コンデンサは、概ね10年程度で内部絶縁オイルが劣化し、絶縁が破壊されリークすることで気化ガスが発生し出火する場合があり、毎年、当局でも類似する火災が発生している。今回紹介する事例については、あまり例のない特殊な縦型ブロック電解コンデンサ内部からの出火であり、出火の状況と部品の鑑識結果について説明する。
1 火災概要
発生日時 | 平成24年7月13日 18時59分ごろ |
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発生場所 | 仙台市青葉区中央一丁目 複合用途ビル |
建物概要 | 建築面積673.5㎡、延べ面積4,928.9㎡ 耐火造の地下1階、地上7階建て |
り災程度 | ぼや火災 |
出火階 | 2階部分 |
発生経過 | 営業中の日焼けサロン内に設置されているタンニングマシンアクリルベッドの一部、及びシャーシ内の縦型ブロック電解コンデンサの一部を焼失した火災であり、死傷者は発生していない。 |
2 調査概要
出火した日焼けサロンは平成13年に営業を開始し、使用しているタンニングマシンについては店舗内に6機設置されており、火災の発生は初めてである。
以下、現場写真及び鑑識写真を使用して、今回の火災調査についてのポイントと原因を判定した経過について説明する。
3 原因の考察
以上、内部誘導コイルで磁気エネルギーを電気エネルギーとして蓄える電解コンデンサ部分を子細に裁断し確認すると、電解コンデンサ内のアルミニウム膜と絶縁紙内部での炭化及び灰化は見られない事実から、電解コンデンサ内部でリークは発生していないことが判る。
また、内部誘導コイルについて、コイルの周りを覆う硬化した絶縁オイルを子細に除去し軟銅線コイルの状況を見ると、複数の溶痕箇所が確認され、この部分についてデジタルマイクロスコープを使用し拡大すると、電気的溶痕であることが確認されることから、複数個所において電気的リークが発生したことが判る。
これらのことから総合的に考察を加えると、縦型ブロック電解コンデンサ内部誘導コイル部分で経年使用により絶縁オイルが劣化し、オイルが硬化したことからリークが発生し発熱した。このことにより絶縁オイルが気化し、縦型ブロック電解コンデンサ内部内圧が上昇し、可燃性となった気化した絶縁オイルが噴出する時に噴出帯電が発生し、スパークし出火したことが考えられる。
4 今後の課題
使用している日焼けサロン内タンニングマシンは外国製であり、製造年月日、販売元については不明であることから、回路図等の取り寄せが不可能であり、また、同機種に係る事故事案の有無について情報を入手できなかった。このような事例は外国製品の場合、過去にも何度となく発生していることから、火災調査を進める上で大きな課題である。
5 おわりに
電化製品等の製造物に起因する火災については、当局においても発生件数が多く、昨年の統計を見ると総火災件数に占める約17%が何らかの電気関係による出火の過程を示すものである。
電化製品をはじめとした電気機械器具等には耐用年数があり、それぞれの使用状態によっては部品の劣化が耐用年数より早く進む場合がありますものの、過去に多くの電化製品等の火災調査に関わって感じることは、流通している電化製品等はなかなか買い替えが進んでおらず、整備や管理不足の製品等からの出火が多く見受けられる。
市民の皆様に対して、電化製品や電気機械器具等は、電気部品の劣化による火災が起こりうることを深く認識していただくため、火災調査結果を踏まえた広報活動を積極的に実施することが必要である。また、ある程度古くなった電化製品等を使用する場合の注意事項についても周知し、類似火災の発生を防止するよう努めなければならない。