はじめに
近年,アジアブームにのって外食産業(焼肉店)が増加するなか,特に煙,臭いの無いクリーンな焼肉店が目につきますが,こうした中にあって,無煙ロースターからの火災が過去2年間のうちに3件発生しました。今回は,排気ダクトの焼損が著しかった焼肉店での火災事例を紹介します。
1 火災概要
出火年月 | 平成10年5月 |
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出火建物 | 耐火5階建ての複合用途建物 |
焼損程度 | 部分焼(天井,床,ダクト等12㎡焼損) |
型 式 | 床排気型焼肉無煙ロースター |
設 置 年 | 平成4年 |
焼肉店の客が無煙ロースター使用中,網に付着した肉(カルビ)が燃えたので網を交換してもらおうとした直前に,火のついた肉がトップリングの穴から排気ダクトに吸い込まれたため, 天井, 床,ダクト等12㎡焼損した火災である。
2 調査結果
焼損しているのは,無煙ロースターから床下を二系統で経由し,壁内及び外壁沿いに設置されている排気ダクトである。
無煙ロースターは床排気型の6人掛けテーブル席(3,100kcal/H)で,排気ダクトとともに平成4年開業時に設置されたものである。
(1) 店内の状況
厨房と店舗を区切る内壁に焼き及び変色を認めるほかは,6卓ある無煙ロースターに焼きはない。(写真1)
写真1 店内の焼損状況
(2) 無煙ロースター
部品を上部から順次取外し,調査するも焼きは認められない。(写真2ー1,2ー2,図1)
写真2ー1 無煙ロースターの状況
写真2ー2 無煙ロースターを分解した状況
図1
次に,テーブル付設のフレーム板を取り除くと,アウターケーシングとムービングチューブの連結箇所に貼ってある耐熱シールが受熱変色しているのが認められ,更に下方のムービングチューブには,受熱変色及び煤の付着が認められた。(写真2ー3)
写真2ー3 フレーム版を取り除いたテーブルの状況
更に,テーブル及びムービングチューブを取り除いた床部分のCーBOX部付近の状況は,CーBOX内全体に油やかすの炭化物及び煤の付着が認められた。
床材として張られているコルクボードを剥がすと,CーBOXの形状に合わせて張られているベニヤ板がCーBOXの形状に沿って炭化しているのが認められた。(写真2ー4)
写真2ー4 CーBOX付近の状況
(3) ダクト
床下部
ダクトの上部を切開すると,内部に多孔性の油やかすが厚さ約3㎝の厚みで付着し内径面では,焼きが認められた。(写真3ー1)
写真3ー1 CーBOXを取り除いたダクトの状況
次に,床を取り外すと,ダクトからの放熱により床板や根太が焼損している。(写真3ー1,3ー2,図2)
写真3ー2 床下の燃焼状況
図2
出火側(西側)垂直ダクト
壁は石膏ボードビニールクロス貼りで,床から天井面までの全面及びダクトに取り付けられているガラスウール等が焼損している。(写真3ー3)
写真3ー3 垂直ダクトの燃焼状況
ダクト集合部
無煙ロースターから二系統で設置されたダクト集合部は,強い焼きのため白く変色しているのが認められた。(写真3ー4)
写真3ー4 ダクト集合部の状況
3 出火原因について
無煙ロースターで,焼いていた肉片に火がつき,網周囲に設けられたトップリング(煙をダクトに吸い込む時,網上の炭化物及び火のついた焼肉等のダクトヘの落下防止のため直径1㎝の穴を等間隔に設けた金具)の穴を通過,CーBOX部に落下,付着していた油やかすに着火し出火したものである。
4 おわりに
過去3件発生した無煙ロースターに起因する火災原因については,今回と同様火のついた肉片等がダクトヘ吸いこまれて出火しており,再発防止としては,トップリングからの落下防止等の安全対策と,使用者(経営)の清掃等の管理徹底が不可欠である。