第15回防災まちづくり大賞(平成22年度)

台風等による水害、局地的大雨などを想定した取組

優良事例(一般部門)

台風等による水害、局地的大雨などを想定した取組

千葉県立市川西高等学校
(千葉県市川市)

事例の概要

■経緯

  • 1. 本校は「春木川」と「国分川」の2河川にはさまれた場所に位置する。これまでは、両河川の「はん濫」の危険性が指摘されていたにもかかわらず、本校生徒や地域住民の取る行動への対策がなされていなかった。そこで本校では、水害の視点から学校周辺地域の地質学的要因、地理的要因、人的要因、環境要因などに関する情報を学校から発信することにより、学校と地域住民とが情報の共有化を確立し、学校と地域の間に強いネットワークを構築していきたいと考えた。
  • 2. 本校が位置する真間川流域は、昭和30年代後半からの急激な市街化が進んだが、水害対策は充分なされず、昭和50年以降には数年に1度の割合で記録的な水害が起こっている。真間川に対しては、千葉県が、昭和54年度から「総合治水対策特定河川事業」として総合的な治水対策を進めており、平成6年度には「国分川分水路」が完成し、近年は流域の洪水被害が激減した。しかし、隣接する外環自動車道の建設の遅れ、下水道整備も遅れ等、流域には潜在的な水害の危険性があると考える。また近年では、極端気象によるゲリラ豪雨や局地的大雨などの予想外、突発的、局所的な災害が発生するという新たな課題が生じている。
     これらを踏まえ、水害の被害の可能性の高い本校と地域住民が防災教育の台風等による水害、局地的大雨などを想定した取り組みに着手する必要があると考えた。学校と地域の連携を深め、地域住民とともに水害対策を構築して災害に強い街づくりに役立てるものであると考える。

■内容

  • 1. 昨年度までの取組
    • 平成19年 ・職員対象にAED講習会を実施。
    • 平成20年 ・部活動加入生徒代表者(150名)対象の救急救命講習会を実施。
      ・顧問、マネージャー、部員代表者を対象に実施。
    • 平成21年 ・平成21年度高校生防災基礎講座を実施。
       NPO法人レスキューストックヤード代表理事栗田暢之氏を講師として、「高校生ができる防災への取組や心得」、「高校生に期待すること~阪神・淡路大震災被災者支援活動より」の講演会を全校生徒492名、職員に実施。講演後にホームルームで防災についての防災アンケートを実施。
      ・避難訓練において、消火訓練を実施。
       市川市消防局の指導による、クラス代表生徒(80名)が実際に消火器を使い消火活動を実地。
  • 2. 平成22年度の活動内容及び予定
     調査活動(4月から11月)
    • (1)真間川の「総合治水対策事業」について(流域全体での治水対策)
    • (2)「春木川」と「国分川」についての地質学的要因・地理的要因・人的要因・環境要因等について
    • (3)「春木川排水機場」と本校テニスコートその地下利用の「地下貯留池」と「国分川調整池」について
    • (4)本校生徒、学校近隣住民(抽出)、地元有識者への水害に対する意識調査(アンケート形式)
    • (5)真間川改修事務所、葛南地域整備センター、市川市消防局の協力のもと、河川はん濫と雨量の関係や水かさ、近年の豪雨状況や台風等による被害状況について
    • (6)自治体からの避難情報や避難のあり方、河川の観測体制、水害への避難訓練等の防災対策について
  • 3. 防災環境学習会(年3回実施)
     防災環境委員会生徒代表者、保護者、地域住民参加の調査資料をもとに、水害への学習会を行う。
  • 4. 平成5年8月27日の台風11号(降水量約200mm)による本校正門前の被害写真の掲示及び啓発活動。本校に残る水害状況(はん濫)の写真をもとにした生徒、近隣住民への啓発運動。
  • 5. 災害コーディネーターによる講演会(平成22年9月16日、12月18日)
     全校生徒、教職員、地域住民対象に、水害についての講演会を実施する。
  • 6. 地元小学校への出前防災教室及び出前授業の実施
     本校近隣の百合台小学校へ出向き、本校生徒・職員が防災(水害)についてポスターセッションを中心に出前授業を行う。
  • 7. 文化祭を活用した防災(水害)啓発活動(平成22年9月10、11日)
     本校文化祭で防災(水害)ブースを設置し、水害における調査資料や洪水シミュレーション、洪水ハザードマップ等をポスター大にして、ポスターセッション形式での地域住民、一般の方々への水害防災啓発活動を行う。
  • 8. 地域フォーラムの開催(平成22年8月6日)
     水害における防災についての啓発運動、地域住民等に水害に対する防災についての発信を行う。
  • 9. 高校生防災パワーアップ講座への参加(平成22年7月26日、27日)
  • 10. 市川市総合防災訓練(防災ひろば)への参加(平成22年8月29日)
     市川市総合防災訓練(防災ひろば)に参加。PRブースにて市民への水害に対するアンケート調査及び水害へのポスターセッションを生徒が実施、洪水ハザードマップの普及活動等。
  • 11. 九都県市合同防災訓練(千葉県会場)に参加(平成22年9月1日)
     PRブースにて参加者への水害に対するアンケート調査及び水害へのポスターセッションを生徒が実施、洪水ハザードマップの普及啓発活動等。

生徒によるポスターセッション形式での
防災(水害)についてのプレゼンテーション

苦労した点

  • 1. 2つの川に囲まれた本校は、近年の極端な気象によるゲリラ豪雨や台風等による「はん濫」、「水害」が想定される。このことは、学校に限らず、地域住民においても大きな問題となってくる。これを踏まえ、地域と連携した水害への取り組みを、学校が発信することが必要と考えてきたが、なかなか地域住民の協力が難しい現状であった。
  • 2. 高校生が共助の担い手であることを認識させるとともに、水害発生時に的確に行動できるようにさせるための効果的な方法を見出すことに時間を要した。
  • 3. 地域住民との協力をもとに、水害に対する防災教育や避難対策が必要とされるが、学校独自だけでは厳しい現状であり、官公庁や地元消防団等、関係機関との連携が必要であると考えた。初めての試みであることから、試行錯誤しながら連携が必要な関係機関との関係や連絡方法を確立していった。
  • 4. 本分野のコーディネーターの情報が少なく、選定や日程の調整に時間を要した。

特徴

  • 1. 学校の教育活動における防災教育に「春木川と国分川に関連する課題」を系統的・組織的に取り入れ、生徒が学んだことを地域に積極的に情報発信し、周辺地域をリードしながら、地域と連携した取り組みを行ったこと。
  • 2. 地域一体型の防災として地域住民・官公庁と協力のもとでの避難対策の構築。
     避難のあり方、災害時要援護者の避難のあり方、地方自治体からの避難情報のあり方、河川の観測体制、福祉資源と防災との連携を一緒に調査・点検することで地域の防災上の課題や改善策が構築された。アンケート調査や防災PRの前は、地域住民の水害に対する意識が低く、ハザードマップの存在すら知らない、避難場所を知らない、河川の状況も全く無意識であったが、今回の本校発信の防災により、明らかに防災への意識が高まり、災害に強い街づくりに役立てた。また、地域住民の発災対応力が向上するだけでなく、地域住民と生徒達に社会貢献意識が育まれた。そして、生徒のコミュニケーション能力と問題解決能力が高まった。また、学校、地域住民からの発信により、自治体の河川整備などのハード対策と一体的に、浸水シミュレーションの確立や洪水ハザードマップの整備及び公表などのソフト対策を促進することができた。

団体概要

千葉県立市川西高等学校
 昭和60年4月に市川地区の9校目の公立高校として開校し、本年度創立26年目を迎えた。創立当初は、6学級(287名)でスタートし、現在は、1、2、3学年4学級、合計12学級(475名)である。また、平成23年度には本校を使用校舎として、市川北高校との統合が行われ、新しく市川昴高校としてスタートする予定である。
構成人員 : 教職員47名 全校生徒475名

実施期間

平成19年4月~