第15回防災まちづくり大賞(平成22年度)

地域防災活動への取り組み~小学校・中学校・高等学校の連携事業~

優良事例(一般部門)

地域防災活動への取り組み
~小学校・中学校・高等学校の連携事業~

青森県立名久井農業高等学校
(青森県南部町)

事例の概要

■経緯

 昨年度より青森県教育委員会より「学校安全対策推進事業」指定を受け、高校生が中心となり地域の小学校・中学校・関係機関と連携し防災に係わる活動を2年間継続している。
 本校が位置する南部町は、昭和43年にマグニチュード7.9の十勝沖地震に見舞われ、崖崩れや地滑りにより剣吉中学校の校舎が倒壊し4名の中学生が尊い命を奪われた悲しい歴史がある。また、町を縦断する一級河川の馬淵川は、大雨による増水から今日まで幾度となく氾濫し、そのたびに、田畑や幹線道路は冠水、剣吉地区の住居は浸水を繰り返してきた。現在は、護岸工事などにより頻度は少なくなったが、その危険性に変わりはない。これらのことから、子どもたちの目線ということで、本校生徒が小学校や中学校に周知する必要があると判断した。
 そこで、昨年度は、地域に住む小学生、中学生と高校生が協力し、町の自然災害の歴史を知ることから始めて、「防災マップ」を作成し、危険箇所を理解しておくために情報を共有することを目的に取り組んだ。そして、今年度は防災マップをもとに、小学生、中学生と高校生が協力し看板の作製と設置に取り組んでいる。

■内容

  • 1. 小学生、中学生、高校生の校種を混ぜた生徒2~3名で班編制を行い、意見交換や発表会を行う。
  • 2. 各出身地区の地図を貼り合わせ、各地区の危険箇所をピックアップし、付箋に書き込んだものを地図に貼り付ける。
  • 3. 各班(地区)の危険箇所を確認し、防災マップを完成させ、高校の文化祭で展示し、来校者に見てもらい説明した。
  • 4. 作成した地図をもとに、小中学生及びその保護者がいっしょに看板を作製して設置し、各家庭用緊急時避難場所の作成準備に取りかかっている。
  • 5. 高校で行う看板の作製と設置の研修の最後には、今年度も参加者全員で非常食の試食体験を計画している。

バケツリレー(南部町防災訓練)

文化祭の防災展とAEDの活用(名久井農業文化祭)

新聞から災害の状況を知る(合同研修会防災マップづくり)

危険箇所の発表(合同研修会防災マップづくり)

非常食試食体験(合同研修会)

苦労した点

  • 1. 高校生が主体となって小学校、中学校に呼びかけて事業を行っているが、校種の違いから学校行事や校外活動などの計画が異なり、日程等の調整が意外と難しい面がある。
  • 2. 同じ地域の児童及び生徒であるが、予想以上に縦のつながりが弱く、話し合いの始まりにお互いのコミュニケーションの取り方に苦労を要した。
  • 3. 各地域のマップから、これまであまり意識していなかった箇所にも危険なところがあり、どこに重要ポイントを絞ればよいのか苦労してまとめていた。
  • 4. 高校生にいかにリーダーシップを発揮させるかが大きな課題である。そのため、高校生との打ち合わせや協議を繰り返し行う事前指導が重要である。

特徴

  • 1. マップの危険箇所は、大人では気づかない点が多くあると同時に、小学校の児童と中・高生の生徒でも目線の違いに大きな幅がある。看板の設置は、地域の多くの方々にも気づかせることになり、理解が得られるようになるとともにそれぞれの地域の方々の防災意識の高揚につながる。
  • 2. これまでの児童及び生徒の研修活動や家庭へのアンケート調査は、児童及び生徒の防災意識の向上や行動の変容だけではなく、保護者の意識改革につながり、各家庭の自助努力及び共助力の向上にもつながると思われる。

団体概要

青森県立名久井農業高等学校
 本校の生徒(防災対策チーム)は南部町の名川地区に在住する生徒を中心に組織し、小学校は剣吉小学校、中学校は名川中学校に協力を依頼し、防災に興味、関心のある児童・生徒のボランティアを募り活動している。

実施期間

平成21年4月~