第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

精神障碍者施設発の地域との合同防災活動と経験から得られた情報提供・支援活動

優良事例(一般部門)
精神障碍者施設発の地域との合同防災活動と経験から得られた情報提供・支援活動

医療法人須藤会 土佐病院
(高知県高知市)

事例の内容

■経緯

 精神障碍者は外観上その障碍がわかりづらく、また一部の疾病を除きいまだ社会的な認知が進んでいないため、当事者自身が社会的に隠れた存在になっているケースが多い。2001年病院デイケアで防災講習を行った後アンケート調査を行ったところ「地震災害が起きたら親と枕を並べて死ぬ」「どうせ誰も助けてくれない。」など厭世的な回答が多くみられ大変なショックを受けた。
 高知県は今後30年以内に50%以上の確率で大規模地震に見舞われる事が想定されており、また、元来台風や洪水など自然災害の多発する地域であることから、早急な対策が求められている。
 そこで、精神障碍者個人ではなく、グループホームなどの施設として地域とのかかわりを深め、その上で最終的に防災を軸に精神障碍者と地域を結び付けて行くことを目標として活動を始めた。

■内容

  • 1. 地域の清掃活動や不燃物回収活動などに一緒に参加しながら積極的に参加するよう促した
  • 2. 病院デイケア等での定期防災訓練・講習の実施
  • 3. 施設周辺の実地踏査による防災マップの作成
  • 4. 施設利用者対象の防災意識・技術向上のための訓練の実施
  • 5. 施設利用者への訓練後の防災知識と地域との連携の重要性についての講習
  • 6. 施設周辺地域住民を対象とした訓練実施の周知
  • 7. 周辺地域の高齢者への訓練への参加の呼びかけ
  • 8. 施設利用者が十分な訓練を受けている事を参加して頂いた地域住民へのアピール
  • 9. 同地域民生委員への訓練への参加および協力依頼
  • 10. 有志による災害時要援護者支援検討会との連携
  • 11. 外部からの訓練参加受け入れ(独居の障碍者・地方公共団体の関係者など)
  • 12. 療育福祉センター・市立養護学校他での活動過程で得られた知見についての講演活動
  • 13. 県内外への訓練用の紙ツールの提供

避難声かけ訓練

消火器取り扱い訓練

消防署への通報訓練

火災からの避難訓練

苦労した点

  • 1. 地域と障碍者施設について、防災を軸に水平的に結びつける試みは被災地以外では全国的に事例が少なく、ほぼゼロから試行錯誤であった。
  • 2. 対象者(精神障碍者・地域住民)への防災意識の周知と向上
  • 3. 周辺住民への施設での活動の理解の周知
  • 4. 事業所内部を含む関係者への活動の意味の理解周知(地域における防災と福祉の関係性)
  • 5. 自治体・関係機関の協力取り付け(当初小規模施設の訓練への協力には消極的だった。)
  • 6. 対象者(施設利用者)の地域活動への参加の働きかけ(地域との関係作り)
  • 7. 地域性・参加者層にあわせたツール作り

特徴

  • 1. 施設単独の訓練にとどまらず、周辺地域住民などを巻き込んだ防災訓練・防災活動
  • 2. 独居の障碍者(主に精神障碍者)に対してデイケアなどを通し施設の訓練への参加を促し社会参加・復帰活動の一環としている。
  • 3. 訓練で得られた知見を分析・整理の上、作成したツールや報告書などを他団体・施設などに提供している。
  • 4. 近年は高齢化に伴う身体・知的障害にもフォーカスを当て、過去の経験とそれらの知見を元に療育福祉センターや養護学校での講演・防災活動支援にも応じている。

団体概要

主たる活動拠点
1933年開院の高知市内の精神科単科病院 (2006年より精神科救急)
運用病床数181床
現在グループホーム3、福祉ホーム1を運営しており主にそれら4施設と病院デイケアを拠点に防災活動を展開している。
現在は地域や他の施設からの求めにも応じて活動を展開中。

実施期間

 平成13年~