台湾地震災害
地震の概要 被害状況 派遣要請 派遣期間等
派遣隊員等 活動概要 主な救助活動資器材
検索活動状況 活動完了 派遣別の内訳
個別活動状況(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
今回の派遣の特徴
11. 個別活動状況
(3) 9月24日 台中王朝マンション・台中奇蹟マンション倒壊現場での活動
現地時間7時30分、全隊、台中市内の宿舎を出発し、台中県大里市の消防局において情報収集の後、市内のマンション倒壊現場で活動を行った。
現地時間9時過ぎ、同市現岱路及び新生路地区に到着した。現地対策本部を挟んで西側には、「台中王朝マンション」と呼ぶ154世帯、耐火造地上12階建て、地下2階の大規模な高層集合住宅の倒壊現場があり、その東側約200mの所には「台中奇蹟マンション」という耐火造地上11階建て、地下2階の集合住宅の倒壊現場があった。西側の台中王朝マンションは1・3中隊が、東側の台中奇蹟マンションは2中隊がそれぞれ救助活動を担当した。
【台中王朝マンション倒壊現場】
台中王朝マンションは、平面的に見るとカタカナの「コ」の字型をしており、屋内階段を境にして、縦にAからS棟に区画され、このうちL,M,N,P棟部分の1、2階が座屈し、3~4階あたりから各棟が折り重なり合うように倒壊し、隣接建物に寄りかかった状態となっていた。大きな余震等があり、寄りかかられた建物が崩壊すれば、一気に倒壊、崩落してしまう程の極めて危険な現場であった。また、身内や親戚の者から、まだ中に22名が残されているという正確な情報も前進指揮所に数多く寄せられた。9時30分、これらの情報に基づき、倒壊した棟の3階~6階部分を検索重点箇所として、削岩機等の破壊器具、ボーカメ等の探査機など必要な救助資機材をフルに活用した検索救助活動を開始した。傾斜した室内に懸垂降下して進入すると、一軸だけの傾きではないのが分かり、天井や壁の位置がつかめない、平衡感覚を失うような状況であった。活動中、数回の余震があり、その都度、緊急脱出をして地上まで一目散に退避した。
倒壊したマンション
削岩機による検索救助活動
この現場には、前日からスイス、韓国の救助チームが着手し、主に地階部分(座屈した1、2階部分)の検索活動を行っており、日本隊も地階の検索活動に協力着手したい旨、申し出たが人力の協力については、韓国チームに頑なに拒否され、スイスチームも現場を韓国チームに譲った形となっていた。13時過ぎ、韓国チームにより生存者発見との情報が入り、同チームから生存者救出完了まで上階での日本隊の活動を中断すること、及び日本隊が保有する投光器、レスキューサポート、削岩機等を貸与して欲しいとの要請が入った。日本隊はすぐさまこれに応じたが、上階での人命探査まで中断した訳ではなく、むしろ静寂になった環境を利用し、下階への影響がない人命探査、シリウスによる測定を3ヶ所実施した。しかし、残念ながら人命の反応はなかった。
現地時間17時30分、韓国チームによる6歳男子の生存者救出完了を見届けて、直ちに検索救助活動を再開した。あたりが暗闇に包まれてからも作業は続き、軍の協力により隣棟屋上と地上から投光器の照明を受けながら、削岩機やエンジンカッターの作業音が鳴り響く中、20時10分、倒壊した6階で要救助者の右肩部分を発見したが、すでに死臭が漂い生存の見込みは無かった。
一方、韓国チームが去った後、地階へ再び活動に入ったスイスチームからの協力要請により、L棟地階部分で日本隊の手によってシリウスによる測定を4ヶ所実施したが、人命の反応は認められなかった。
22時過ぎ6階で活動中の1中隊3小隊長から、「足場の揺れを感じる。」との情報があり、また地上の前進指揮所から見てもL,M棟の傾きが増しているように思われたことから、トランジット(傾斜測量)を軍測量班に要請した。救助活動を再度中断し、23時15分から25日1時15分までトランジットが実施された。L,M棟に寄りかかられた隣接建物の傾斜角度を2ヶ所で測量する方法がとられたが、最初の1時間で(1)29″、(2)37″、2時間後の1時間あたりで(1)38″、(2)38″と間違いなく傾斜角度が増加している結果が示され、倒壊危険大との判断に立たざるを得なかった。従って、これ以上、救助活動を続行することは二次災害の危険も極めて大きいことから、活動を打ち切ることとなった。要救助者の男性1名を発見していたが、救出までに至らなかった。
入口アーケードから奥の倒壊建物L棟を見た状況
隣接建物屋上から見た倒壊状況
【台中奇蹟マンション】
第2中隊が担当した台中奇蹟マンションは、1,2階が座屈し地下2階まで陥没して、東側隣接建物に寄りかかって倒壊していた。現地対策本部からの情報によると、居住者21名が未確認となっているとのことであり、傾斜した外壁のベランダや手摺を足がかりにして最上階11階まで昇り、確保ロープを地上まで展張して、ベランダ開口部から進入して各室内の検索活動を行う作戦を取った。この現場はすでに軍隊も入っており、協同でこの活動を行うこととなったが、日本隊は、要救助者の情報に基づいて、地階に陥没していた1、2階部分、2階から4階、8階、10階、11階部分を重点に検索活動を行った。9時40分地下2階部分で女性の要救助者1名を発見した。情報によると2階にいた居住者であり、陥没によって床・天井に挟まれながら、地下2階まで落下したという悲惨な状況であり、社会死状態となっていた。コンクリートと鉄筋を破壊しなければ救出困難な状況であったが、最初は地下2階から、次いで地上部分から削岩機等を使って救出路をつくる活動を行った。この現場には、15時30分台湾の李登輝総統が視察に来られ、待機整列した日本隊に日本語で激励の言葉をかけられた。
午前中、地階で発見した要救助者の救出は、持参した削岩機やストライカー等の破壊器具だけでは困難を極めたことから、18時30分重機が必要との判断により、救出を断念しなければならなかった。以降、第2中隊は、各小隊が交替で各階の再検索活動を続行し、25日0時をもって活動を終了した。
小休止して救出方法を検討する救助隊員
李登輝総統の激励
台中奇蹟マンション倒壊現場
確保ロープ伝いに各階室内に進入、検索実施
24日は、大規模な建物倒壊現場で昼夜を通した救助活動を敢行し、台中王朝マンションで男性の要救助者1名、台中奇蹟マンションで女性の要救助者1名をそれぞれ発見し、また、韓国チームに対し、作業環境の安全確保と資機材貸与等の協力を行って、同チームによる生存者の救出活動の一翼を担った。