優良事例(一般部門)
災害体験を教訓にした災害に強いまちづくり
宮崎市生目台地区防災対策委員会
(宮崎県宮崎市)
事例の内容
■経緯
生目台地区は、平成17年9月南九州に来襲した台風14号による2次災害で18日間の断水を経験し、坂道の多い団地の長期にわたる断水は様々な課題を残した。そこで、自治会と各種団体の情報を一元、共有化するとともに要援護者に対する災害対策の強化を目指した生目台地区防災対策委員会を設置し、災害に強いまちづくりに取り組むことにした。
■内容
- 1. 情報の一元化と迅速な対応
地域で運営している「ふれあいルーム」に防災対策委員会の本部を常設し、情報を集約するとともに情報発信の拠点とした。また、委員会に5つの対策班(情報班、消火班、救出救護班、避難誘導班、給食給水班)を設け、災害に的確かつ迅速に対応できるように整理した。 - 2. 防災訓練の実施
地区内の7自治会ごとに毎年テーマを設けた防災訓練を実施し、避難誘導の確認や防災用備品の点検・確認を実施した。また、地区全体を対象とした年1回の総合防災訓練では、常日頃から防災に関心を持たせるため、住民はもとより中学生も訓練に参加する救護体験を実施した。社会福祉協議会では、民生児童委員や福祉協力員を11チームに分け、要援護者の分布マップを作成し、災害時の避難経路や危険箇所を確認し、会合毎にマップの内容を充実させている。
また、炊き出しボランティアのスキルアップを図るために、災害時を想定し大量に調理をする実習等を年6回実施している。 - 3. 要援護者情報の共有化
民生児童委員が把握していた要援護者の情報を自治会長や社会福祉協議会が共有することで、災害時に民生児童委員不在の場合でも、要援護者に対し早急に的確な救護対策が取れるようになった。 - 4. 防災協定の締結
災害時、地区内で対応できない事態を克服するため、NPO法人(防災ネットワーク)立ち会いのもとで、生活用水の提供を宮崎県農協果汁会社、食料提供を地域内の商店街(市の防災協定に準ずる)、零歳児とその保護者の受け入れを地元保育園に依頼する防災協定を締結した。
消火訓練
AED心肺蘇生訓練
要援護者の避難
ロープの結び方
炊き出し訓練
苦労した点
- 1. 防災に対する温度差の克服
当初、地区内にある7つの自治会は、防災に対する考え方に温度差があり、それぞれの自治会毎の防災訓練実施には至らなかったが、避難誘導の確認や防災用備品の点検・確認などテーマを設定した訓練内容を提案することにより、徐々に訓練を実施する自治会が増えてきた。 - 2. 個人情報の取り扱い
要援護者の分布マップ作成は、個人情報の取り扱いと新興住宅地という条件のもと民生児童委員と福祉協力員のチームごとの聞き取り調査に頼らざるを得なかったため、情報収集量が限られていたが、年4回情報を交換しマップの内容の充実と更新を図っている。
特徴
- 1. 色で識別できる要援護者分布マップ
要援護者分布マップは、年代別・障がいの程度により5段階に色分けし、救護対象者の状況が一目で識別できる。また、個人情報保護のため民生児童委員や自治会長等の限られた委員で保管し、緊急時のみ活用し更新時は旧マップと交換するなど情報の漏えいには心がけている。 - 2. 地域に応じた災害対策
地区中心部の防災対策委員会本部常設により情報の集約や発信の場所を確保。年1回地区全体を対象とした総合防災訓練やテーマを設定した自治会毎の防災訓練を実施することにより、地区に特化した災害時の課題や問題に気付くことができた。
団体概要
構成人員:生目台地区防災対策委員会19名
自治会連合会、公民館連合会、社会福祉協議会、青少年育成協議会、民生児童委員会、まちづくり推進委員会安心安全部会、体育会、商店街組合の会長が中心になって構成されている。
実施期間
平成19年1月~