第15回防災まちづくり大賞(平成22年度)

地域ぐるみの防火・防災体制の構築

優良事例(一般部門)

地域ぐるみの防火・防災体制の構築

新町地区自治会
(岩手県一関市)

事例の概要

■経緯

 新町地区自治会は、昭和63年7月1日に自主防災組織を結成し、地域における「自助」、「共助」による防災力向上のため、毎年独自の企画で各種防災訓練等に取り組んできている。平成3年からは毎週火曜日に防火夜回りを継続的に実施し、今年で19年目を迎える。地域内すべての要援護者の支援が災害の際には必要と考え、平成15年9月に近隣の3自治会とともに地域内にある老人福祉施設千寿荘(社会福祉法人寿慶会 入居者80名)と「消防相互応援協力に関する覚書」を締結し、災害時の協力・応援体制を確立した。平成20年6月14日、当市西部を震源に発生した「岩手・宮城内陸地震」では、これまでの取り組みを生かし、老人福祉施設への救助応援の確認や地域の高齢者宅の安否確認など相互扶助活動を行った。またこの地震を契機に、今後発生が予測される宮城県沖地震に備えさらに取り組みを強化する必要があると考え、地域内のデイサービス施設(宅老所)とも救護応援体制を確立するなど「地域ぐるみの防火・防災体制の構築」に積極的に取り組んでいる。

■内容

  • 1. 消防署主催の防災研修に参加し、防災について学習を深めるほか、地域で総合防災訓練を企画し、自主防災組織及び消防団との連携訓練を継続実施している。
    • (1)地域の拠点である「まちの駅」施設を中心に、地震による火災発生後の初期消火・避難誘導・通報訓練を実施。
    • (2)災害時要援護者を預かる老人福祉施設千寿荘からの避難誘導・救助救出・応急手当訓練の実施。
    • (3)自主防災組織によるバケツリレーでの初期消火及び消防団による放水訓練の実施。
    • (4)女性部による炊き出し訓練の実施。
  • 2. 女性部を中心に防火夜回りを平成3年から継続実施。(毎週火曜日)
  • 3. 老人福祉施設千寿荘と「消防相互応援協力に関する覚書」を締結し、災害時の協力・応援体制を確立した。
  • 4. 女性部により「火の用心」啓発マスコットを手作りで作成し全戸に配布し、火災予防を呼びかけている。

「火の用心」反射マスコット

初期消火訓練(消火器取扱)

火災防ぎょ訓練(消防団)

災害時要援護者の救出訓練(応急担架作成)

非常炊き出し訓練(女性部)

苦労した点

  • 1. 老人福祉施設千寿荘との災害時の応援協力に関する覚書の締結には、当自治会の他に2自治会の同意が必要で調整に苦慮した。
  • 2. 防災訓練の企画にあたり、自主防災組織会員の防災に関する知識の習得が必要であり、またリーダーの養成に時間を要した。
  • 3. 防災訓練の企画では商店街、まちの駅の参加協力をもらうのに苦労した。
  • 4. 防火夜回りは、道路が暗く、路面が凍結する冬場は危険であり気を配っている。また、女性部の年齢は50~70代が中心で、若い女性会員の参加協力を根気よく行っている。

特徴

  • 1. 老人福祉施設千寿荘と覚書を締結し訓練を重ねているので、災害時要援護者の救助支援などの初動体制が確立されている。
  • 2. 個別の災害に備えた訓練の他、工夫を凝らし総合的な防災訓練を開催している。
  • 3. 平成3年初午の年の地元神社の火防祭がきっかけとなって始まった「防火夜回り」は、部員約100名が7コースに分かれ、毎週火曜日午後8時半から30分ほどかけて行い、拍子木や鐘を鳴らしながら「火の用心」を呼びかけ、今年で19年目を迎える。これにより地域の無火災7年を達成した。今後の継続のため、若い世代への参加を呼び掛けている。
  • 4. 女性部の手作りによる親しみやすい「火の用心」啓発マスコットを作成し全戸に配布し、火災予防を呼びかけている。
  • 5. 覚書の締結はないが、地域内のデイサービス施設(宅老所)との災害時支援体制が確立されている。

団体概要

新町地区自治会
 自治会の中に組織されている自主防災組織で、当自治会は一関市千厩町の28行政区31自治会の中の1自治会(自主防災組織)である。自治会自主防災組織の会員は、自治会の会員で構成されている。
構成人員 : 新町地区自治会305名

実施期間

「独自企画による防災訓練」昭和63年~
「防火夜回り」平成3年~
「消防相互応援協力に関する覚書」平成15年9月~