平成11年8月17日トルコ共和国西部地震災害

災害の概要

トルコ共和国西部地震災害

災害の概要 派遣要請等 活動概要 主な使用資器材
生存者の救出活動状況 派遣隊員及び部隊編成等
今後の課題と検討事項 総括所感

1. 災害の概要

1 地震発生日時

日本時間 平成11年8月17日(火)9時01分
(現地時間8月17日3時01分)

2 震源地

トルコ共和国の西部都市イズミット市付近(北緯40°70′、東経29°99′)

3 地震の規模

マグニチュ-ド7.4(震源の深さ 約17km)

4 断層の破壊

東西方向に100km(ずれの幅最大で5m)
北アナトリア断層(ユーラシアプレートとアナトリアブロック)

5 揺れの強さ

アダパサルで最大407ガル(参考 阪神大震災 神戸で最大800ガル)
揺れ方 ゆさゆさと壁が大きく波うつ感じ

活動現場の周辺地図

6 被害状況

トルコ共和国の西部都市イズミット市付近を震源として、東西150kmにわたり全半壊の建物が発生し、20万人の人が住む家を失うなど広範囲にわたり甚大な人的物的被害が発生した。また、被災地はトルコ経済の中枢部でGNPの80%(2兆2000億円)の経済被害となるといわれている。さらに、被災した地域の人口は、1,600万人でトルコの人口の約四分の一を占めている。

(1)人的被害

死 者 15、421人
負傷者 23,954人


都市名 死者数(人) 都市名 死者数(人)
イズミット 7、864 アダパザル 2、626
ヤロヴァ 2、485 イスタンブール 984
ボル 263 ブルサ 214

(平成11年9月21日 トルコ共和国政府危機管理センター発表)

(2)物的被害

住宅等建物倒壊 約60,000棟
イズミット、アダパザル、ヤロヴァ等の都市では電気、ガス、水道が停止。
(平成11年8月25日現在 トルコ政府の発表)

(3)建物崩壊の特徴

4階建てから8階建ての建物でパンケーキ破壊が多発した。原因として日本の建物と比較して鉄筋の量が少ないこと、柱の形がデザイン中心の長方形をしていること、壁がレンガ造りで耐力がないことがあげられる。また、日本の建物の強度と比較して1/4から1/5程度しかなく震度5強でパンケーキ破壊してしまうと指摘されている。

(4)火災

イズミットの製油所(8月25日 新聞報道)
比較的少なかったのは、木造建物が少ないこと、発災が深夜であったため火気使用時間帯でなかったこと、ライフライン(電気、ガス)が不通のままであったことなどが考えられる。

(5)特異な被害

デイルメンデル(観光地)で地盤が崩壊し、3ヘクタールにわたり街ごと海に沈下した。

7 ヤロヴァ市(日本チームの活動地)の被害等の特徴

トルコのGNPの35%を生産する街で、イスタンブールのベッドタウンとして発達し、12年間で人口が2倍となった新興住宅地である。被害が多かったのは、海沿いにある旧市街ではなく、丘に位置するニュータウンである。原因として、低価格で購入できるコーポラティフ住宅(持ち家を希望する者が共同で出資し、仲介をとらない為低価格で建築できる共同住宅である。)が質の落ちる建築材料を使用し建築したことと、地質の調査を十分に行わないまま宅地開発を行ったことが言われている。

8 トルコの危機管理システム

1958年制定の「市民防衛法」に基づき、市民防衛隊が組織され、毎年一週間位訓練をしている。今回の地震では、通信機能が寸断されたため被害の無い他都市への救助要請が遅延して被害の拡大に拍車をかけた。

9 被災者の状況

  • (1) 被災者住居
    約5万人が、グランドや広場でテント生活を送っている。
  • (2) 救援物資
    食料ではパン、水(ペットボトル)がトルコ全土から送られてきていた。また、靴や衣料品など生活用品も送られていた。ただし、いずれも管理体制が確立されていないため、無造作に置かれている状態であった。簡易物置(例えば膨張テント)があれば有効ではないかと感じられた。
  • (3) トイレ、洗濯機、シャワーなどが不足していた。
  • (4) 大災害にあい不自由な生活を強いられていたが、パニック状態や暴動などは皆無で明るく淡々と生活している姿には胸を打たれることが多かった。また、救助活動には協力的であり紳士的で活動はやりやすかった。

10 災害の所感

  • (1) 建物に甚大な被害が多かったが、最高で150時間ぶりに生存者が救出されるなど生命限度の72時間を越えても救助の必要性を感じた。
  • (2) 半壊建物に比較してパンケーキ破壊建物の方が日本チームの装備資機材からして、救助活動が困難であった。
  • (3) 半壊した建物でも安定感は比較的あるように感じられたが、いつ座屈するのかは予測できないので安易に楽観視するのは軽率である。今後、建築の専門家チームと共同で活動することでより安全な活動に配意できるのではと感じられた。

パンケーキ破壊により瓦礫と化した建物

半壊したコーポラティフ住宅