17年9月の台風14号の暴風雨、平成18年7月の梅雨期の局地的豪雨、平成19年7月の台風4号の暴風雨と、相次ぐ自然災害により3年続いて市内全域が大規模な被害に見舞われている。
 中でも、市木地区では、平成18年7月5日に発生した「7・5豪雨災害」により、土砂崩れや土石流が数カ所で発生し、大量の土砂や巨木が民家に流れ込んで住家4棟が全壊する被害となった。当日は午前11時頃から数ミリ程度の雨が降り続いてはいたが、夕方から急激に雨脚が強まり午後7時から8時の1時間雨量が57ミリ、9時から10時の1時間雨量に至っては109ミリと、これまでの本市で観測された最大時間雨量63ミリをはるかに超える豪雨となり、わずか半日で273ミリの雨量を記録した。
 その際、本組織では、夜間の豪雨という困難な状況にも拘わらず、かねてから土砂災害に対する警戒が必要であるという認識を本組織員全員が持っているということや,日ごろの防災訓練の成果もあって、地域住民へ「早期避難の呼びかけ」、「避難時の安全確保」、「避難時の介助」等を積極的に行うことができ、災害から人的被害の発生を未然に防ぐことができた。
 これまでの災害の歴史を踏まえ、地域住民一人ひとりが「自主防災組織の基本はまちづくりである。自分たちの命、まちは自分たちで守る。」という「自助・共助」の意識を持って、積極的に自主防災活動に取り組んでいる。

■内容

  • 1 防災訓練の実施
     年2回ほど、地域行事に合わせて多くの住民が参加して、避難訓練・初期消火訓練・救護訓練等を実施している。
  • 2 危険区域等の点検
     年間を通じ、住民が身の回りの危険区域や危険箇所の点検等を実施しており、それを踏まえた地域住民によるハザードマップ作りを毎年行い、それぞれが避難経路の確認等を実施している。
  • 3 避難経路の管理
     避難経路について、地域住民自らが雑草除去等を行い、自主管理を随時実施している。
  • 4 地区内自治会間の連携強化
     地区内には5自治会があり、避難訓練等の合同行事実施後には、婦人部による炊出しによる懇親会を開催し、自治会間の連携強化を図っている。
  • 5 自主的避難の実施
     地域の実情に精通した自主防災組織が、土砂災害等の発生が予見されると判断する状況に自主的な判断で避難準備に入ったり、自主避難を開始している。

女性による搬送訓練

避難誘導訓練

ハザードマップづくり

機材による宅地内の土砂除去

炊出し訓練

苦労した点

 本市がそうであるように、この地区もまた、シラス層の山々に囲まれ、急傾斜地が多いという地形から、梅雨期、台風襲来時にもたらす集中豪雨に対しは非常に脆弱な土地柄である。したがって、地域の実情に精通した自主防災組織であるとは言え、行政からの情報ばかりでなく、地域の土砂災害等の発生を予見しての避難準備や自主避難の開始の自主的判断は難しいものがある。
 加えて、夜間の豪雨ということで、住民に対する「早期避難の呼びかけ」「避難時の安全確保」「避難時の介助」等を安全かつ確実に行えるかという不安はあったが、構成員等の積極的な活動で人的被害の発生を未然に防ぐことができた。

特徴

  • 1 地区の防災計画を地区民が自ら作成した。
     行政の作成する大綱的なものと異なり、地域に限定した詳細な事項について、区民が話し合い、共に考えながら防災計画を策定したことにより、区民の防災意識は一層高まった。
  • 2 世代間の交流が行われた。
     地区の小学校の協力により、小学校も自主防災会の地震体験車の試乗、簡易担架の作成、防災まち歩き等の活動に一緒に取り組み、父兄、老人会等の日頃顔を合わせることのない世代同士が防災活動を通じて交流を行った。
     更にこの活動を通じて、世代間ふれあい軽スポーツ大会を開催し、自主防災の原点であると思われるコミュニティーの醸成に一層寄与できている。

団体概要

  • ・平成11年9月1日設立
    (構成自治会:下市木1区・2区・3区、中市木、上市木の5自治会)
  • ・活動者数 43人  所属員数 549人

<参考>
・垂水市 市木地区   世帯数:236世帯
 人 口:549人       ※平成20年8月1日現在

実施期間

平成11年9月~