第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

東南海・南海地震を想定した地域連携型の総合防災訓練

優良事例(一般部門)
東南海・南海地震を想定した地域連携型の総合防災訓練

和歌山県立熊野高等学校
(和歌山県上富田町)

事例の内容

■経緯

 近い将来必ず起こると言われている東南海・南海地震。次に起こればその規模は前回を上回るであろうと予想され、その被害想定も埋め立て地の増加や原油の貯蔵庫規模等の拡大を考慮に入れると、昭和の時の約10倍と予測されている。
 また、平成20年和歌山県教育センター学びの丘で開催された「平成20年度防災教育研修会」において河田惠昭教授が講演された内容によると2030年から2035年が南海地震が起こる確率がもっとも高く、統計的には12月と2月に地震が一番多く起こっているという具体的な内容もあった。
 これだけの統計学的・科学的な予想・予測がある中で、当該地域に学ぶ高校生がいざというときにどれだけ地域防災の一翼を担えるか、またそのためにはどのような準備が必要なのか等々取り組むべき課題はたくさんある。
 いずれの取り組みも急務であろうが、今回は平成20年12月9日に本校と上富田町の間で締結された『災害時の医療救護所に関する協定』に基づき、まずは地元の方々に連携と協力をいただきながら進めてきた。
 特に上富田町・上富田消防署・南和歌山医療センター三者からの全面的な協力無しには今回の結果は無かったことは確かである。今後、回を重ねながら必要な機能を整備し組織を整えつつ防災人づくりを推進していきたいと考えている。

■内容

 大規模地震を想定し、地域や医療機関と連携した総合防災訓練。

  • 1. 本校生徒の避難訓練と地域の方々の避難受け入れ訓練(上富田町の支援)
    地元自治体と連携し、避難所開設・避難誘導・避難者台帳の作成等の訓練を行う。
  • 2. 放水訓練(上富田消防署の支援)
     震災による火災と和歌山県防災航空隊の患者搬送訓練に伴う砂塵防止を兼ねて地元消防団により、グラウンドへの放水訓練を行う。
  • 3. 炊出訓練(上富田町の支援)
     本校生徒と町内会の方々と協力し、アルファー米500人分の炊き出しを行う。
  • 4. 体験訓練(上富田消防署の支援)
     各学年単位と町内会住民を3班に分け、3種類の体験訓練を行う。
    • ①消火器取扱体験・・・オイルパンを用いての消火訓練。
    • ②煙体験・・・煙体験ハウスを使用して避難訓練。
    • ③起震車体験・・・地震体験車ごりょう君で震度に応じた地震体験を行う。
  • 5. 医療救護所開設訓練
     本校看護科の教員と学生により、看護科棟及び専攻科棟へ医療救護所を開設する。
  • 6. トリアージ訓練(上富田消防署と国立病院機構南和歌山医療センターの支援)
     救急患者の応急手当を行い、実際のタッグを使用しトリアージを実施。その後トリアージ区分ごとに分けられた各階へ患者を収容する。
  • 7. 患者搬送訓練(和歌山県防災航空隊の支援)
     救急患者2名を防災ヘリにより管理棟屋上(本校1号館)まで航空搬送する。その後熊野高校看護科の学生が引き継ぎ看護科棟救護所まで搬送し、患者の応急手当及びトリアージを行う。

トリアージ訓練

トリアージ反省会と講習

一次避難

消火訓練

地震体験車にて

苦労した点

  • 1. 今回地域連携型防災訓練を進めるにあたって、全て初めての取り組みで、今までの経験を生かせず苦労した。しかし、新しく創っていく楽しみもあった。
  • 2. 地域の各関係機関との連絡調整に労力を要したが、特に今回多大なる支援と協力をいただいた方々には全面的な協力をいただき、感謝している。

特徴

  • 1. 平成20年、本校と上富田町の間で締結された『災害時の医療救護所に関する協定』が形だけのものではなく、非常災害時に機能させることを目的とし計画したこと。
  • 2. 看護科を併設する本校の特徴を生かし、自らの身の安全確保だけでなく地域防災の担い手として自助・共助の精神に基づき社会貢献できる取り組みとしたこと。
  • 3. 本校一校だけの訓練ではなく、地域住民や地域関係機関と連携した取り組みとしたこと。

団体概要

構成人員:生徒701名  職員74名

総合学科14クラス(1年4クラス、2年5クラス、3年5クラス)看護科5クラス(5年制の各学年1クラス)(平成21年は4学年まで)の高等学校。

実施期間

 平成21年9月~